一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.175 「えちてつ物語 わたし、故郷に帰ってきました。」

ありふれた人生の悲喜劇
それがこんなに号泣させられる映画になる!

数年前から鉄道コースのある専門学校で教えていて、鉄道会社に勤めたい学生と接して初めて鉄道の役割や大切さ、仕事内容、地域の人からの信頼などを知った。

そして、鉄道マンというのはカッコいい職業なのだと認識を新たにした。
だから本作もえちぜん鉄道の話というので楽しみに試写に行った。

行って良かった。
観て良かった。
大号泣した大感動作だったのだ。

観終わってからも泣き続けていたら宣伝の方から「もしかして養女とか? お兄さんと確執あるとか?」と聞かれてしまった。
養女じゃないけど、あっ兄とは確執あるかも!? と思い当たった。
ああ、身につまされる話だったんだなあ~と納得。
しかし、そうじゃなくても生きていく上での人情や葛藤や後悔や矜持や決意をきっちり描いていて、共感必須のすがすがしい日本映画の秀作となっているのだ。
すごいCGもアクションもないし、有名女優も出てないけど、気持ちはアクション映画ばりに上がり下がりと興奮させられた。
こういう映画こそ、若い世代はもちろん、広い世代に観てほしいと切に願う。

 

お笑いタレントの夢破れ帰郷
えちてつのアテンダント(客室乗務員)に!

いづみは高校生の時に自分が養女だということを知り、それ以来父や兄とぎくしゃくし始め、家から逃げるようにお笑いタレントを目指して上京する。
しかし、まったく売れずコンビも解消寸前状態。
そんななか友人の結婚式に出席するため久しぶりに福井の実家に帰省する。
そして、ひょんなことで知り合ったえちぜん鉄道の社長にスカウトされ、アテンダント(客室乗務員)の研修を受けることに。
しかし、気軽な気持ちのままで身が入らず、年下の同期に非難されたり、兄とも事あるごとにぶつかってしまい、気持ちが荒むばかり。
そんなある日、列車の乗客にピンチが……! いづみがとった行動は?

えちぜん鉄道のアテンダントって初めて知った。
乗車券の販売や回収、観光や接続案内の車内アナウンス、高齢者などの乗降時のサポートが主な仕事。
制服も麗しい、なかなか他社にはなさそうな仕事だ。

また、映画では福井の観光名所も紹介されていて、私も福井は一度行ったことがあり、あわら温泉街や、永平寺など「良かったなあ~」と懐かしく、東尋坊や恐竜博物館は行かなかったので今度行こう、と思いつつ楽しく観れた。

 

日本の鉄道マンの心意気の凄さ
住民のためのえちぜん鉄道だから!

さて、いづみはかなりノリが軽くていい加減なところもあるのだが、単純でストレートで正直。そして勇気あり。

その彼女の勇気に、クライマックスでは社長も英断を下し、鉄道の本来の役割を思い出す。
地域の生活に根付き、地域の人々のための鉄道だと。
このシーンの社長の言葉も感動的!
えちぜん鉄道は前身の京福電鉄時代に二年続けて大事故を起こし、運行停止になった過去がある。その過去の失態を乗り越えて今があり、そのことを忘れてはいけない。

やっと取り戻した住民の信頼。
その信頼に答えるために電車は走らなくてはならないのだと。
社長の言葉に泣きながら、私は日本の鉄道の、鉄道マンの素晴らしさを実感していた。
日本は植民地に、最初にインフラを徹底していった。
というのを本で読んだことがある。

日本の鉄道は世界に誇れるものである。
この社長のような意識の鉄道マンが世界にどれだけいることか。
もしかしたら、日本だけかもしれない……。

 

いづみと兄の和解シーンに涙!
福井にまた行きたくなりました

いづみのとった行動に、皆が協力してエールを送り、目的を貫徹するラストシーンがハラハラうるうるさせられる。
ここまで来るのにいづみはうまくいかないことばかりで、人の優しさに思わず涙ぐんだり、意地を張ったり、素直になれなかったり。兄との関係も突破口が掴めない。
すごい共感させられる。
いづみ役の女優が不細工で、誰これ? と思ったら人気の芸人さんらしく、不細工がゆえのリアリズムで演技も自然で上手くて、彼女が演じたからこそ、こんなに共感できたのだとも思った。
ほぼ中盤から泣いていたけど、一番泣いたのは、やはりラストの祭りのシーンか。
兄と仲直りの祭りの太鼓。私も兄と仲悪いからなぁ……。
いや、兄嫁とか。
いづみの兄嫁はすごく優しくていい人でうらやましかった。

本作で、いづみが体験するもろもろは生きていたらよくある類いの話だ。
それを丁寧に描く。
人の感情を細やかに描く。
そうしたら、人を感動させる素晴らしい映画ができる。
物語の作り方のお手本のような作品だと思った。

大号泣して、その日はすっきり。
空を見上げながら帰った。
また、福井に行きたいなあ~なんて思いながら。
そういうのが、生きていくってこと、日常の喜びってもんだよね。

 

 

監督・脚本 児玉宜久
脚本 村川康敏
出演 横澤夏子 萩原みのり 緒形直人 笹野高史 山崎銀之丞 松原智恵子 辻本祐樹

※109分
配給:ギャガ
© 2018『ローカル線ガールズ』製作委員会

※11月3日(土)福井県先行ロードショー
11月23日(金・祝)テアトル梅田ほか全国ロードショー

 

 

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