伽座守珊瑚の開運『狼語り狐語り』第7話~『子猫と狐』

所は現代の東京。下町界隈に発生した《ぬいぐるみ失踪事件》も解決。今回は先輩狐眷属『甚六』が、見習い子猫眷属『ちゃ』の疑問にお答えします。

 

狐語り……稲荷と人間のつながりとは

で、稲荷と人間の付き合いに話しを戻すと、古い稲荷狐はこの国をヤマトという。

もっと昔を知る大先輩は、ヤマトは「神の民」という神の国の言葉だと言う。

この「の」と言うのが曲者で、神様の持ち物なところの民が神様の為に勤勉に働いて、神が喜ばれる為に民を助けて働くのが眷族の「狐」だから、この神の民は稲荷と同じように「稲荷の狐」を大切にする。

人間が眷族に向かって「稲荷様」なんて呼んでくれるものだから、駆け出しの眷族見習いな「霊な狐」が、神様なつもりで稲荷の社に住むことになる。神を迎え入れる人間の魂が未熟だと、未熟な眷族を引き寄せてしまうからだ。

残念だがそういった狐が稲荷の狐と思ったり、稲荷の神だと信じる人間がいる。

詳しい記録は人間の歴史にあるんだろうが、新しく出来た西の国から黒船とかいうのが来るのに先立って、この国に眷族の狐を大勢育てる計画が神々の間で決められた。

新しい文化を取り入れて、西洋式の工場や鉄道を作る為に人間を助ける為だ。

神々はヤマトの民が他の国に隷属せずにと願い沢山の眷族を送り出した。電話も電気も満足に普及して無い時代、西洋の文化や技術、交際の術の習得を迅速に成就さえるには、人間の欲しがる願いに働く稲荷眷族の狐が適役だった。

例えば、急に誰かを呼びたいとき、狐が迅速に呼びたい相手の元へ飛び、その人物が偶然立ち寄るように仕向ける。稲荷狐ならではの働きだ。

この来たるべき明治維新の産業インフラ整備の為に、江戸の末期までに、飛脚便で京の伏見稲荷の札が江戸やもっと遠方まで届けられた。この時若い眷族狐も札に乗ってやってくる。眷族は人間の願いが叶うように働くことで育って力を増す。伏見の成功に習って他の稲荷の札も運ばれる。

願いが叶った人間が感謝して神様にお礼に参れば、その眷族は位が上がって、より大きな働きが出来るようになる。

稲荷の狐77375239

 

まだ人々が神様に礼儀をわきまえていた時代なので、直接個人でお礼参りが叶わぬ庶民でも、代表者がみんなの分もお参りする『講」方式で参拝者に謝意を託すから、稲荷の札大流行で庶民にお札に乗って届けられた稲荷の未熟な眷族狐は高確率でレベルを上げて立派な眷族に育ち、神様の元に帰ってきた。

その狐たちが人間に協力して鉄道や近代建築を速やかに作り上げ、明治の日本は西洋の列強に軽んじられ無い体裁を保てた。

人間の見栄と向上心は狐の得意分野だ。

ただ、困った事に爆発的に流行った稲荷祀りは、火事や水害で札や社が無くなったり、息子や孫の代になって疎かにされたりして、神様の元に帰れずヤサグレる『霊狐』を量産する結果にもなった。

人間の願い=欲をコピーしているから博打や先物取引で損をさせ、彼らを粗末にした人間の家に仕返しをする。

人間と沿って育つ稲荷狐だからこそ、勤勉さ、向上心といった正の性分だけでなく、人間のもつ恨み、怠惰などの負の感情も写し取ってしまう。

ずっと昔からも稲荷の眷族に限らず狐も蛇も、人間に近い所の命のある肉体をもった生き物の名で呼ばれる眷族程、人間とおなじ生臭さに堕ちる者はいた。

が、維新計画崩れとも言うべき堕狐や迷い狐は、稲荷の勧請が流行り過ぎた分、その数は莫大に多かった。

おかげで稲荷は祟るとか、個人で祀ると一生どころか子々孫々祀らないと家が衰退するだのと流言飛語に見舞われた。田畑や稲作、収穫した倉を護り、鎮守の神様の御御饌を手配する尊い稲荷の神様が居られて、勤勉で知恵深い眷族の狐が多く居るのにだ。

子猫は意識の中に届いた情報を受け取ると、キラキラ輝いて少し姿が大きくなった。眷族霊は、神様や人の役に立つか知識を増やすなど経験を積んで『育つ』から。

成長した子猫275592005

 

甚六は今少し成長した子猫に、普通の心の会話で話しかける。

「沢山のおやしろに同じご神名の神様が祀られているが、どの神様も、心の正しい人が真剣に祈ると神霊界の神さまの『一部』がコピーされて分身になって宿る。世界中何万の神社や寺、教会があって、同じ神仏が何万か所に祀られても、神仏は同時に世界中に何万でもになって存在出来る。それぞれに降りる個性があるのは、祈る人々の境地・精神に応じた部分がコピーされるから。何処の部位がコピーされてもお姿は神様全身の姿で降りてくる。愛情深い者の祈りには胸から、知恵ある者の祈りには頭から、目立たない所も頑張る者の祈りにはお尻とかだな。尻の穴は凄いぞ、意識し無くてもしっかり締まってる。人間の祀るご利益で有名な神仏は、実は神様仏様のケツから来ているのかもな。ははは。目を丸くするなよ子猫ちゃん。なにしろわたしは『ケツネ(狐)』ってもんだから。」

 

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