■味の効用part.12~「渋味(収斂性の味)」の効果 ~ インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol.128

さて今回は、6つの基本味(甘味、酸味、塩味、辛味、苦味、渋味)の最後、「渋味」についてお伝えしたいと思います。

 

★渋味の効能

渋味は一般的に、果実や樹皮、葉、外皮のタンニン成分によって成り立っている味で、乾燥させるような風味があるのが特徴です。
渋い味がするものといえば、渋柿がわかりやすいと思います。
食べた途端に口の中の水分が吸い取られるかのように粘膜が収斂し、時にはまるで窒息しそうな感覚さえ感じられることもあるこの味は、甘い味のものや酸っぱい味のものをとることですぐにその窮屈感は解消されます。

このキュウッとした締め付け感は、外用として使えば、肌のキメを引き締め、毛穴を目立たなくしたり、髪のキューティクルを引き締めるといった美容効果があります。

 

《もたらされる効果》

*構成要素は「空気」+「地」
*ピッタとカファのバランスをとる
*ヴァータを悪化させる
*ヴィルヤ(温度) →冷却する(冷却する味の中では中間)
*ヴィパカ(消化後の効果) →辛味/刺激性
*特質 →冷たい、乾燥、重い

*関連するポジティブな感情 →安定、統合、 落ち着き、しっかりしている

*過剰になったときの感情 →恐れ、不安、緊張感、うつ、固着、強迫観念、
頑固、恨み、辛らつさ

*舌の場所 →舌の後部の中央領域
*器官への親和性 →結腸
*最も影響を受ける組織 →血漿、血液、筋肉組織、生殖組織
*動きの方向 →内向き

*その他の作用 →組織を調整する、発汗を減らす、過剰な熱を冷却する、
抗炎症性、出血を止める、収斂剤、血管収縮剤

(インドの収斂ハーブローション(肌用))

 

★渋味を示す食材例

では具体的に、どんな食品がこの味なのでしょうか。

野菜:アルファルファ、アボカド、ブロッコリー、芽キャベツ、キャベツ、
ニンジン(生)、カリフラワー、ほとんどの豆類、レタス、グリンピース、
じゃがいも、大部分の生野菜

果物:りんご、バナナ(青いもの)、クランベリー、ざくろ
穀物:パスタ、ライ麦
肉類:鶏肉、鹿肉
スパイス類:バジル、ベイリーフ、キャラウェイ、コリアンダー、ディル、
マジョラム、ナツメグ、オレガノ、パセリ、ポピーシード、ローズマリー、
サフラン、ターメリック、バニラ

などになります。

 

★渋味から得られるメリット

渋味は過剰水分を吸収し、流体の漏れを止め、凝固を促進し出血を抑制、粘膜の洗浄、脂肪分を擦り取る、吸収の改善、便を固めて形にするために役立つ味で、この味の持つ「内側に引き寄せる」傾向が、身体組織を圧縮するため、体の引き締めを促進させるといわれています。
この味はまた、傷の癒えを早め、咳を止めるような働きがあります。

 

★取りすぎると……

渋味を過剰に使うと、口が乾燥し、発声が難しくなります。
また、腸内の痙攣、けいれん、痛み、ガス、鼓脹、膨張、便秘、憔悴、昏睡、顔面麻痺などを引き起こし、不眠症や感情の停滞感、倦怠感の原因となる可能性があるともいわれています。

その他、性欲を低下させ、精子数を減少させる味としても知られ、ヴァータ悪化状態の時に使用すると、ヴァータをさらに悪化させてしまい、身体のあらゆる類の閉塞を引き起こす可能性もあるということです。

 

★例外のもの

(ヴァータ強壮ハーブ「ハリタキ」は、渋味が強い)

アーユルヴェーダには、三つのドーシャ(ヴァータ、ピッタ、カファ)のそれぞれの強壮ハーブとなる三種類の果実、「アムラ(あるいはアマラキ)」「ハリタキ」「ビビタキ」を、同じ割合で配合した伝統のハーブ調合薬「トリファラ」がありますが、

ヴァータにとって重要な強壮ハーブとなる「ハリタキ」は、強い渋味があるものの、温める効果があり、消化後の効果(ヴィパカ)が甘味であることから、例外となっています。

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さて、これまで、6つの味がもたらすそれぞれの効果をお伝えしてきました。

味によって、ある特定のポジティブな、あるいはネガティブな感情の原因になることがあるというアーユルヴェーダ独自の見解は、とても興味深いことではなかったでしょうか。

普段、偏ってよく食べがちな味。そういった味が、感情や思考を形成しているとしたら、とる味を変えることで、ある程度調整できるということは、まさに私たちが「食べるものによって左右される」ことを実証しています。

さて、次回からは、ドーシャ別にこれら6つの味との関係性について、お伝えしていきたいと思います。

 

《村上アニーシャ さんの記事一覧はこちら》
https://www.el-aura.com/writer/%E6%9D%91%E4%B8%8A%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3/?c=73188

 

(トップ画像/渋い味の代表フルーツ「ざくろ」)