一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.277「陰陽師0」

陰陽師0

山﨑賢人の新しい顔に出会える

呪術エンターテインメントの秀作!!!

いいなあ。山﨑賢人。「ゴールデンカムイ」も素晴らしかったけど、今作もクールで美しく、冴え渡っていた。彼に見とれました。ほんとうに美形だし、演技も、アクションもできて稀有な俳優だと思う。もっと演技を評価されてもいいと思うけど。

さて、夢枕漠原作の「陰陽師」は2001年に野村萬斎と伊藤英明で映画化され、その作品も安倍晴明と源博雅の友情を超えた熱い関係に萌えたし、野村萬斎がかっこよくて大好きな作品だった。で、今作は0(ゼロ)で、晴明がまだ陰陽師の学校で学ぶ若き時代というオリジナルストーリーだ。

監督がアクションにも定評のある佐藤嗣麻子(山﨑貴監督の奥さんです)なので楽しみに試写に行ったのだが、これ、大丈夫? と思ったほど呪術シーンがリアルで不気味だった。監修に、呪術に詳しい作家加門七海の名前が……だけに、本格的なのだ。

ちょっと鳥肌がたったシーンもあったが、美しくアクションも見ごたえありの文句なしに面白いエンターテインメント作の仕上がり。とにかく山﨑賢人を美しく撮ることに重きを置いているふしもあり、女性監督視点と感性が嬉しい一作だ。

陰陽師0

若き日の安倍晴明の怜悧さ、天才ぶり

呪術と政治の絡んだミステリアスな展開!!

さて、最初から謎の夢のシーンで幕開き、それを解明していく緻密なストーリーに魅了される。陰陽師の学校、陰陽寮で学ぶ学生たち。そこは昇進と階級を争う嫉妬と悪意、足の引っ張り合いという人間の魑魅魍魎が跋扈する世界でもあった。そんな中で天才的、実力はピカイチながら、昇進などまったく興味のない安倍晴明。傍若無人な態度に周囲から浮いている状況のなか、知り合った貴族の源博雅からある怪奇現象の解決を頼まれる。

その頃、学校内でも学生の変死事件が起き、晴明は巨大な陰謀に巻き込まれていく……。呪術の世界を描くという世界観を小道具やセット、衣装、またCGを巧みに使いそのおどろおどろしい世界を見事に再現。最近大河ドラマの「光る君へ」を毎週見ているので、烏帽子姿や、十二単の着物が麗しく見ごたえがあった。「光る君へ」でも安倍晴明は登場していて、呪術を駆使して帝の后を呪い殺したりしている。呪術が政治と絡んでいた時代が共にドラマチックだ。

しかし、今現代も呪術と政治は裏で密接に絡んでいると思う。隠されているけど。まあ、日本て国がそういう呪術と密接につながりがある国なので……。それはさておき、怖い世界であることが本作でもよく分かる。


陰陽師0

人を呪わば穴ふたつ……

人の心の弱さ怖さ、邪悪さを垣間見る

山﨑賢人の怜悧な無表情や、冷たい物言い、印を結ぶ指の形の美しさ、水の上を歩くような静のアクションなど、かっこいいに尽きる新しい晴明の登場だ。他に、姫役の奈緒の一途な想いを吐露する演技は切なく迫力があった。奈緒は私が最近注目している俳優の一人で、やっぱり、すごく感情の演技がリアル。好演を見せてくれた。衣装も美しく、雅な世界に浸れた。

こういう平安時代ものは海外で受けると思うので、どんどん輸出してほしいものだ。というわけで、呪術の世界、それすなわち人の心の深い部分を描いた作品でもある本作。考えさせられる内容でもある。


監督・脚本 佐藤嗣麻子

原作 夢枕漠

出演 山﨑賢人 染谷将太 奈緒 安藤政信 村上虹郎 板垣李光人 國村隼 

北村一輝 小林薫 

※113分

©2024 映画「陰陽師 0」製作委員会

※4月19日(金)から全国ロードショー





  

  

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