一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.272「屋根裏のラジャー」

屋根裏のラジャー

イマジナリーフレンドという心の友

感動とエンタメと想像力爆発の傑作アニメ!

スタジオジブリから派生した会社スタジオポノック制作のアニメ映画。ジブリのテイストを残しながら、独自の道を進みつつあるが、本作はジブリ作品(宮崎作品)より分かりやすく、しっかりストーリーもあり、エンタメ度も高い感動娯楽作品となっている。ポノック制作アニメは今後も期待大である。本作はしっかりとした物語があるのだが、原作があるのだ。

それでか、と思ったのだが伏線が最初から張られていて、その伏線を最後に回収するのだろうな、と分かっているのだがラストその伏線回収に見事にはまって、かなり泣いてしまった。これは、たぶんこの作品のテーマでもある「イマジナリーフレンド」というものがたぶんにスピリチュアル的で感情を刺激するからだと思う。

屋根裏のラジャー

人間に忘れられたイマジナリーたち

感傷的な彼らの存在が本作を深める

イマジナリーフレンド、空想上の友だち。子供の頃に出現してやがて大人になったら消える。それは心の中の友だちだけに限らず、本当にその友だちが見える子供もいる。敏感な子供は見えるのだ。

本作の主人公ラジャーは、アマンダという少女のイマジナリーフレンドだ。彼らはふたりで毎日想像を駆使して雪山冒険や空を飛んだりと想像の世界を目一杯楽しんでいる。ラジャーはアマンダにしか見えない。アマンダのママは見えないけど、ラジャーの存在は理解している。でも、家に奇妙な老人が訪ねてきたことから、不吉な兆しが。

イマジナリーフレンドは想像主の人間に忘れられると消えてしまうという宿命を持つ。ある日アマンダにショッキングにことがふりかかり、ラジャーはイマジナリーの町へと迷い込む。そこは持ち主に忘れられたイマジナリーたちが暮らす町だった。ラジャーはアマンダのもとへ戻れるのか?

スリリングなアクション展開に

目が離せない!! そしてラスト泣ける!!!

すごい想像力の爆発映像が最初から目白押しである。ここらはさすがジブリ出身スタッフの高度な技を堪能できる。そして、イマジナリーの町の仲間たちの造形も楽しい。ラジャーはアマンダのためにその仲間と冒険し、追っ手と戦う。スリリングなアクション展開があり、後半は目が離せない。

誰しも、子供の頃は心の中に話を聞いてくれる自分だけの友だちがいたのでは? と思わせてくれる。いなくても、それはぬいぐるみだったり、おもちゃだったり、描いた絵だったりしたのだ。それらに心の声を告白していた。話しかけてた。大人になったらそんなことはさっぱり忘れてしまう。でも、思い出したよ。と思わせてくれる珠玉の作品である。それが私が泣いた所以だろう。

屋根裏のラジャー

子役の声に癒される

インナーチャイルドを愛し話しかけよう!!

本作で気づいたのだが、アマンダとラジャーの声を子役が演じているが、子供の声が聞いているといかに癒されるか、ずっとふたりの掛け合いの声を聞いていたいと思わされた。寺田心、鈴木梨央、ふたりの声が素晴らしかった。もちろん演技も名演である。

子供の声は大人の声優が演じることが少なくないが、やはり子供の声は子供が担当すべきだと思った。もうひとつ特筆は奇妙な老人が連れた少女である。造形は「アダムスファミリー」の少女みたいなのだが、最強で悲しみを湛えていて、一番印象に残った。

しかし、大人になっても私たちには「インナーチャイルド」という友だちがいるのだった、と今思い当たった。「永遠の3歳の私」。もっと愛して、話かけなければ、ね。

監督 百瀬隆行

脚本 西村義明

原作 A・F・ハロルド

声の出演 寺田心 鈴木梨央 安藤サクラ 仲里依紗 山田孝之 高畑淳子 杉咲花

イッセー尾形 寺尾聰

※108分

© 2023 Ponoc 

※2023年12月15日(金)全国東宝系にて公開





  

  

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