〜災害時に知っておくべき2つの危険な心理バイアス〜 感情美人への道Vol.106

最近、関東地方や関西地方で大きな地震が発生しています。今回は予期せぬ災害に遭った時、自分の身を守るために必ず知っておかなければいけない2つの心理バイアスについて学びましょう。

バイアスとは?

「バイアス」という言葉、聞いた事がありますか? 「バイアス」とは、「心のクセ」や「偏った考え」という意味になります。

私達は常にこの「バイアス」に左右されて、本来すべきではない不合理な決断をしているのです。
普段はそれでも大きな問題にはなりませんが、災害時は一瞬の判断ミスが命に関わります。
今回は、「楽観バイアス(正常性の偏見)」と、「同調バイアス」の2つについて解説します。

 

「楽観バイアス」について

「楽観バイアス(正常性の偏見)」とは、自分にとって都合の悪い情報を無視し、過小評価してしまう心のクセです。
私たちは、悲劇的な証拠がそろっていても、常に「自分だけは大丈夫」と思い込んでしまいがちです。

これに関して、ユニバーシティカレッジ ロンドンの神経科学者、ターリ・シャーロット教授が行った実験があります。
喫煙して、バイクが大好きな50才位の男性が被験者です。
実験では、彼にPCのスクリーンでネガティブな言葉(「肺ガン」「アルツハイマー」「バイク事故」等)を表示し、自分がそれらを経験する確率がどれくらいあるか予想してもらいます。

その後、被験者と同じ生活習慣タイプの人が、実際にそのネガティブな経験する統計学上の確率が表示されます。
今回の被験者は、自分が肺ガンになる確率は10%と答えましたが、実際彼のようなライフスタイルの人が肺ガンになる確率は30%です。

つまり、この場合本来の確率より2割ほど楽観的に現状を解釈している事になります。
しかも厄介な事に、正確な統計値(30%)を被験者に伝えた後で、もう一度「自分が肺ガンになる確率はどの位だと思いますか?」と尋ねても、「自分がかかる確率はせいぜい13%」と答えてしまうのです。

なぜかと言うと、被験者にとって「悪い」情報を聞くと、理性を司る「前頭葉」の働きが鈍るからです。
逆に、統計値が自分の予測より良いと(つまり、自分の予測が50%だったのに、実際の統計値が30%だと知った場合)前頭葉が働くので、きちんと「自分がかかる確率は30%だ」と訂正を行えます。

私たちの脳は、悪い情報を無視するようにできています。
ちなみに、この楽観バイアスはおよそ8割の人にあると言われています。

私は東日本大震災を体験し、被災した経験があります。
地震発生当時被災地にいた人の中には、確実にこの「楽観バイアス」が働いていました。
誰もあんな津波が来るなんて予想していなかったのです。

 

「同調バイアス」について

もう1つの「同調バイアス」という心理は、「その他大勢がやっていることが正しい」と考えてしまう心のクセです。
「同調」が一番起きやすい人数があるのをご存知でしょうか? 答えは「12人」です。
災害時、自分が所属する集団が避難を開始しなければ、自分だけ避難を開始するのはかなり難しいと考えて下さい。

 

パニックにならずに冷静な判断をするために

想定外の災害に遭い、理性を保つのは至難の業です。
でもあらかじめ「楽観バイアス」と「同調バイアス」という心理を知っていれば、それだけ合理的な避難行動が取りやすくなります。
そしてあなたの行動は、周りの人の命も救う事ができるかもしれないのです。

また同時に、私たちは普段起こらない珍しい出来事に、「過重な重みを付ける」というクセもあります。
例えば珍しい自然現象が起きたからそれが大災害を預言するものだ、とかいう胡散臭い情報です。
そういった信憑性のない情報を真に受けてパニックになるのではなく、防災グッズを確認したり具体的な対応策を進めるようにしましょう。

震災を経験し、私が個人的に備えていれば良かったと思うものは、簡易ガスコンロとカセット、単一乾電池、予備の懐中電灯、携帯式ラジオです。
あとはお風呂の水は落とさず翌日まで貯めておく事、ガソリンは満タンにしておく事です。
食糧は意外と手に入ります。
むしろライフラインに関わる物を重点的にストックされると良いかと思います。
皆様も、ぜひもう一度点検してみて下さい。

 

《柊 りおんさんの記事一覧はコチラ》
https://www.el-aura.com/writer/2012102201/?c=17188