一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.275「ネクスト・ゴール・ウィンズ」

ネクストゴールウィンズ

南の島、サモアの奇跡!!

ラスト、泣かされて泣かされて……!!

泣きました。こんな泣かされてなんて。思いもしなかったよ。いきなりの衝撃の事実が後半明かされ、なんの疑問もなく観ていた私は突然水をぶっ掛けられたように驚き、全てを合点して泣いた!! 彼の苦しみや行動を全て理解した。そういうことなのか……。

全然気づかなかった伏線。見事にしてやられた。ふつうのスポーツ実話ものと思っていたら、思わぬ伏線回収に大泣きと、巧妙に作られた脚本に脱帽だった。そして、観終わってもいつまでも余韻が残った、私にとって稀有な一作となった。

ネクストゴールウィンズ


やる気のないコーチにメンバーはイライラ

第3の性を自認するジャイヤと衝突……!

サモア。行きたい国のひとつだった。そのサモアのサッカー代表チームの驚きの実話という。世界最弱と言われたチームは公式戦で一度もゴールを決めたことがないという奇跡の(笑)チーム。2001年のW杯オセアニア予選では0-31という記録的惨敗を喫してしまい、ゴールキーパーは鬱になってしまったほど。

そんなチームに起死回生の凄腕コーチがやってくる。しかし、やってきたコーチは最近問題を起こしまくり、今回の仕事がコーチとしての首がかかった最後の仕事だった。やる気のないコーチにメンバーたちは反発し、特にトランスジェンダーのジャイヤは衝突するのだが……。

のどかな南の島でのずっこけ特訓が行なわれる。サッカーのルール知ってんのか? 状態の個性的なメンバーが楽しい。中でも話を引っ張っていくのが見た目は女性、でも男性というジャイヤ。そんなメンバーが実際いること自体面白い(彼女は公式戦に始めて出場した第3の性といわれる選手。ラストに実際の本人が登場するのでお楽しみに)。

彼女は硬直しているコーチの心を解きほぐしていく。次第にチームメンバーと心を通わすコーチ。ここらへんはお約束ながら、音楽で流れるように見せてくれて懐かしいハリウッド映画ノリなのだ。しかし、予選は波乱の展開でコーチは正念場に立たされる。

ネクストゴールウィンズ


生きていたらどんな悲しみも乗り越えられる

差し伸べられた手をとって!!!

前述したように驚きの展開で大感動が待っている。この映画の監督が私の大好きな映画「ジョジョ・ラビット」のタイカ・ワイティティ。「ジョジョ・ラビット」のラストシーンも素晴らしかったけど、本作のラストショットも憎いねえ~、という粋さ。監督、素晴らしいです。大好きです。今回も出演して最後に笑いをとっているけど。これはいらないかも(笑)。

コーチ役の俳優が、誰だったかなあ?? と観ている間ずっと分からなくて最後にマイケル・ファスベンダー!! じゃないの!! と分かった。えーっ痩せて歳とって(46歳)……しかもこんなコメディ映画に出るんだあーっと驚き。いい味出してます。

さて、伏線部分は内緒だけど、ほんとうに清々しい気持ちにさせられる映画である。人は生きていたらどんな悲しみも乗り超えられる。誰かが手を差し伸べてくれたら。また、その手の存在に気づいたら。すぐにその手をとればいい。簡単なことが出来ない私たち。じっくりと落ち着いて周りを見渡すことも大切だ。そんなことをあれこれ思った。素敵な映画ってこんな映画のことだろうな。

監督・脚本 タイカ・ワイティティ 

脚本 イアン・モリス

出演 マイケル・ファスベンダー オスカー・ナイトリー カイマナ デウィッド・フェイン

レイチェル・ハウス ビューラ・コアレ エリザベス・モス

※104分

※2月23日(金・祝)から全国ロードショー





  

  

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