カオスからコスモスを引き出す実践的養生法論~その四・命とは何か?

わたしはヒートショックプロテインに導かれて 命がカオスでコスモスな世界であることを知りました。

皆さん、こんにちは。

アヴァンギャルド鍼灸指圧師&養生クリエイターの
ハリィーこと今村光臣です。
今年も残すところ、あとわずかとなりました。

本年最後の記事をお読みください。

 

「命はカオス」

私が鍼灸指圧の実業の道に入り、すでに25年間ほどの月日が過ぎました。
これまでに3万タッチを越える治療回数を重ねてきました。
また書物文献は本棚から溢れるほどを渉猟しました。
ですから実地臨床における生の体感を文献書籍のデータと照合する作業を、
コツコツと25年間かけて積み上げてきたことになります。

そうしてみえてきた命のありようの一端とは、
「命はカオス」というひとことに集約されます。

カオスとは直訳すれば「混沌(こんとん)」です。
この混沌という言葉は私流に解釈すれば、
あらゆる要素がない交ぜになった汲めども尽きぬ不思議の泉、
という意味になります。

命はまったくこちらの予想通りには動いてくれません。
とくに治療という作業はそうです。

ある成功した方法論を同じような症状の別な患者に施しても、
同じような成功結果は絶対に生まれません。
なぜならヒトはひとりひとりみなすべて異なるからです。

指紋もDNAも地球上には同じ者を持つ者はふたりといません。
ですから、治療とは常に一期一会です。

そして同じ人間であっても瞬間、瞬間にひとは変わっていきます。
毎秒1000万個もの細胞がアポトーシスとリモデリングを繰り返すのです。

命は摩訶不思議なカオスですが、
しかし、命には、このアポトーシスとリモデリングを支える
絶えざるホメオスタシス(恒常性)の底流があります。

それは命の泉から湧き上がるコスモス(秩序)です。

 

「命はコスモス」

ヒトの成人の細胞数は全部で60兆個もあるといいます。
この60兆個の細胞の核内には、すべてDNAが仕舞われています。
細胞のDNAは60億個の塩基が螺旋状に編み込まれています。

このDNAの縄の全長は約2メートルです。
この2メートルのDNA上のわずかに1.5%の部分がエクソンと呼ばれる
タンパク質を生み出す機能遺伝子です。

その1.5%のエクソンを動かす調節遺伝子が周囲に付随します。
このわずか3センチ余のエクソン領域がヒトの生理活動を支えています。

ヒトのDNAのエクソン領域がヒトの生理活動に必須のタンパク質を
生み出すシステムを「セントラルドグマ」と呼びます。

「セントラルドグマ」は「中心条理」と訳されます。
ヒトの身体は水分を除くと、ほとんどがタンパク質で出来ています。
髪の毛や爪のみならず皮膚も筋肉も内臓も脳も骨も
みなタンパク質で構造化されています。
また消化酵素やホルモンや神経伝達物質などもタンパク質です。

ヒトの身体の構造を維持する構造タンパク質と
ヒトの身体の機能を維持する機能タンパク質のふたつのタンパク質は
すべてセントラルドグマで瞬間、瞬間に生まれています。

このすべてのタンパク質の誕生から修復、解体から再生の
タンパク質の一生の介添え(シャペロン)をおこなうのが、
ヒートショックプロテインと呼ばれるシャペロンタンパク質です。

セントラルドグマが生み出すヒートショックプロテインの導きで、
ヒトの生理活動に必須のすべてのタンパク質の流れが決まります。

セントラルドグマは命というカオス(混沌)の中心にみられる
コスモス(秩序)です。

そのコスモスを誘導する養生法こそが真の養生法です。