カオスからコスモスを引き出す実践的養生法論~その五・マイクロバイオームとは何か?

わたしたちひとりひとりが、 世界にひとつだけの花を咲かせるように、 元気で健康でいるためには、 いったい今どんな実践的養生法が 求められているのでしょうか?

 

「植物とマイクロバイオーム」

マイクロバイオームはヒトの健康だけでなく、
植物の健康とも密接にリンクします。
健康な植物の根には土壌菌と植物の根が作り出す共生の場がみられます。
この土壌菌と植物の根が作るひとつの場(ば)を
根圏(こんけん)と呼びます。

この根圏を通じて植物と土壌菌は旺盛に物質交換をすることで
これまで地球上の地表において共に進化し繁栄してきました。
植物には根だけではなく、枝葉や花や実やタネのなかにも、
内生菌(エンドファイト)と呼ばれる細菌が共生しています。

そう、まるでヒトの体の内外に細菌たちがお花畑を作って
棲み着いているのとまったく同じように、
植物のあらゆる部位に植物共生菌がマイクロバイオームを作っているのです。

このエンドファイトに関しては、
例えばタネが落ちて発芽するまでのあいだにタネを
腐敗や外来性の病原菌から守ることで次世代を育む。
そんな免疫的な役目も植物のエンドファイトの仕事です。

植物は根圏の土壌菌やエンドファイトとすでに5億年以上もの
ながきにわたる共生関係を築き、病原菌を共生菌でガードして
免疫して、時々刻々と激変する地球環境を生き抜いてきました。

 

「マイクロバイオームの輪」

植物が枯れるとその落ち葉や朽ちた倒木は、
ミミズや甲虫の幼虫などの小動物に分解されたあとに
最終的に土壌に棲む土壌菌によって細かく分解されて土になります。
一説によれば土壌の80%は土壌菌などの微生物の死骸で
構成されているとも言われます。

そうして植物の分解産物で出来た土の養分を吸って、
またエンドファイトにより守られたタネが発芽し、
やがて芽が成長すると植物は枝葉を茂らせて
花を咲かせて実をつけて枯れて、またタネを落とします。

だから植物はいわば自身の死骸を養分にして、
また再生しているといえます。
そしてその植物の死から生への再生の立役者にして、
なくてはならない仲介役こそが、
土壌菌やエンドファイトのマイクロバイオームなのです。

ヒトはこの植物と、土壌菌やエンドファイトのマイクロバイオームが
織りなす産物である植物性繊維を食事から頂くことで腸内フローラを養います。
このように土壌と植物、植物とヒトは、
マイクロバイオームを通じたひとつの輪でつながっています。

もしも土壌からマイクロバイオームが消えたら
根圏の土壌菌もいなくなり地球上から植物が消えます。
地球上からもしも植物が消えたら、それにひきつづき植物をエサとする
動物たちがこの地球上から姿を消します。
わたしたちヒトは土壌と植物とそのそれぞれのマイクロバイオームなしでは
生きられない存在です。

 

「私の健康は地球の健康とひとつ」

わたしたちひとりひとりが、
世界にひとつだけの花を咲かせるように、
元気で健康でいるためには、
いったい今どんな実践的養生法が
求められているのでしょうか?

その答えのカギはきっと、
土壌や植物や動物と、
そのそれぞれのマイクロバイオームが
握っているような気がしてなりません。

人類が興した産業文明の繁栄の陰で、
私たちは大地や海や空を産業毒で汚染しつづけています。

大地に棲む土壌菌のマイクロバイオームは、
今、人間のそんなこれまでの所業をどんな思いで
見つめているのでしょうか?
その大地のマイクロバイオームや共生菌であるエンドファイトに
生かされている植物たちは同じく人間たちを
どんな目で見つめているのでしょうか?

私のやる気と安眠は腸内フローラが作ったセロトニン前駆体に
依存している。
そのセロトニン前駆体を作った腸内フローラの活性は
私が食べた植物性繊維に依存している。
私が食べた植物性繊維の野菜や果物や穀類や海藻の質は、
それが育った大地や海の質に依存している。
そして大地や海の質が健康かどうかは、
そこに棲む土壌菌や海洋バクテリアのマイクロバイオームに
依存しているのだ。

こうして私の体のなかの生理と地球環境の物質循環の流れを
俯瞰してみると、畢竟すれば
私のやる気と安眠は、
土壌菌や海洋バクテリアという
地球マイクロバイオームの健康度と密接に
つながっているといえるのだ。

地球マイクロバイオームが健康ならば、
私は昼間はやる気満々で活動できて、
夜になればグッスリと眠れるのだ。

なんと私の健康は地球の健康とひとつながりだったのだ。

 

「マイクロバイオームが示す人類の未来」

マイクロバイオームの探求から見えてきた実践的養生法とは、
自分が健康になりたければ地球を健康にしなければいけない、
という極めて大きなコンセプトだった。

マイクロバイオームの解明は人類の進むべき道すら示しているようだ。
その人類が歩むべき道とは、ひとことで言えば、
マイクロバイオームを含めた地球のすべての生き物が
健やかに「共生」する未来だ。

 

《今村 光臣 さんの記事一覧はコチラ》
https://www.el-aura.com/writer/imamuramitsuomi/?c=88528