1本600円の「もんげーバナナ」をご存じですか?〜白山大地の「毎日がスピリチュアル」第三回

バナナといえば、かつては高級品。私の子どもの頃は、病気や遠足の時にしか口にできませんでした。
それが今は、手軽においしく栄養補給ができる便利な果物になっています。

 

そのバナナが1本600円。それでも飛ぶように売れているのが、
田中節三(たなかせつぞう)さんの「もんげーバナナ」です。

「もんげー」とは、岡山の方言で、「すごい」という意味だそうです。

もんげーバナナは、岡山県で露地栽培もしくは簡単なハウスで栽培されています。
ハウスといってもほとんどボイラーは炊かず、風よけのためにハウスを利用しているのです。
日本で栽培すれば、寄生虫などの心配がないため、無農薬はもちろん樹上で完熟させることができます。
ですから、甘く美味しく、安全なバナナとして人気があるのです。
時間をおいても黒ずみせず、皮まで食べられるそうです。

(画像出典/農業法人 株式会社 D&Tファーム)

では、熱帯性のバナナがどうして岡山で露地栽培できるのか。
それは、バナナに氷河期の頃の記憶を呼び覚まさせたからだといいます。
およそ7億年前、地球は今の熱帯地方を含む地表全体が凍りつく、超氷河期を迎えたことがわかってきました。
これを全球凍結といいます。

この凄まじい氷河期を生物はどう乗り越えたのかはよくわかっていませんが、
「生き延びた植物は、寒さに強い遺伝子を持っているはずだ。バナナも例外ではない」
と田中さんは考えました。

そこで、氷河期と同じような環境にバナナを置けば、当時の遺伝子が復活するのではないかと研究を始めたのです。

(画像出典/農業法人 株式会社 D&Tファーム)

 

それが、「凍結解凍覚醒法」です。

バナナの細胞をマイナス60度まで、毎日0.5度ずつゆっくりと温度を下げ、180日かけて凍結させます。
急速に凍結させると細胞は死んでしまうからです。

すると、DNA以外のものはすべて壊れますが、再生させると、見事、耐寒性があり、成長が速く、より甘いバナナが誕生したのです。
ヒトもそうですが、DNAは、使われていないものが大多数を占め、それらはジャンク(がらくた)遺伝子と呼ばれていました。
それが、近年研究が進み、ジャンクと思われた遺伝子も必要に応じて使われる、何らかの役割があることがわかってきました。

ですから、もんげーバナナもその可能性が大です。
それを裏付けるデータも出てきていますが、検証はこれからです。
田中さんは、論文を準備中ということですから、これから楽しみです。

理論よりも現実は先に進んでいて、田中氏の会社「D&Tファーム」では、今年(2018年)、12万株のバナナを植え、50億円の売り上げを見込んでいます。

もちろん、他の作物でもこの栽培法は有効です。
近い将来、大豆や小麦、トウモロコシなどをシベリアで栽培することを目指しているそうです。
今、農業高校の生徒たちがこの農法に熱い視線を送っています。

(画像出典/農業法人 株式会社 D&Tファーム)

ところで、ここで思い出していただきたいのが、前回のSTAP細胞です。
STAP細胞と同じ万能細胞に、ノーベル賞を取った山中伸弥教授によるiPS細胞があります。
こちらは、遺伝子を操作して(遺伝子を加えて)万能性を持たせたものなので、厳密には、新しい細胞を作り上げたといえます。
一方のSTAP細胞は、酸などの処理で細胞自身が持っていた万能性を復活させたわけです。

つまり、もんげーバナナと同じなのです。
手法こそ異なりますが、眠っていた能力を引き出した点は一緒。

生物学には、「一度分化した(役割が決まった)細胞は元に戻らない」という不文律のような定説があります。
もんげーバナナもSTAP細胞もこの説を覆すことになりますから、これまで権威にすがって来た学者たちが、STAP細胞をつぶしにかかったのも無理はありません。

(この話続く)

 

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(トップ画像出典/楽天市場)