カオスからコスモスを引き出す実践的養生法論~その四・命とは何か?

わたしはヒートショックプロテインに導かれて 命がカオスでコスモスな世界であることを知りました。

 

「カオスからコスモスを引き出すヒートショックプロテイン」

ヒートショックプロテインとは直訳すると「熱ショックタンパク質」です。
ゆで卵をみればわかるように、タンパク質は熱により変性して凝縮します。

このように熱変性して構造が変化するとタンパク質は機能しません。
ですから熱変性した際には、生命体はすみやかに変性したタンパク質を修正します。

それゆえに地球に棲む真核生物のすべてがヒートショックプロテインを保持しています。

地球環境は生命誕生以来38億年間、激変を繰り返してきました。
酸素の無かった地球に酸素濃度が上がってきた27億年前頃には、
活性酸素の害で多くの嫌気性バクテリアたちが絶滅したことでしょう。

また海底火山の活動で海洋無酸素イベントが起こった古生代には、
海中からほとんどの生き物が姿を消しました。

恐竜たちが生を謳歌した中生代は突然の隕石の衝突によるディープインパクトで
地中から巻き上げられた膨大な粉塵が太陽光線を遮り、
地球は一気に寒冷化と乾燥化がすすみました。

この突発的な隕石落下事故で恐竜の時代が終わりを告げました。

新生代に入り哺乳類の時代が幕を開け、やがて人類が誕生します。
しかし今から7万年前にインドネシア付近で大規模な火山の噴火が起こります。

このトバ火山の噴火による噴煙が、アフリカに寒冷と乾燥をもたらしました。
このときに、人類は絶滅の危機にあったようです。

この7万年前の「火山の冬」の試練をどのようにして人類は乗りきったのか?

寒さを火で和らげ、衣類を発明することで、なんとか持ちこたえたのです。
火はあらゆる意味で人類を助けたことでしょう。

火を通して食べ物をたべる習慣は、細菌やウイルスを熱変性で抗菌し、
人類は免疫の前段階ともいえる食によるプレ免疫を獲得したことになりました。
暖をとり、清潔な食にありつき、人類は生き延びたのです。

ウイルスの殻も、細菌の細胞壁もタンパク質で出来ています。
タンパク質は熱に弱く、高熱で変性して機能を失います。

ヒトの細胞膜も同じです。
ヒトの細胞膜も筋肉も皮膚もタンパク質で出来ています。

ですから熱を加えるとヒトの細胞膜や皮膚や筋肉のタンパク質も
変性します。この熱により変性したヒトのタンパク質を、
まるで月光仮面かアベンジャーズのような早業で修復し、
保護するのがヒートショックプロテインです。

ヒートショックプロテインは熱だけでなく、活性酸素や
放射線、紫外線などの電磁波への暴露、重金属や化学物質への暴露、
心理的ストレスによる損傷など、あらゆるタンパク質の変性に
応じてすべてのタンパク質を守る生体防御タンパク質です。

このような環境ストレスに応じて細胞を保護するヒートショックプロテインの作用を
アダプティブサイトプロテクション(適応的細胞保護)と呼びます。

ヒートショックプロテインのアダプティブサイトプロテクションを引き出せれば、
ヒトは環境ストレスに立ち向かい健康でいられるはずです。

鍼灸指圧とはヒートショックプロテインを誘導する医療です。

鍼による小さな傷、灸による熱ショック、指圧による圧力ストレス、
小さな傷も熱ショックも圧力ストレスも旺盛に皮膚や筋肉のセントラルドグマから
ヒートショックプロテインの分泌を引き出します。

ヒートショックプロテインを誘導する鍼灸指圧こそが真の養生法です。

鍼灸指圧師となって25年間。

わたしはヒートショックプロテインに導かれて
命がカオスでコスモスな世界であることを知りました。

ヒートショックプロテインはセントラルドグマの原動力であるDNAの傷すら修復します。

我がニッポン、我が人類に、ヒートショックプロテインの幸あらんことを願い、
本年の記事を締めくくります。

本年のトリニティ読者様のご愛読に多大なる感謝を申し上げます。

 

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