四緑木星癸卯・令和5年のスタートにあたって —— “忘れ河”の水を飲み干し生まれた私たちは、ウサギ飛び跳ねる陽気な春に真の“ムスビ”と邂逅する

四緑木星の年

ここ数年の停滞感を吹き飛ばすように経済は跳ね、微かな希望が見えてくる — 四緑木星癸卯は、誰もが“人生の春の訪れ”を感じられる年

新年明けましておめでとうございます。昨年も一年間、この『TRINITY』紙上で私の文章を読んでいただき、誠にありがとうございました。皆様、穏やかな令和5年のお正月を迎えられましたでしょうか。

今年の干支は癸卯(みずのとう)、四緑木星の年です。恵方(歳徳)は丙の方・南東で、歳破は酉(西)の方となります。癸卯の“癸”は水の陰の気で、雨や雪といった恵みの水のイメージです。癸は十干の最後にあたり、生命の終わりと、新たな誕生を意味します。“卯”は、季節でいえば陽春。ウサギが跳ねるイメージです。両者を総合すると、癸卯の今年はこれまでの混乱や苦しみといった濁流が洗い流され、勢いよく好転してゆく一年になると言えるでしょう。

四緑木星は、“風”を表す星です。往来、遠方、交通、取引、盛況といった象意があります。人に例えれば、旅人、迷い人、商人といった、距離感を持って“動き”を表すもの、また信用、縁、調うといった意味があります。


昨年・令和4年の五黄土星は“帝王”という、政治指導者を表す象意でしたが、海外に於いてはロシア—ウクライナ戦争でプーチン、ゼレンスキー両大統領とも一歩も引かない姿勢が、多くの犠牲者を生みました。また、イギリス、スウェーデン、スリランカ、ペルーなど各国で相次いでトップ交代が起きましたが、経済不安も相まって激しいデモなどの混乱が生じました。日本の岸田政権は辛くも退陣を免れましたが、相次ぐ閣僚の不祥事による辞任や防衛増税等で国民の厳しい批判を浴び、その基盤は著しく弱体化していると言えるでしょう。

四緑木星の今年に関しては、これまでの経済の停滞を拭い去るかのように、社会では活発な商取引が展開されそうです。四緑木星の“遠方”“往来”の暗示がある通り、特に“風”の象徴であるインターネットを駆使した海外との貿易や、SNSを媒介とした新しい交流が、活発となりそうです。株式市場では“寅千里を走り、卯は跳ねる”という言葉があります。今年も電気、ガス料金やガソリンなど物価高は避けられない状況ですが、景気の方は若干、例年よりも上向き好転する一年となりそうです。

2023年を表す漢字一文字は“結” 古い慣習、人間関係が完結し、新しいシステムや仲間とのご縁を結ぶ一年に

今年の納音(なっちん)は、昨年に続き金箔金(きんぱくきん)。自分自身が“金”の如く、社会の混乱や不景気に左右されない、どこのいても光り輝くような実力を養う一年となりそうです。また、美的感覚に優れロマンに生きる、一途に愛情を表現する、社交性に富み相手を引き立てる、といった暗示があります。素敵なご縁を結ぶ一年にしましょう。

二十八宿は、井宿(せいしゅく)。今年は、自身の得意分野や関心のある領域について深掘りし、知識や技術を磨くことで、物心両面で豊かさを享受できる暗示です。また、他者との会話、コミュニケーションが肝となる一年となるでしょう。頭の回転も速くなり、SNSを媒介として繋がった人と新しい共同事業がlaunchしたり、知的好奇心を刺激するようなハイレベルな意見交換ができたりと、将来に向け良い収穫を得られそうです。一方、ネット上でカジュアルに行われていた舌禍による口論や名誉毀損は、今後、本格的な訴訟などで思わぬリスクとダメージを負う危険性を孕みます。風の時代は、“余計な事に首を突っ込まない、余計な事は言わない”が上手く生きる為のキーワードとなります。他人を傷つけた“業”(カルマ)は必ず自分に返ってくると肝に銘じて、“負”ではなく“正”の言葉を努めて使う事を心掛けましょう。

過去の“卯”の年を振り返ると、1963(昭和38/癸卯)年→三井三池三川炭鉱炭塵爆発事故、1975(昭和50/乙卯)年→クアラルンプール事件、1987(昭和62/丁卯)年→国鉄民営化・JR誕生、1999(平成11/己卯)年→欧州統一通貨ユーロ誕生、東海村JCO臨界事故、2011(平成23/辛卯)年→東日本大震災と、その後の国際情勢、日本社会の在り方に大きな影響を与える出来事が起きています。今年も、世間を驚愕させるなんらかの出来事が、国内外で発生する可能性があると言えるでしょう。

