傷ついた「細胞記憶」を癒し、潜在意識を浄化する願望実現メソッド 「ヒーリング・コード」の威力とは?

「もはや意志の力では決して成功できない」

内面を癒すことは、願望実現にも直結するという。「自己啓発の97%が失敗している」というロイド氏は「これまで、成功を左右するのは意志の力と言われていました。しかし、その考えはもう古いのです」と話す。

「ナポレオン・ヒルなどから派生したありふれた自己啓発プログラムは、70年間その基本構造が変わっていません。

① ほしいものに意識を集中し、
② それを手に入れるための計画を立てる
③ 計画を行動に移す

どの課程も外的な目標にフォーカスしていますが、これは恐怖や心配を前提にしたものです。欲しかった状況やモノが手に入ると、確かにその瞬間は多幸感を得られるでしょうが、それが続くのは長くて1か月程度。そのため、ずっと頑張り続けなければならず、それが達成できないと立ち直れなくなるという悪循環になるのです」

このプロセスは脳の状態にも深く関連してしている。
意志の力を使って、外側の世界をコントロールしようとした時点でストレス物質のコルチゾールがたっぷりと分泌され、脳は「失敗している状態」、いわく「失敗のスイッチ」が入る。自らに意志を宣言する「アファメーション」も、ロイド氏の実験結果ではアファメーションの内容を信じていないのに口にした場合、ストレスレベルが急上昇したという。

一方、自らを癒して肯定し、「愛」で満たすと脳内幸福物質のオキシトシンがつねに分泌され「すでに成功した脳の状態」となるため、今この瞬間に全力投球でき、格段に成功に繋がりやすくなる。

実際に、これまで多くの自己啓発セミナー講師が、ロイド氏のもとに秘密裏に相談に訪れては、次のように話すという。

「『成功させる方法がわからない』——成功法則を売って稼いでいるはずの自己啓発セミナー講師が、こんなことを言うんです(笑)。この矛盾をどうすれば良いか? と。そこで私は、『愛』こそが一番の成功法則だと話すのです。それを聞いて方法を変える人もいたしえない人もいました」

確かに外側の成果――つまり数字や業績を上げることこそが存在意義である多くのビジネスマンは自己啓発にハマりがちになるし、そう簡単に意志の力や目標を手放すことはできないだろう。自己肯定感が、ビジネスの成果にどのような関係があるのだろうか。

ある日、IQ190でハーバード大学を首席で卒業し、ウォール・ストリートに勤務する才女がロイド氏のもとにやってきた。彼女は、それほど優秀にもかかわらず、会社で業績を上げることができずにいた。会社が危機を迎えた時ですら、何のポジティブな結果も残せなかったという。

「彼女と3週間ほど向きあう中で、5歳の時のネガティブな記憶が現在の行動を邪魔していたことがわかりました。彼女はつねに仮面を被り、不安にまみれていました。それが業績の数値にも表れていました。そこで古い間違った細胞記憶を癒していくと、彼女の業績はうなぎのぼりになりました」
その他、クビ寸前から会社のトップにまで上り詰めたクライアントもいた。

「内面の状態を一番の目標にすると、欲しいと思っている外側の状況も手に入るようになるのです」

 

従業員のメンタルヘルス対策は、企業の生産性を上げる

アメリカでは従業員のヘルスケアは単純に会社の生産性を上げ、コスト削減を目的とする意味合いが強い。
日本では、昨今でこそ厚労省が職場のメンタルヘルス対策に乗り出し、アメリカですでに70年代から実施されている職場のメンタルケアプログラム「EAP(Enployee Assistance Program)」認定カウンセラー資格受験も2013年にようやくスタートしたばかりだ。
ストレスチェックやメンタルに関する社内セミナーなどはあっても、具体的なセラピーを取り入れたり、推奨している企業は少ない。職場のストレス対策といえば、せいぜい福利厚生の社員旅行や「飲みニュケーション」ではないだろうか。

パワハラや超過労働が死に繋がるケースがまだまだ多い日本の労働環境について、ロイド氏は次のように問いかける。

「私はまず、企業のトップの方々にこのように質問をしたいと思います。『従業員に心配や怒り、悲しみに満ちた働き方をしてほしいか、それとも幸せで喜びに満ちた働き方をしてほしいか』。ポジティブでエネルギーに満ちた従業員のほうが生産性が高いのは明らかです。100人の従業員がいる会社で、一人ひとりの生産性が10%ずつでもよくなったら、どうなると思いますか?」

それでも、職を失い、家族を養えなくなるというリスクやジレンマとの板挟みになりながら、現状維持に努めざるを得ない人は多い。

「仕事が原因で自殺してしまいそうな人たちには、まず、それを打ち明けられるグループが必要です。安心できる空間で自分の心情を吐露し、気持ちを落ち着かせることから始めなければなりません」

そうしたものを活用しながら、日本のビジネスマンの間でもヒーリング・コードなどのセルフセラピーが普及すれば、「10年くらいかけて、社会が良くなっていくのでは」とロイド氏は話す。

「真に成功と幸せをもたらすのは、意志の力ではなく愛」

ロイド氏の理論は、日本人のメンタルに一石を投じることになるかもしれない。

そして今年の7月28・29日にかけて、ロイド博士の再来日が決定している。今回は「メモリーエンジニアリング」という記憶がすぐに書き換わる新メソッドを公開する予定だという。

 

アレクサンダー・ロイド博士
心理学博士、自然療法博士。
テネシー大学、リプスコム大学卒業。
2001年に確立した「ヒーリングコード」療法が、全米50州、世界158カ国で実施されている。
ABC、NBC、CBS、Fox、PBSの番組にも識者として出演。
2010年、著書「The Healing Code」が世界的ベストセラーとなる(邦訳書はSBクリエイティブより2011年に発売)。