こころと身体はもっと自由になる Vol.4 ～歯を食いしばっても力は発揮できない～【舌】（その2）

前回～一瞬で呼吸が深くなる「鼻呼吸」のすすめ～【舌】（その1 ）では、舌を上あごに付けることで、人間本来の鼻呼吸を自然にすることが出来、それだけで、呼吸が深くなり、睡眠も深くなり、免疫力があがると言う事をお伝えしました。

実は、正しく【舌】のポジションを保つ、上あごにピタッと貼り付けておくと言う事には、もう一つ大変重要なメリットがあります。

■最近のトレーニング理論の常識

前回、正しい舌の上あごに付け方をお伝えしましたが、その中で
●奥歯は噛みしめないように、薄紙を一枚はさむように浮いた状態にします。
と記述しました。

最近のスポーツ理論では、「歯を食いしばっても力は発揮できない」と言うのが常識になって来ています。
奥歯を食いしばると言うのは、ウエイトリフティングの初動の動きや、綱引きで踏ん張ったりボクシングで相手の攻撃をその場で耐えてこらえる時など、筋肉を固めて一定の姿勢を保持する場合には、大きな力を発揮します。

しかし身体を過緊張させるので、スピードは遅くなりますし、筋肉の柔軟性も落ちます。
呼吸を止めるため、様々なパフォーマンスの質は下がってしまいます。

もしこういった歯を食いしばって踏ん張るようなパワーを必要とする時は(上記の様に必要な場合もあります)、なるべく瞬間的に使うようにして、身体への負担を極力抑えるのが良いでしょう。

ハンマー投げオリンピック金メダリストの室伏広治さんは「渾身の投げの基本は歯を食いしばらない」と言っています。
ハンマー投げは、一見　踏ん張ったパワーを使う競技のように見えますが、実は動きの中でバランスを使って動き続けている競技なので、歯を食いしばらない方が、しなやかに筋肉を働かすことが出来、より力を発揮できるのですね。

私達はスポーツに限らず、長年「歯を食いしばって頑張れ！！」と言われ、「歯を食いしばれば力が出る、頑張れる」と刷り込まれ思い込まされて来ているのではないでしょうか。

無意識に一日中奥歯を食いしばって頑張り続け、夜寝てからもリラックスすることが出来ずに、ギリギリと歯ぎしりしてしまうと言う人は少なくありません。

全身を固めたまま眠っているので呼吸が浅くなります。
神経も筋肉も緊張したままで、眠りが浅く疲れも取れません。
様々な負担を身体にかけ続けているのです。

歯ぎしりされる方は、出来るだけ早く噛みしめるのをやめましょう。
常に全身を柔らかく保ち、顎もリラックスさせ、奥歯に紙一枚くらいの隙間を保って生活することに慣れて下さい。
顎の力を抜いて左右にゆするストレッチや、顎関節や頬のマッサージも有効です。

■【舌】の使い方一つでバランス力が劇的にUP

私達がスピーディーにスムーズに動き続けるためには、奥歯を食いしばって、その場に踏ん張ると言う身体の使い方は向いていません。
そこで、【舌】を使う訳なのですが、これが身体のバランスを取る上で非常に大きな役割を果たします。
歯を食いしばらずに、【舌】を上あごに張り付けると、柔らかい【舌】が上あご、頭をしっかりと、でも柔らかく弾力のある状態で支えます。
そして柔らかい【舌】がバンパーの役割をして、頭や首への衝撃を吸収してくれるのです。
歯を食いしばっている状態と明らかに身体の動きが変わります。
一瞬にして、頭の安定が良くなり、身体の動きがスムーズになります。

上あごに【舌】を付けるポジションを、もう一度、記しておきます。
●舌の縁側のかなり広い面積を、Ｕ字型にペタっと上あごに張り付けます。
（英語のＬやＴの発音の舌のような感じです。）
●中央部分から奥は、少し浮いていて空間があります。全部べったりつけてしまうと、今度は首やのどが緊張してしまいます。
●奥歯は噛みしめないように、薄紙を一枚はさむように浮いた状態にします。
●上あごの歯茎の付け根に舌のフチが触れるような感じですが、舌で歯を押したりしないようにしましょう。