古代ハワイの航海術、それは自然の羅針盤を用いた 神秘的でロマンチックな方法だった

現在の航海術は、あらゆる情報を組み込んだコンピューターを駆使したスムーズなものですが、古代ハワイの人々は「ウェイ・ファインディング」と呼ばれる夜空の星や自然の変化を見ながら大海原を航海していたのです。

かつてハワイを含むポリネシアの人々は、木製のカヌーに乗って太平洋を何千キロも航海し、ポリネシアの島々を行き来していたのです。

古代のポリネシアには、今のようなパソコンはもちろん、羅針盤や地図すら存在していなかったのに、いったい彼らはどのように航海をし、目的地へと到達したのでしょうか?

これは長年にわたり、謎だったのです。
そして何人もが実際にこのポリネシア地区で古代航海の実験を行ったのですが、なかなか確信がつかめる結果が出ませんでした。

しかし1976年にハワイで古代に使われていたものと似たタイプの木造の双胴型カヌー、ホクレア号を建造し、その船を使って実際に先祖たちが航海した方法をついに見出したのでした。

 

自然の羅針盤

ホクレア号を使って、古代ハワイの航海術を見出すプロジェクトは、何年にもわたって続けられました。

その結果、古代ポリネシアの人々が、航海をするときに最初の目印としたのは太陽であることがわかったのです。日の出と日の入りで、現在地を知ることができたからです。

夜になると月や星が出たり沈んだりする位置を見て、カヌーが進む方向を決めていました。

天気の悪い日には、風や波の種類を感じ分け、次にどのような天候になるか、あるいはどの方角に進めばよいかを判断することができたのでした。

また海流の流れに乗っているのか、逆らっているのかでも位置を知ることができるのです。もしくは鳥が飛ぶ姿を見れば、陸地が近いことを示しているのです。

(写真提供:Polynesian Voyaging Society)

 

ナイノア・トンプソン氏

このホクレア号を使って、古代ハワイの航海術を生き返らせたのが、ハワイアンの血を引く、ナイノア・トンプソン氏です。

星や自然を使った航海術を、彼はウェイ・ファインディング、もしくはスターナビゲーションと名付けました。

広い太平洋に点在しているポリネシアの小さな島々を、何の機器も持たずに航海を続けていた古代の人々は、天体観測や自然の変化、そして航海を続ける上で、変化する生き物の分布などを参考に、自分が今どこにいるかを知ったのです。

ナイノアは、さらにこの古代の航海術に加え、水平線を32分割したスター・コンパスなるものを創りました。

それによって方位を算出したり、目的地である島の周辺に生息する鳥類を記憶し、その鳥類の種類により目的地までの距離を算出したり、方向を知ることを考えだしたのです。

また潮の流れの方向や速さを知るために、船から木の葉を1枚海に落とし、それが流れる方向や速さを観察したのでした。

このような古代の航海術を、ナイノア・トンプソン氏は、現在では体験航海を通して、ハワイの若者たちに伝えています。

 

ハワイに生きる伝統のカヌー・レース

かつてハワイの人々は、毎日のようにカヌーにのって漁業に出たり、他の島へ移住したり、品物を運んだりしていました。

従ってカヌーという乗り物は、ポリネシア、ハワイの人々にとっては、大切な文化なのです。

これらカヌーで日々海を行きかうときにも、潮の流れや方向を知るために古代の人々は、自然の動きを利用した航海術を使っていたのです。

そしてハワイには、その文化を象徴するように、いくつもの大きなカヌー・レース大会が現在でも毎年開催されています。

そのうちのひとつ、「モロカイ・ホエ」と呼ばれるカヌー・レースはハワイで最も大きく、そして古いレースで、1952年から毎年続けられています。

モロカイ島とオアフ島の間の非常に流れが速く荒いカイヴィ海峡60キロを6人乗りのカヌーで横断するこのレースは、まさにハワイの文化と歴史の象徴でもあります。

屈強な男性が休む間もなく朝の7時半から5時間以上アウトリガー・カヌーを漕ぎ続け、ワイキキ・ビーチにゴールをし、家族や仲間から盛大に祝福を受ける、ハワイの10月の風物詩です。

この時期にハワイに出かけることがあるなら、ぜひ立ち寄って見学し、古代ハワイアンたちから受け継がれたそのパワーと叡智を感じてみてはいかがでしょうか?

 

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