一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.274「哀れなるものたち」

哀れなるものたち

何十年に一度あるかないかの傑作!!!

ベラの過激冒険に快哉と感動!!!

凄い映画を観た……。私の映画人生で何度か頭を鈍器で殴られたような衝撃的な映画は何本かあったが、こんな衝撃は初めてかもしれない。とにかくここ何十年かはなかった。呆然自失。観終わってくらくらして口が開いたまま……なんて状態で試写室を出て宣伝嬢に感想を聞かれても「いや、びっくり凄かった。もう目が点……」とうろたえ、夢遊病者のように帰路についたのだった。

グロテスクとアートと娯楽とセックスと女性映画がごった煮になった稀有な傑作であり、珍品。監督は天才であり、変態である!! 是非とも観て欲しい。そして頭を殴られて欲しい。世界を見る旅に出て欲しい!!!

自殺した女性に幼児の脳を移植して蘇えらせた天才外科医ゴッドウィン。彼は身体は大人、脳は幼児という女性をべラと名づけ、研究対象としてまた娘のように観察して見守る。自由奔放で無垢、幼児のごとく振舞うベラは最強で魅力的。そんなベラに魅かれた遊び人の弁護士は、一緒に旅に出ようと誘う。ベラも世界を自分の目で見たい、と彼と共に旅にでる。それはベラの成長と覚醒の波乱の旅だった……。


哀れなるものたち

幼児の脳を大人の女性に移植

ベラは常識や偏見、差別をぶち破る!!

そもそも、幼児の脳を大人に移植って、それだけで面白い話ができるよ。しかし、本作は原作がある(アラスター・グレイ著)のだ。ベラは最初幼児そのものの行動をとる。気に入らないと泣き叫んだり、床に寝そべったり、気ままだ。まっしろのまま。しかし、脳は成長する。

ベラは弁護士によってセックスの喜びも教えられるし、旅で知り合った富豪の女性やその連れの男によって教養や世界の仕組みを教えられる。どんどん知性に目覚めるベラ。彼女は世の中の偏見や差別、常識や固定概念を打ち破って驚きの行動をしていく。

エマ・ストーンの振り切った演技に唖然!

ここまでやった勇気とチャレンジ精神に脱帽!!!

凄いなあ。ベラ役のエマ・ストーン、ここまでやるか? の全部見せてのぶっとび演技。すでにゴールデン・グローブ賞で作品賞と主演女優賞を取ってるが、アカデミー賞も受賞必至だろう。こんだけの演技ってもう彼女は一生できないだろうとも思う。今、この年齢での出会いでできた演技だと思う。

彼女はお尻までの長い黒髪でぶっとい眉毛。衣装もまるでおとぎの国の姫のような衣装ばかり(衣装素晴らしい!!! かわいい!!)。顔はフリーダ・カーロみたいだし、その行動力もフリーダを思わせた。おとぎ話の姫が冒険するお話のごとし。それは過激で激烈な冒険だけど、物凄くカッコよく、胸がすく思いがする。おおっやってくれた!!! なのだ。登場するキャラクターの濃さや、セックスシーン、ゴッドウィンの手術シーンなど、引くシーンも固まるシーンもあれど、ベラの冒険からは目が離せない!!


哀れなるものたち


ラストには深い感動と安寧が待つ

希望を感じさせる優れた女性映画

本作は素晴らしい女性映画の仕上がりで、ラストには静かで深い感動が待っている。知性を獲得したベラは果敢に時代を引っ張っていく、そこには女性たちの安寧がある。それは希望であり、理想だが、成し遂げられるものである、と信じたい。

監督 ヨルゴス・ランティモス

脚本 トニー・マクナマラ

原作 アラスター・グレイ

出演 エマ・ストーン マーク・ラファロ ウィレム・デフォー ラミー・ユセフ 

クリストファー・アボット スージー・ベンバ ハンナ・シグラ キャスリン・ハンター

※142分

※1月26日(金)から全国ロードショー

※1月19日(金)から先行上映あり



  

  

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