今作で『蘇生』シリーズに初参加し
米倉金善役を演じる中村繁之さん
『蘇生』シリーズには今回初参加の中村繁之さん。
かねてから環境問題には関心を寄せてきたという。
インタビューの問いに対し、ひとつひとつの言葉に想いを乗せながら語る真摯な表情と、命あるものへ思いを馳せるときの柔らかな瞳が印象的だ。
—— 映画『蘇生Ⅱ~愛と微生物~』のテーマである環境問題や、有用微生物群については以前からご存じでしたか。
中村:微生物についての知識はあまりなかったので、監督にいろいろ伺いました。
ただもともと、発展途上国で子供たちの飲み水を浄化する活動など環境問題についてはずっと関心を持っていました。それがこの映画で結びついた感があります。
—— 中村さんが演じる「米倉金善」とはどういう役どころでしょうか。
中村:米倉さんは実在の方です。米倉さんは福島の立ち入り禁止区域にご自分の家があります。原発事故の後に、警察の制止を振り切って、自己責任で有用微生物群の散布を続けた。浅野彰一さんが演じる今泉さんが先導し、米倉さんが共感し、まずはふたりで散布活動を始める、そういう人物です。活動の途中で比嘉先生や周辺の応援も始まり、輪が広がっていきます。
—— 実在の人物を演じるにあたっての工夫は。
中村:僕は外見的にはご本人にあまり似ていないのですが、作業着や髪型で近づけています。
内面については、監督にも質問を繰り返してご本人の心持ちをつかむよう努めました。警察の制止を振り切り、非常に放射能の数値が高い危険区域に向かうというのは実際どういう気持ちなのか。その臨場感を大事にして、現場でもピリピリとした雰囲気で撮影に臨んでいます。
なぜそこまで命を懸けられるのか、ということを深く掘り下げました。次世代を守りたいという気持ち、子供たちの故郷は福島であり続けて欲しい。彼らには未来があるので、ならば俺たちが犠牲になってでも故郷を守り抜くという気持ちなんだろうか、という思いに行きつきました。
米倉さんは、子供たちや町、動物たちの未来に、ものすごい責任感を感じているのかな、だから命が懸けられるんだろうかと僕は想像するんですね。きっと、自分のためではないんです。演じるときはその気持ちを腹に据えて向かっています。
—— 撮影の前後で、ご自身に変化はありましたか。
中村:内面的にだいぶ変化がありました。放射能被害や、震災復興の現場で闘っている人がいることはニュースで知っていたけれど、実際の個々の人物を知ることってなかなかなかった。それが、親近感や投影感を持てるようになりました。
震災当時、僕自身も何か行動したいと考えていました。ですが、現地ボランティアといった直接的な活動は難しい状況もあり、自分が協力できていないことを感じていました。
ですが、震災から7年経った今この映画に参加することで、人々に継続的に訴えていくこともひとつの力になるんじゃないか。遠回りかもしれないですが、こういう形での貢献もあると思います。
作品ができて、この映画を観た人が何かを思ってくれることも一つの復興支援なんじゃないか。そこに携われているという気持ちがあります。
—— 今回の映画のサブタイトルは「愛と微生物」ですが、どう捉えられましたか。
中村:この映画や、有用微生物群の散布活動は、子どもたちや生き物、土たちに対しての愛なのかな。その答えが今回の微生物なのかなと思っています。
—— この映画を観た人に何かメッセージを伝えるとしたら。
中村:人生に1回ぐらいは、本当に命を懸けられるぐらい夢中になれることが見つけられたらいいよね、ということです。自分ではそうやっているつもりでも、本当に命懸けかというとハテナが付く部分もあると思います。なかなか見つけるのはむずかしいことだけど、自分も含め、そういうことが一生のうちに探していければいいと思っています。
白鳥哲監督の最新作、映画『蘇生Ⅱ~愛と微生物~』のインタビューを全4回でお届けします。
第1回 白鳥哲監督
https://www.el-aura.com/tetsushiratori20190118/
第2回 比嘉照夫(ひが・てるお)先生役 前田耕陽さん
https://www.el-aura.com/tetsushiratori20190120/
第3回 米倉金善(よねくら・かねよし)役 中村繁之さん
第4回 今泉智(いまいずみ・さとし)役 浅野彰一さん
http://officetetsushiratori.com/
取材協力:株式会社 OFFICE TETSU SHIRATORI
取材・文:桜倉麻子