私がキラキラネームを“悲名”と名付けたわけ〜我が子への最初のプレゼントは“世間から祝福される”名前を〜

キラキラネーム

世間から笑われる“奇名・珍名”の類を、いつから“キラキラネーム”と持て囃すようになったのか

先日、法務大臣の諮問機関である法制審議会の部会が、漢字本来の読みや意味から大きく外れた、いわゆる“キラキラネーム”について、読み方を認める方向で案を示しました。
政府は来年の通常国会に改正案を提出し、再来年を目途に新制度をスタートさせる方針とのことですが、“海”と書いて“まりん”、 “光宙”と書いて“ぴかちゅう”となどと読ませる、世間でも物議を醸したキラキラネームに遂に“お墨付き”が与えられるとあって、将来の日本の姿に、大きな危惧を覚える声も強まっています。

キラキラネームとは、流行のギャグに引っ掛けた、クスッと笑わせるような語呂合わせなど、私たち日本人の一般常識、一般通念から著しく逸脱した、いわゆる“奇名・珍名”といった類の名前を指します。2000年代に入り、ある乳幼児の母親向け育児雑誌でこの奇名・珍名を“キラキラネーム”と名づけたことが、世間に急速に浸透していった嚆矢と言われています。近年では、夏の高校野球で先発のメンバーが読み上げられた際、選手の半数が“キラキラネーム”であったというニュースが話題を呼びました。恐らく今後もこういった事例は増え続けるでしょうが、姓名学者として、この風潮に対して、文章として残しておきたいと思います。

 

キラキラネームとは“悲名”である — 大切にされない名前から、“悲鳴”が聴こえてくる

私が、姓名判断のブログを始めて、間もなく20年になります。
この間、“キラキラネーム”に関しても、見解を求められる場面が何度もありました。その際、私はキラキラネームを“悲名”と命名しました。文字通り、他者から愛されない、悲しい名前。その氏名から、“悲鳴”が、聴こえてくるからです。

人間の氏名は、まさに“使命”であり、“音霊”(おとだま)という言葉もある通り、それ自体が尊い、神からの授かりものです。姓名判断において、良い画数、良い音霊、良い字霊(漢字の語源)で構成された名前はまさに“御守り”であり、事件や事故、病気から心身を強く護ってくれます。しかし一過性の流行り廃りや、他人から嘲笑されることを前提として命名されたキラキラネームは、まさに神様への冒涜であり、その名を背負った人物にも、大きな人生の困難を背負わせることになります。

たとえば、キラキラネームを背負った子供は、その名前のせいで、学校でいじめに遭うかもしれません。また、自分の名前を名乗る度に、いちいち他人から嘲笑され、気を悪くする場面も多いでしょう。また、成人した後の就職活動では、たとえ希望の企業があっても、自身の名前が奇名・珍名であることを理由に、不採用となる確率も高まるかもしれません。そういった“負”の積み重ねが精神を蝕み、道を踏み外してしまう可能性も高くなるでしょう。キラキラネームを背負った子が人生で成功を収める確率は、普通の名前よりもグッと低くなる可能性が高いと言えます。

 

キラキラネームの跋扈(ばっこ)は日本人の教養力低下の証左 — 誤った風潮の是正が急務

かつて、“悪魔ちゃん騒動”という事件がありました。
生まれたばかりの我が子に“悪魔”という名前を両親が付け、市役所が受理せず係争となった事件です。
最終的には、子供に“阿駆(あく)”と、音だけ残して改名することで決着をみましたが、両親に最低限の常識と一般教養があれば、このような命名は考えられません。最愛の子供に“悪魔”と名づけたこの両親は、学生時代は非行に走り、お世辞にも教養が高いとは言えない人物だったようです。のちに両親は離婚し経営していたスナックは倒産、父親は薬物使用で逮捕されています。現代のキラキラネームブームの源流とも言える事件ですが、キラキラネーム(=悲名)の跋扈は、そのまま日本人の教養力の低下の証左と言えるかもしれません。キラキラネームを窓際で食い止める市役所の努力とともに、親となる人物の再教育が急務とも言えます。私は姓名学者として、日本人の将来を危惧せざるを得ません。

最近では、キラキラネームを苦にしていた子供が、自力で家庭裁判所に改名の申し立てを申請し、すぐに認められるケースが多くなりました。

この制度を活用して、キラキラネームという“悲名”を背負った子が、一日も早く穏やかな普通の良名を得て、正しく明るい人生を送ってくれることを、願ってやみません。

 

これから、お子さんを持たれるご両親へ。

名前は、この世で親が我が子に与える、最初のプレゼントです。

どうぞ真剣に、愛を持って、考えてあげてください。

 

(了)

 

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