一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.273「ゴールデンカムイ」

ゴールデンカムイ

壮絶アクションに涙、そしてギャグ

エンターテインメントの一級品の仕上がり!!!

2年前に教えていた学生が「ゴールデンカムイ」が一番好きなマンガだと言っていて、どんなの? と聞くと「アイヌの話でけっこう笑えて熊との獣姦とかあってぐふふふ」と言うので「獣姦??」やばいマンガなんだろうな、とその時は思っていた。マッチョ系のマンガだろうと思っていた。読むことはないと。

で、今回山崎賢人主演で映画化されると知り、「えっ映画化できるの? 大丈夫??」と思ったが、何も考えず試写を観に行った次第。そして、私は驚愕した。なんて面白いんだ!!! 物凄い巧妙に作られた作品ではないか!!! もう俄然続きが早く見たい!! マンガも読みたい!! アニメも観たい!! と切に思ってしまったのだ。

しかも、涙してしまったシーンもあり、アクション作なのだが、なにかしら全篇を貫く悲しみのようなものが色濃くて、アイヌの歴史を思わずにはいられないからか、ピーンと張り詰めたような緊張と悲哀が感じられた。美しい雪のせいか。戦闘シーンの激烈さゆえか……。何はともあれ、一級品の仕上がりではある。

ゴールデンカムイ

24人の囚人の身体に掘られた刺青

金塊バトルの序章の始まり!!!

激しい戦闘シーンから幕があがる。日露戦争での恐れ知らずの猛攻で不死身の杉元と言われた杉元佐一は、除隊後北海道で砂金採りをしていた。そこで知り合った男からアイヌ民族から強奪された金塊がある場所に隠されていることを知る。その場所を記した地図は網走刑務所から脱走した24人の囚人の身体に掘られた刺青を合わせたら暗号として浮かび上がるらしい。杉元は途中知り合ったアイヌの少女アシリパと共に金塊を狙い行動をともにする。しかし金塊を狙うのは杉元だけではなく、曲者どもが続々登場して

杉元たちの行く手を阻む……!!! 山崎賢人。驚きのマッチョな肉体改造を見せてくれる。十キロの筋肉。ほそっちかったのに、猫背だったのに、なんて綺麗で逞しい身体に!! その肉体を駆使して挑む壮絶アクション。熊との対決もそうだが、走る荷車の上での殴りあいアクションは時間も長くて目が離せない凄まじさ。香港映画か韓国映画ばりのリアルさだ。また、雪の中や凍った川の中へのダイブなど体を張った役者の演技が説得力がある。アシリパ役の山田杏奈も猛特訓の上で弓の扱いや、身体の切れを力強く表現。目力も合いまってかっこいいのだ。杉元を助ける強き良き相棒だ。

本作はマンガ原作(全31巻)の3巻までの話ということで、ほんの序章。でもたくさんの謎を散りばめていて、登場人物も多く、今後がどうなっていくのかもう、早く知りたい!!と本作の終わりに絶叫しそうになった。


ゴールデンカムイ

アイヌ関連の考証もバッチリ!

本物のこだわりと姿勢に血湧き肉踊る!!

また本作はアイヌの言葉や、衣装、家、風俗などしっかり再現も考証もされていて興味深い。アイヌ人の役者も出演していたりと、製作の姿勢が素晴らしい。杉元の使う銃や小道具などもよく見て欲しい。本物のこだわりが分かる代物だ。マンガ原作もしっかりと考証はされているそうなので、実写もこだわったのだろう。最近は観客の目が肥えているのでチャチだとやはり突っ込みが入るのだろうな。しかし、制作費は莫大なものと思われるリッチな出来である。

さて、囚人の身体に彫った地図などおどろおどろしい展開ながら、杉元の幼馴染の梅子とのエピソードは泣かせる。杉元の金塊狙いの目的でもある。エンターテインメントの中の泣かせの部分。やはり、それがあるかないかで私の中で作品の評価はぐんと違う。本作は娯楽の中に観客を叩き込んで、心を震えさせる。笑いもある。見事です。

監督 久保茂昭

脚本 黒岩勉

原作 野田サトル

出演 山﨑賢人 山田杏奈 眞栄田郷敦 工藤阿須加 矢本悠馬 玉木宏 舘ひろし

泉澤祐希 高畑充希 マキタスポーツ 秋辺デボ 勝矢 大谷亮平

※128分

※2024年1月19日(金) 全国公開
©野田サトル/集英社 ©2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会






  

  

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