前作から25年——再び比嘉照夫博士を演じる
主役の前田耕陽さん
前回に続き、主人公である比嘉先生役として登場の前田耕陽さん。
前作から25年後が舞台となる本作では、前田さんの役どころは70歳となる。
アクティブな印象の前田さんだが、『蘇生』から25年後の教授をどう演じたのか。内面の変化などについてもお話をうかがった。
—— 前作に続き、続編『蘇生Ⅱ~愛と微生物~』でも出演依頼があった時にはどう感じられましたか。
前田:まず呼んでいただけたことが嬉しかったですね。
ただ、『蘇生Ⅱ』は、前作から25年後が舞台なので、比嘉先生は70歳になっているんです。お話をいただいた時には、一瞬「えーっ、70歳って、どう演じればいいんだろう」と思いました。
ですが、監督に話を伺ったところ、実際の比嘉先生は非常にお元気で、現役であちこち飛び回っていらっしゃるということだったので、それなら自然に演じられるかなと。
外見的には、髪を白くしたり、動きをゆったりとしたりと工夫しました。
—— フィクションの人物と、実在の人物と、演じるうえでの違いはありましたか。
前田:今回はほぼノンフィクションのドキュメンタリー形式なので、自分のクセが出ないよう、いつも以上に注意していました。セリフのひとつひとつ、語尾や接続詞がちょっと違っても人物の雰囲気が変わってきてしまいます。特に、比嘉先生が良く口にする言葉、口癖のようなセリフは、自分の慣れている言葉のニュアンスが出ないよう気を遣いました。
—— 同じ人物の25年前と後を演じるわけですが、内面の変化はどのように捉えましたか。
前田:25年前の時点では、比嘉先生はまだ、自分の行動や研究には絶対的な確信は持っていなかったような気がするんです。自分自身も農薬被害にあったり、手探りの状態でした。
それが今作では、自信と確信を得ている。なので、セリフの言い回しひとつにしても、本人が確信をもって発言している雰囲気を心がけました。
荒廃した土地がどんどんよみがえっていく
そのシーンの表情をみてほしい
—— 特に重要と思われるシーンについて教えてください。
前田:荒廃した土地が、どんどん蘇っていく場面です。これから撮影に入るのですが、大地が元気になっていくさまを見つめているときの比嘉先生の表情がとても重要になってくると思います。
回復していく大地を見ているときに、比嘉先生は「いつか必ずこうなる」っていう確信があったと思うんです。単純に奇跡が起きて驚くとか意外性に感動するとか、そういうことではない。自らが確信を持っていたことが、事実そうなったということで、より強い想いを持てるのではないでしょうか。
—— 撮影の前後で、ご自身になにか変化はありましたか。
前田:微生物についても、環境改善に力を尽くしている方の存在についても、自分が普通に暮らしているだけでは知り得ないことを知ることができました。
地球環境の改善のためになにかをやるっていうのは、たった一人のレベルでできることではないですよね。人類の、全ての人の協力がないと成り立たないと良くなっていかないんじゃないかと。
僕、今、なんかすごく大きいこと言ってますね(笑)
—— 映画のここに注目してほしい、というメッセージをお願いします。
前田:比嘉先生の研究で示された通り、微生物の力で放射能の汚染レベルを低減していくことができます。それは事実なのですが、まだあまり世間に広まっていません。
それが、この作品で、微生物の力への理解が社会や世界に広がっていけば、ほんとうにいろいろなことが変わるんじゃないかと感じています。特に環境問題に苦しむ方には、この映画が少しでも参考になれるのではと思います。
この映画は、新しい世代の方にも見てほしい。僕にも子どもがいるんですが、彼らや、もっと先の世代まで、ずっときれいな地球を残していきたいと思っています。若い世代の方も、この映画をみたことで「もっと地球を大事にしよう」と思ってもらえるんじゃないかと思います。
白鳥哲監督の最新作、映画『蘇生Ⅱ~愛と微生物~』のインタビューを全4回でお届けします。
第1回 白鳥哲監督
https://www.el-aura.com/tetsushiratori20190118/
第2回 比嘉照夫(ひが・てるお)先生役 前田耕陽さん
第3回 米倉金善(よねくら・かねよし)役 中村繁之さん
第4回 今泉智(いまいずみ・さとし)役 浅野彰一さん
http://officetetsushiratori.com/
取材協力:株式会社 OFFICE TETSU SHIRATORI
取材・文:桜倉麻子