一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.276「あまろっく」

あまろっく

タイトルの先入観を捨てて観て欲しい

笑って泣いての極上家族映画の登場!!!

「52ヘルツのクジラたち」の試写に行ったら中止とのことで2時間どうしよう、と思っていたら違う作品の試写をやっていて、それが観る気のなかった本作。宣伝嬢が面白い、というのでまあいっか、と観ることにした。そして……号泣した……。

鶴瓶と中条あやみが再婚てそんなはずあるわけないわ、あまろっくて、尼崎でロックする話かいな? と試写案内とタイトルを見てパスパス思てた。「映画大好きポンポさん」の時もタイトルとビジュアルで引いたが、観たら号泣だったし、先入観をなかなか払拭できないわが身であった。

さて、本作のタイトルのあまろっくてのは、兵庫県尼崎市にある尼ロックと呼ばれている尼崎閘門のこと。船舶が通過できる巨大閘門で、水害の時など市内に海水が流れ込むのを防いでいる。この尼ロックがしっかり話に絡んできて、タイトルが伏線にもなっている大感動の家族の物語だ。

なんも考えず見てたら、次から次へと怒涛の展開で、ストーリーの巧さにも驚いた。泣いて笑って、ラストはえっ、という着地で、監督の原案のオリジナルな話とのことで、それも驚いた是非とも観て欲しい佳作である。

あまろっく

優子の性格に共感して号泣した!!!

関西出身役者の好演と怒涛の展開に見入る

尼崎でお気楽な父親(笑福亭鶴瓶)と優しく賢い母親(中村ゆり)と暮らす優子。しかし母が早世し、楽天的な父親に反発。長ずるに成績優秀、堅実で完璧主義の厳しい性格となりただいま独身39歳。会社では優秀な社員として表彰されていたが、後輩への容赦ない態度や協調性皆無の人間関係に問題があり、リストラの憂き目に。

父親が1人住む実家に帰ってきたものの、父親は笑顔で「おかえり!」。再就職もままならぬある日父親がなんと20歳の女性と再婚するというではないか! その女性早希は明るく「優子ちゃん、仲ようしょうな」とグイグイくるのであった……。優子役の江口のりこに共感! 頑なで自分にも他人にも厳しい完璧主義者。協調性なし。

それゆえ周りから浮いている。まるで若いころの自分を見てるようじゃないの!! 私は自分には甘かったけど……。彼女が素直になれないシーンで涙涙。四面楚歌の悲しさよ。何をやっても上手くいかない。周りにイライラする。分かるわあー。そんな優子が明るく前向きな早希と出会い、変わっていく。

次々に問題が起こる展開も編集も素晴らしい! 特に編集は映像だけでシーンを紡いでいく。それだけにより悲しみが浮き上がる。涙涙のシーンだ(詳しくはネタばれなので書けないけど)。主要三人が関西出身なので関西弁も違和感なく聞いてて心地良い。中条あやみも演技は達者だ。この明るい能天気キャラは彼女にピッタリ。不満顔の江口のりこもはまっている。

あまろっく

人生で起こることは何でも楽しまな!

私たちは人生を楽しむために生まれた!!

ラストはどうなるのかと思ったが、こういうのももちろん、ありだよね。どころか、今風のこれからの、素晴らしい選択だと思った。やったね、と大拍手のラストだ。そして、最後に本作で一番心に残ったセリフを紹介しよう。優子がリストラにあって傷心で実家に帰ると父親が笑顔でこう言う。「人生で起こることは何でも楽しまな!」ああ、その通りだ!! 

悲しいことでも、苦しいことでも、悔しいことでも、イライラすることでも、楽しまな!!! 生きるってそういうことだもんね。私たちは人生を楽しむためにこの世に生まれてきたんだもの。忘れがちだけど、そうだったそうだった。素晴らしいセリフ。心に刻みました!!


監督・原案・企画 中村和宏 

脚本 西井史子

出演 江口のりこ 中条あやみ 笑福亭鶴瓶 松尾諭 中村ゆり 中林大樹 

駿河太郎 紅壱子 久保田麿希 浜村淳 佐川満夫 高畑淳子

※119分

※4月12日(金)から兵庫県先行ロードショー

※4月19日(金)から全国ロードショー




  

  

《一宮千桃さんの記事一覧はコチラ》