神秘思想「カバラ」とはどんなもの?~基本をざっくりと把握し、もっとカバラを身近に感じよう~

カバラ

ある程度タロット占いに詳しい人であれば、多くのタロットカードにカバラの性質が取り入れられている……と聞いたことがあるでしょう。19世紀のイギリスの魔術結社「黄金の夜明け団」によって、カバラとタロットが綿密に組み合わされたのです。

このように西洋系の占いと関連づけられたカバラは、現在特にタロット占いをする人にとって、重要な知識体系であるといえます。

カバラとは、どのようなものか

カバラとは、ユダヤ教の神秘思想です。カバラはヘブライ語で「受け取る」という意味を持ち、主に神から知恵を受け取ることを表しています。カバラの思想体系は、下のイラストの「生命の樹」にまとめられています。

カバラ

10個の球体は「セフィラ」と呼ばれ、それらをつなぐ22本の線は「パス」と呼ばれます。セフィラの複数形が「セフィロト」です。セフィラには上から順にジグザグに番号が振られ、上にあるほど神の世界に近く純粋な性質を持ち、下がるほど物質化して純度が低くなるとされています。各セフィラの名称と性質は、以下になります。

1・ケテル(王冠) 2・コクマー(知恵) 3・ビナー(理解) 4・ケセド(慈悲) 5・ゲブラー(峻厳) 6・ティファレト(美) 7・ネツァー(勝利) 8・ホド(栄光) 9・イエソド(基礎) 10・マルクト(王国)

1のケテルの上には、無の世界が広がっています。最も高い位置に、純粋な霊的真空として「アイン」があり、そこから無限の世界の「アイン・ソフ」が生まれ、そこからさらに無限の光とされる「アイン・ソフ・アウル」が生まれます。

カバラでは「アイン・ソフ」を重視し、ここから生命の樹を含めたカバラのさまざまな世界が生まれるとされます。アイン・ソフは最も高いセフィラであるケテルを生み、ケテルが次のコクマーを生み出し、……と続き、流出されるごとに純度は弱まっていきます。最後のマルクトは、完全に物質化した人間の世界であると考えます。

カバラには4つの世界がある

カバラの世界には、やはり霊的な純度の違いによって4つの世界が存在します。以下の4つで、上ほど神に近い霊的に純化された世界であり、下に行くほどその純化が濁り、物質化するとされています。

1・アツィルト界 神名の「無制約的世界」

2・ブリアー界 創造の「大天使的世界」

3・イエツィラー界 形成の「天使的世界」

4・アシャー界 物質の「元素的世界」

これらの4つの世界に、それぞれ1つの生命の樹があると考えられています。

順番として、アイン・ソフからまずはアツィルト界のケテルが生まれます。そして、アツィルト界のマルクトから、下の世界であるブリアー界のケテルが流出されます。つまり、全世界で40個あるセフィラの中で、アツィルト界にあるケテルが最も純度が高く、アシャー界にあるマルクトが最も純度が低くて物質化している……と考えるのです。

カバラはどのようにできたのか

カバラの起源についてはさまざまな説がありますが、はっきりとしたことは分かっていません。楽園追放前のアダムに、天使が伝授したという一説もあるようです。

神秘思想家エリファス・レヴィによると、カバラ体系の三大原典は『セフェル・イエツィラー(形成の書)』、『セフェル・ハ・ゾハール(光輝の書)』『アポカリュプス(黙示録)』であるとされています。最古の『セフェル・イエツィラー』の著者は、旧約聖書に登場するアブラハムであると伝えられ、大変古い歴史を持つことが分かります。

生命の樹をどのように利用するのか

カバラの信仰者は、「カバリスト」と呼ばれます。人によって取り組み方は違うでしょうが、この生命の樹を利用して瞑想を行うと聞いたことがあります。人間界を表すマルクトを出発し、意識を上昇させながらひとつひとつのセフィラを通して、神に近いケテルを目指す……というやり方です。

マルクトの物質界にどっぷり浸かるということは、肉体的な快楽を強く求めるということ。そこから離れて、より高い精神性を目指していくのです。

カバラ

精神性を高めることの重要性は、カバラ以外の世界でも伝えられていますね。このように。カバラは大変複雑でありながらも、普遍的な目的を持つ体系であるといってもいいのでしょう。




参考文献

マンリー・P・ホール著(1981)『カバラと薔薇十字団』人文書院

中村心護著(2022)『セフェル・イエツィラー』


  

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