■自然サイクル(概日リズム)を使った健康法〈6〉~私たちは概日リズムの生き物~インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol. 140

さてこれまで、数回に分けてお伝えしてきた「概日リズム」シリーズはいかがでしたでしょうか。

私たちは、たとえ現代特有の便利な生活で自然とのつながりを一時的に忘れようとも、最後には自然界の土に還るように定められている、自然界に属する生きものだということを、思い出すことができたのではないでしょうか。

体はそもそも、自然界のリズムにあわせるだけで健康維持がより簡単になり、そのリズムを無視すれば病気になりやすくなるといった、とてもシンプルなルールが根底にあり、自然界のリズムと調和しているか否かによってとても左右されるようにできています。
これは体だけでなく、気分もしかりです。

夏と冬では、感じやすい気分のパターンが違い、夏に独特な気分のパターンや、冬に陥りやすい気分のパターンなどが明確にあります。
セロトニン、ドーパミンのような神経伝達物質の受容体は、明るい夏の時期により受容的になり、より暗くなる冬の時期の間はそれほど受容力がないため、私たちは冬の間、気分に関連する不調(心配事やうつなど)になりやすいといわれています。

(冬はうつになりやすい時期)

また、住んでいる国の気候によっても、気分や思考、より欲しくなる食べ物は変わってきます。
インド、タイといった、暑い国に長年住み続けていているおかげで実感できたことは、暑い国の人たちは、寒い国(あるいは冬がとても寒い国)の人たちに比べて、明らかに辛いもの好きで、雑で、開けっぴろげで、怠けものです(笑)。

それはともかく、私たちの腸の微生物もまた、季節ごとに変わることが、狩猟採集部族の研究報告からわかっています。
土壌の中の微生物たちは季節ごとに変化し、その土壌から収穫された食べ物を私たちが食べるのですから、腸内の微生物と私たちが食べる植物性の食べ物との間に相互依存関係にあることは、納得です。

例えば夏には、より複雑な構成の炭水化物が収穫されるといわれていますが、それを簡単に消化できるように、私たちの腸内には、炭水化物を消化するための微生物が繁殖し、あるいは、こってり高脂肪、高タンパク質の食事がよく消化できるようになる冬の時期は、脂肪分を食べてくれる微生物が繁殖するということです。

このため、「その季節の旬な食べ物を食べる」ことが、とても大切なのですね。

……体というものは、自然と一心同体ともいえる、本当によくできている機械です。

 

★概日リズムが狂った生活は、腸内細菌が機能障害になりやすく

「やたらと食べたくなる」

ここでひとつ、面白い研究報告をご紹介したいと思います。
あるマウスを使った研究で、

健康なマウスのグループと、
時差ぼけで概日リズムが狂った状態のマウスのグループを、

それぞれ二日間、明暗サイクル(昼と夜)の中にさらし、測定したものです。

時差ぼけマウスのグループは、腸内細菌に機能障害が見られ、腸内細菌によって統制されている普段の摂食シグナルが働かなくなり、これらの時差ぼけマウスは二日間、ひっきりなしにずっと食べ続けていたということです。
このため、高血糖あるいは肥満になり、これは人間にとても似ているパターンだったと報告されています。

実際、人間を対象にした研究では、時差ぼけをたくさん体験している人は、腸内の微生物が変化し、肥満や2型糖尿病のリスクが高くなるということです。

(腸内微生物を損なう時差ぼけは、しっかり眠ってリセットを)

アーユルヴェーダでは、概日リズムと同調して生活することが、健康維持と長寿の鍵といわれています。

慌しく日々過ぎていくこの現代の生活において、いかに概日リズムと同調して生活できるか。現代人にとっては、重要な課題といえそうです。

◎次回からは、新しいテーマでお伝えしたいと思います。

 

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(トップ画像/季節ごとに旬のものを食べる)