トリニティ読者の皆様、こんにちは!
アヴァンギャルド鍼灸指圧師&養生クリエイターの
ハリィーこと今村光臣です。
2017年がスタートして、はや1ヶ月が経とうとしています。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
「腸内フローラとは腸内に咲く細菌の花」
近年によく聞かれるようになった言葉に「腸内フローラ」があります。
これは直訳すれば「腸内お花畑」の意味です。
えっ? 腸内にお花畑があるの? と
いぶかしげに思う方があるかもしれませんが、さにあらず。
皆様もご存知のように、この腸内お花畑のお花とは、
腸内細菌に他なりません。
ヒトの腸内には種類にして100~500種類。
重さにして約1キログラムもの腸内細菌が棲み着いています。
その内容はよく知られているように有益な作用を
するビフィズス菌や乳酸桿菌に代表される善玉菌と、
大腸菌やウエルシュ菌を含む悪玉菌と、
バクテロイデス菌などの日和見菌に大別されます。
この多種多様な腸内細菌が腸内でお花畑のように咲き乱れて、
それぞれが世界にひとつだけの腸内細菌のお花を、
美しく咲かせている時、
ヒトは健康でいられるのです。
「マイクロバイオームとは微生物集合体」
ヒトの腸内には腸内フローラと呼ばれる腸内細菌のお花畑がありますが、
ヒトの皮膚にも皮膚フローラと呼べる皮膚常在菌のお花畑があります。
それだけでなく、頭皮や頭髪にも常在菌の頭部フローラがあり、
鼻腔内や口腔内にも鼻腔フローラや口腔フローラと
呼べる細菌のお花畑があります。
つまりヒトの体内や体外にはおびただしい細菌が花を咲かせているのです。
このようなヒトの体の内外に常在性に棲む細菌は全部で800~1000種類。
数にして数百兆個にも及びます。
このヒトに棲むすべての細菌の遺伝子やその働きなどを一括して、
マイクロバイオームという概念で表現します。
ちなみにマイクローブは微生物を、オームは集合体を意味します。
ですからマイクロバイオームとは直訳すれば微生物集合体です。
ヒトの健康はヒト・マイクロバイオームと共にあります。
「腸内フローラとセロトニン」
腸内フローラの善玉菌は、食事で摂取された植物性繊維をエサに、
これらを材料にしてビタミンB群やビタミンM(葉酸)を産生します。
そしてこのビタミンを使って腸内フローラの善玉菌はさらに、
食べ物に含まれるアミノ酸のトリプトファンからセロトニン前駆体を
生み出します。
この腸内善玉菌によって作られたセロトニン前駆体はその後、
腸管壁から体内に吸収されると血流に乗って脳内へと運ばれます。
すると脳内に運ばれたセロトニン前駆体はそこで分子構造に修飾が加えられて、
脳内セロトニンの完成品になります。
腸から運ばれたセロトニン前駆体はこうして脳内で完成品のセロトニンになると、
脳内の神経伝達に作用して、ヒトにやる気を引きだして日中の活動をコントロールします。
この日中の活動に使われた脳内セロトニンは夜間になると今度はメラトニンに変換されます。
最終的にセロトニンから変換されたメラトニンは夜間の熟睡を誘導して、
睡眠を安定させるホルモンとして機能します。
つまり野菜や果物や穀類や海藻などの植物性繊維を豊富に含む食事は、
腸内フローラの善玉菌を活性化して、ビタミンやセロトニン前駆体を
産生することで、結果として脳内セロトニンを安定供給し、
ヒトにやる気を引きだして、最後にはメラトニンによる夜間の
熟睡を約束するのです。
ですから、もしも、腸内フローラがバランスを失い、
腸内フローラの善玉菌が枯渇するようなことが起これば、
ヒトのやる気を引き出すセロトニンも枯渇し、
結果としてメラトニンも無くなり、
セロトニンの不足で起こるウツ症状や、
メラトニンの消失で起こる不眠症を誘発しかねません。
ここにおいて腸内フローラのバランス維持の重要性が
クローズアップされます。
「マイクロバイオームはわたしたちの仲間」
腸内フローラの悪玉菌とされる大腸菌は、もしも外部から赤痢菌などの
病原菌が腸内に入った際には、この外来性の病原菌を排除する役目を果たします。
このように大腸菌は外部から侵入する病原菌に対する立派な「用心棒のお花」と
して機能しているのです。
大腸菌は悪玉菌などと呼ばれますが、実際にはその不名誉な名称が似つかわしくない
頼もしくも美しい腸内フローラの仲間です。
皮膚常在菌も皮膚から侵入しようとする外来性の病原菌類に
対する防御壁として機能しています。
この皮膚常在菌だけでなく、鼻腔や口腔や体中のすべてのフローラは、
人体にとって有益な作用をする細菌のお花畑の仲間たちです。
もしもヒトに共生するすべての細菌がいなくなれば、
ヒトは外来性の病原微生物にアッという間に占拠されて、
感染性の疾患で死んでしまうことでしょう。
私たちは私たちの体に共生する細菌のお蔭で生きていられるのです。