一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.250 「ナイトメア・アリー」

ナイトメアアリー

迷い込んだ悪夢小路は野望と官能と
読めない展開に絡め取られるスリラー!!

この物語はどこに行くんだろう? 先が読めない展開に袋小路に迷い込んだように不安なのに、ワクワクした気持ちにさせられる。
それはまさにタイトルの悪夢小路(ナイトメア・アリー)なのだけど。
そのダークで官能的な世界観に絡め取られるような2時間半だった。
さすが、ギレルモ・デル・トロ監督、変態ぶりは健在だ。

開巻からの衝撃的な映像。
彼は家に火を放ち逃げるようにバスに乗る。
彼、スタンはバスを降りて目に留まったカーニバルに惹き付けられる。
そこは獣人ショーという禍々しい非道なショーで客を興奮させ、金を取っていた。
そこでの仕事にありついたスタンは読心術師のジーナに気に入られ、彼の夫のピートから幽霊ショーの秘伝を奪うことに成功する。
スタンはカーニバル内で人気の若く純真な娘、モリーに言い寄り、共にカーニバルを出てショーをやろうと持ちかける。
2年後、ふたりは一流ホテルのショーで人気を博していたが……。

ナイトメアアリー

 

秘密を抱えた主人公のあぶなっかしさ
謎の女の本当の歪んだ目的は……。

野心溢れるスタンがカーニバルで過ごす前半と、モリーと成功してから危険な依頼にのめりこんでいく後半と、どんどん破滅へと加速していくスタンの壊れ具合が痛ましくも気味がいい。
どこまでもうさんくさくて秘密を抱えたスタンが(ブラッドリー・クーパーの押しの強い、図々しい感じがぴったり)あぶなっかしいのなんの。
対する、後半から登場のケイト・ブランシェットの貫禄と凄み。
この女、リリスもある意味狂っているのだ。
登場した時からヤバさ満点。
だって、ケイト・ブランシェットだよ!? 怖い女なのだ。
頬骨の高い彼女のプライドは天の如しだろう。
スタンとリリスの駆け引きに息を呑む。

ナイトメアアリー

 

原作の暗いテイストが映画化でも魅力
悪夢の絢爛豪華な映像化!

前半のカーニバルの獣人ショーって、まあ日本で言えば見世物小屋みたいな要素もあって、昔お祭りで「ろくろ首」とか「狼少女」とか謳ってたなあ。入ったことはないけど。
日本好きの監督だけあって、カーニバルの装飾はナマハゲみたいなんもあって笑えた。
獣人って、日本だともっと悲惨なのが出て来そうだけど、やっぱアメリカはそこまでエグくない。
どこまでも映像的でアートで世界観は怖い夢物語のようなのだ。
自分で御することが出来ない野望に突き進んだ青年の悲しい顛末。
それは皮肉でありながら、自業自得でもあり。
しかし、運命を切り開いていく彼のがむしゃらな勇気は称賛に値する。
スタンはこの後でも、きっと甦るだろう。

原作者が波乱の人生を送り、晩年心霊主義に傾倒していったそうで、結局自殺したとのこと。
思うに、きっと悪魔が憑いていたんだろうな。
本作は原作のダークさをエンターテインメントに昇華しているが、異様な不安定さはきっと原作者のスピリットが表出したものだろう。
そういう意味でも悪夢、として観たい一作だ。

 

監督・脚本 ギレルモ・デル・トロ
脚本 キム・モーガン
原作 ウィリアム・リンゼイ・グレシャム
出演 ブラッドリー・クーパー ケイト・ブランシェット トニ・コレット
ウィレム・デフォー リチャード・ジェンキンス ルーニー・マーラ ロン・パールマン

※150分
©2021 20th Century Studios. All rights reserved.
※3月25日(金)から全国ロードショー

 

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