映画大国インド
インドもインド映画も「人生が変わる」体験をもたらしてくれます。
多宗教、他民族国家から生まれる多様な文化的エキスが詰まった特異な作品群……。
そして何より映画製作本数世界1,2位を推移する巨大映画産業が魅せる技巧の数々が思いもよらない心の扉を開き、生き方のヒントを与えてくれます。
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(12/7~全国公開中)
現代のインドで“生理用品”の普及に人生を捧げた男の苦難と成功の半生を描いた一作です。
モデルとなったのは、2014年の米国「タイム」誌で《世界で最も影響力のある100人》に選出された実業家アルナーチャラム・ムルガナンダム氏です。
2001年当時のインドの生理用ナプキンは高価な代物で普及率はわずか12%。
生理障害で死に至る女性も少なくありませんでした。
そんな中、彼は“愛する妻”のために低コストでつくれる生理用ナプキンの試作を見よう見まねで始めます。
四六時中「ナプキン」「ナプキン」とつぶやく男。
試作品を手に試着してくれる女性を探す日々。
もちろん、それまで勤勉な修理工だった男の変化に周りは奇異の目を向けます。
「お前は変態なのか?」「女性の生理は“穢れ”だ」「恥だ」。
しかし、男は自分の行いの正しさを信じて、あきらめずに試作を続けるのですが……。
愚かさとは? 賢さとは?
全編を通して主人公の「自由意志」が問われます。
時代の因習により男は徹底的な批判を浴びますが、それでも意志をつらぬきます。
ただ、映画は単なる意固地な男の成功譚を映すのではなくて、「いつ」「どこで」「誰の」意見を取り入れるのか、運命の分岐点を自らの意志で進む「パッドマン」の軌跡を丁寧に辿っていきます。
苦しいことはネガティブに、嬉しいことはとことんポジティブにふりきって描くインド映画のノリに苦笑いも爆笑もしつつ、何が愚かで何が賢いことなのか。人生のヒントが見つかります。
『バジュランギおじさんと、小さな迷子』(1/18~全国公開)
全世界で150億円に迫る大ヒットを記録。
本国公開から3年が経った今でもインド映画の世界歴代興行成績No.3をキープする超大作です。
主演はインドで最も影響力のある〈3大カーン〉のひとりサルマン・カーン。
各国で注目が集まる中、高まる要望に応えて遂に日本で公開されます。
旅行中のインドで不慮の事故によりひとり取り残された迷子のパキスタン人の少女シャーヒダー。
彼女を家族のもとに送り届けるため、お人好しだけが取り柄のインド人の青年パワンは少女と国境を越える旅に出ます。
歴史、宗教、経済など様々な面で激しく対立するインドとパキスタン。
ばか正直なパワンと喋ることができないシャーヒダーの旅は、道行く人々の協力に支えられながら、またあらぬ誤解から警察に追われながら、緊迫する両国を巻き込む波乱万丈な道のりを歩みます。