本当は絶世の美姫!? 雪の結晶の如き美貌を持つ姫神☆磐長姫神1

磐長姫神は醜い。
その醜さ故に瓊瓊杵神に返されて人の寿命は短くなったのだと。
それが神話で語られる磐長姫神の姿。

だが、それは本当なのか?
なぜなら、鳥取県日野郡に鎮座する菅沢神社と聖滝にはそんな神話を覆す磐長姫神美姫伝説が伝わっているから。

ならば、それが本当なのかこの眼で確かめたい、そう思い、私は昨年の冬に菅沢神社を訪れた。

 

重く鬱陶しい女の念

はぁ~っと息を吐き出せば白くなり指先は凍え、雪が降らない方が寒さが身に染みる日だったが、一の鳥居をくぐり、川を渡って御神域に入るとほんわりと包まれた。
それは春の暖かさではなく、かまくらに入ったような温かさ。雪の温かさ。

けれど、私の足は重い。
その日、まだ解決せぬ仕事を抱えていた私は、お客様の身代わりとなりお客様が受ける生霊の念を受けていたから。

(女の念は重い!)

自らが受けたものではないが、その重さと鬱陶しさにうんざりしていた。

(でも、こんなの受けてて御神域に入り、磐長姫神がお気持ちを悪くはされないかしら? ましてや醜いのよね、女の念って。)

送る本人の外見的な事ではなく、心根が醜ければその形となってくる、それが生霊だ。正確には念の一部と言った方が正しいだろう。
醜い心根が形となり、それはいつしか生成りとなって般若となり、蛇になるのだ。念の悪しき三大変化、まだ初期なそれでも重く鬱陶しい。

一歩踏み出す毎に重さは下へと下がる。御神域に入り、その清らかな氣に押しつぶされていくのだろう。
私の右足にしがみ付くようにしてそれでも諦めずに憑いてくる根性には拍手を送りたいが、その根性は別の事に使った方が絶対いいと思った。……余計なお世話だと念には激怒されそうだが。

 

清々しいほど男前なる御業

重い右足を引きずりつつ、拝殿の前へ。
すると、急に右足が軽くなったと同時に、バンっと何かがぶつかる大きな音がした。
振り返り視れば、念が恨めし気な顔で私を視上げている。
そして、念は御神域の外へと急速に押し流されるようにして消え去った。

「……なんて有無を言わさぬ男前なやり方! すごいな、磐長姫神!」

見事としか言いようがない。
そして、こんな見事な御業を惜しげもなく披露してくださる磐長姫神が醜い訳がない。

「お姿を拝見させていただきます!」

参拝し、高らかに宣言をして私は本殿に向かった。

続く。

 

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