一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.271「法廷遊戯」

法廷遊戯

三人のロースクール生の

罪と恨みと贖罪が絡み合う衝撃の展開!!

97分間、一瞬たりとも退屈しなかった。飽きなかった。えっどういうこと? とずっと頭を働かせて、何を見せない? 何を隠してる? とずっとその隠されたものを探っていた印象。面白かった!! 久々に本格推理を楽しんだ一作だ。本作は現役弁護士の五十嵐律人のメフィスト賞受賞のデビュー作で、自身もロースクールの学生だった時に執筆したそうだ。賞は満場一致で受賞と、さもありなんの出来である。原作も読みたくなった。

法廷遊戯


巧妙な脚本と法律の知識は

目から鱗の発見の連続!!

さて、話はミステリーなのであまり言えない。また、何も情報を入れずに本作は観たほうがより楽しめると思う。展開が早く、それについていこうと夢中で見入る、というのも本作の醍醐味だからだ。すこしだけ言うと。ロースクールで学ぶ三人の若者が主人公。優等生の馨、セイギ、美鈴。三人を巻き込む殺人事件は裁判へと発展していくのだが……。

本作を観ながら、これは法律関係の人が書いてるな、と分かる。それほど専門的な用語や裁判の様子や、法律についてのことが話に絡んでくるからだ。だから、終始「へえーっ」と驚きがあり、勉強になる。しかも、その法律を熟知してる上での作劇なので素人は知らないことばかりで目から鱗だった。巧妙。それが心地良い。


法廷遊戯

隠されている部分を推理する楽しさ!!

それが全て見えた時、「あっ」と驚く

しかし、話は推理だけではなく、現代日本の問題も織り込んでいて、なかなかに辛いラストである。人の心はゆがみだしたらきりがないのかもしれない。また、恨みもきりがない。悲しみが漂うが、ラスト、セイギがこの後どうするのか、それは観客それぞれに問うて映画は終わっている。

美鈴役の杉咲花が、熱演である。彼女は実際は明るいらしいが、暗い役が本当に似合う。過去がある女がピッタリである。そして本作は過去に翻弄される若者の話である。だから過去の回想シーンが秀逸だ。それを絶妙な編集によって隠して見せて、を繰り返す。最後に全部見せられた時、あっと驚く。そこへいくまでのもどかしさと不安が本作の肝である。

 

監督 深川栄洋 

脚本 松田沙也 

原作 五十嵐律人

出演 永瀬廉 杉咲花 北村匠海 戸塚純貴 柄本明 生瀬勝久 筒井道隆 

大森南朋 潮田玲子 五十嵐律人

※97分

※11月10日(金)から全国ロードショー





  

  

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