また、過去の四緑木星の年には、2014(平成26)年→アベノミクス解散で自民党圧勝、2005(平成17)年→郵政解散で小泉自民党圧勝、1996(平成8)年→初の小選挙区制導入総選挙、1987(昭和62)年→竹下登内閣成立、1978(昭和53)年→自民党初の総裁公選で大平正芳首相誕生、1960(昭和35)年→安保闘争で岸信介首相退陣と、やはり日本の政治史に大きな一ページを刻むエポックが起きています。再び巡ってきた四緑の今年も、首相の交代或いは衆議院解散・総選挙の可能性が高いとみて良いでしょう。上記を挙げた上で、姓名学者として、令和5年/2023年を象徴する漢字一字を挙げるなら、“結”としたいと思います。

完結、終結、結実、結集、結婚。終わりと、始まり。今年は、“令和5年以前/以後”と後世から区切られるような、旧い時代の価値観やシステムの終焉と、新しい時代を迎える自分にふさわしい、魂の絆で“結ばれた”仲間との生活のスタートを迎える、忘れられない一年となるでしょう。

時代が切り替わる混乱の最中で、様々な軋轢や鬩ぎ合いが発生することは避けられませんが、誠意ある言動、行動を心掛けて、善き“ムスビ”を得たいものです。

“風の時代”が色濃くなってゆく2023年価値観と社会構造が入れ替わる動揺の中で、真の豊かさを噛みしめて

西洋占星術の観点で言えば、2020年に社会構造や権力に大きな影響を及ぼす土星と木星が水瓶座に入宮したことで、600年ぶりに “風の時代”のフェーズに入りました。今年は、“地の時代”を代表する世界観であった物質的豊かさを重視する風潮が完全に行き詰まり、本格的に誰もが“本当に心が満たされる生き方”を、選びとってゆく流れに入ってゆきます。3/7には土星が魚座に移動しますが、個人では長年続いた試練、苦しみから解放されることがあるかもしれません。本当にご縁のある魂との絆が、強化される時でもあります。3/24には冥王星が水瓶座に移動(~6/11)しますが、価値観の相違が表面化し、離婚や退職といった、それまで所属していた組織体からの卒業を図る人もいるでしょう。また社会ではこの時期、驚天動地の自然災害や緊急アナウンスが起こるかもしれません。“闇”が破壊され、表に出てくる時期なので注意しましょう。5/18に木星が牡牛座に移動すると、世界経済は少し上向くかもしれません。これまで努力を続けてきた人にとっては、ようやく“豊かさ”を嚙みしめる時となるでしょう。

 “風”は、電子を媒介としたネットワークだけでなく、ウイルスによる感染症も意味します。昨年からの繰り返しになりますが、前回の風の時代にあたる14世紀には、黒死病として恐れられたペストが海外で猛威を振るい、中国やヨーロッパにかけて1億人が犠牲となりました。ペストの再来とも言えるコロナ禍との戦いは、私たちが生きているこの時代はずっと続きます。一方で、この“目に見えないものへの不安”は、世の人々に心の支えや愛情を求める心を促し、結婚という形を選び、ユニットを組んで社会と対峙する人が今年も増えてゆくでしょう。社会情勢は今年も大規模な自然災害の可能性を含め、厳しい状況に陥る可能性がありますが、個人のプライベートに関しては、(少なくともこのTRINITYの記事を読んで下さっている皆様は)本物の良い“ムスビ”が起き、その支えの中で、“真の豊かさ”を味わえる一年となりそうです。

今年は年頭に当たり、私が若かりし頃に愛読した、昭和を代表する文藝評論家・小林秀雄(1902~83)の『考へるヒント』から、思い出深い一節を引きましょう。

“めいめい次の運命を選んだもの共は、
「必然」の椅子に坐らせられてから、
「忘却の原」を横切るのだが、喉が渇いて、
誰も彼も、「忘れ河」の水を呑んでから、
めいめいの誕生に向つて運ばれるから、
運命は自分が選んだとは、誰ひとり考へないやうになる。”

人生に起きる喜びも悲しみも、それは自分が生まれる前に、全て魂の修行と課して、必然の如く起こるものです。気が遠くなるような輪廻転生のたびに、私たちは「忘却の原」を横切り、「忘れ河」の水を呑んで、再び新しい肉体でこの世に降り立ちます。

現在、纏っているこの肉体でしか、学べないことがあります。

“終わり”と“始まり”が交差する癸卯の緩やか流れの中に在っても、次の「忘れ河」の水を呑むまでに、めいめいに選んで授かったこの生命を、日々の試練に足元をすくわれることなく、全うしましょう。

令和5年、皆様の魂が、“希望”という名の潤いで満たされる日々となりますことを、心より祈念しております。

 

(了)

 

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