「なりたい自分を叶える」身体的なアプローチ
トラウマやこころの問題などを解決するのに、カウンセリングやヒーリング、または潜在意識の書き換えなどをされる方もいらっしゃると思います。
それぞれ有効な手法だと思いますが、ここでは、過去4つのコラムでご紹介してきたように、発達性トラウマは脳や神経系という「身体」に刻み込まれているという観点から、身体的にアプローチする方法を述べてみたいと思います。
近年、心理療法の世界でも、対話形式のカウンセリングだけではなく、身体および身体感覚が重要な「こころへの扉」だと考える人が増えてきています。
代表的な身体的心理療法
・ゲシュタルト療法
・フォーカシング
・EMDR
・ブレインスポッティング
・ボディコネクトセラピー
・ポリヴェーガル理論
・ソマティックエクスペリエンシング
・クラニオセイクラルセラピー・バイオダイナミクス
など、たくさんありますね。
「対話式のカウンセリングは苦手……」という方は、こういった身体的な心理療法を試されるといいかもしれません。
また、セルフケアで発達性トラウマを改善させる方法はHPでもご覧いただけます。
ここでは、私が専門にしているクラニオセイクラルセラピー・バイオダイナミクス(以下、クラニオ)について少し触れさせていただこうと思います。
クラニオは、お身体に軽く触れさせていただいて、その方の生命場に現れる1次呼吸という潮流のような動きを感じ取りながら行う、ヨーロッパの国々では一部保険対象にもなるタッチセラピーです。あなたの存在全てを包み込むような優しいタッチで、こころと身体、そして魂の調和を促します。
1次呼吸とは?
人体システムが表現しているごく微細なリズム運動で、身体全体が「開いたり、閉じたり」または「伸びたり、縮んだり」を一定のリズムで繰り返しています。受精の瞬間から始まるとされていて、肺呼吸と区別するためにこのような名前が付けられました。
1次呼吸のリズミカルな動きは脳脊髄液の循環を発生させて、全身にいろんな意味での滋養を与えているとされています。またその動きの大きさや質感などから、その方の今の健康状態を知る手掛かりにします。
気になる1次呼吸の役割って何?
ちょっと記憶を遡っていただきたいのですが、私たちは昔、受精卵から細胞分裂を繰り返して胎児へと成長してきました。まだ筋肉のなかった受精卵時代に、どうやって細胞分裂を繰り返す「原動力」を得ていたのでしょうか?
さらには、神経系、消化器系、運動器系など、精妙に人体を形作る「形成力」や「編成力」はどこからやってくるのでしょうか?
はたまた、生まれてからこれまでも成長を促してきてくれた「推進力」、そしてケガや病気から回復させてきてくれた「修復力」、そのような目には見えない神秘的な力に私たちの命は支えられていると考えられます。
クラニオのセッションでは、あなたに1次呼吸の働きが十分に表現できるようにお手伝いをさせていただいています。
クラニオセイクラルセラピーって、どんな風に行われるのですか?
カウンセリングの後、着衣のまま施術ベッドに仰向けに横たわっていただきます。妊婦さんやお身体が不自由な方は、横向きになっていただいたり、その方の状態に合わせます。施術者は、まず自身を落ち着かせて、クライアントの準備が整うのを待ち、そして静かに身体に触れていきます。
施術を受けた後は、どんな変化がありますか?
このワークでは、「悪いところを治す」アプローチはせずに、あなたの中にある潜在的な治癒力と協力してワークを進めていきます。その結果、今のあなたに必要なことが起こると言われています。あなたの内にある治癒力がドクターで、施術者がアシスタント兼、その空間の保持者という立ち位置です。例えば、膝の痛みで来られた方に触れてみると、あなたの内なる医者が腎臓を元気づけるよう指示してくるかもしれません。このように、今、現れている症状の原因を探っていくと、時には数十年前の交通事故、または、出生時のストレスにまで遡ることもあります。
クラニオを受けていただくと、あなたの心や体の中にあるもつれた糸が、少しずつ解けていくような解放感が得られます。
他のセラピーとの違いは、何ですか?
一般的なボディワークでは、押したり、揉んだり、刺したり、擦ったり、といった強めの刺激が、術者から受け手へと加わりますが、クラニオでは、触れるか触れないかの優しいタッチで、内側から自然に解放されるのを待ちます。力のベクトルでいうと、前者が外から内、後者が内側から外側へ広がり緩むイメージです。
クラニオは、非侵襲的なワークとも呼ばれています。また、特にバイオダイナミクスのアプローチでは、施術者の技術や判断を一切挟み込まない、というのも大きな特徴です。私たちの生命と健康を司るライフフォースの推進力と、潜在的な治癒能力の妨げにならないよう、施術者はサポート役に徹します。
日本でセラピストを探すには?
ネットで「クラニオ」と検索すると、筆者が帰国した2010年に比べ、ずいぶんたくさんヒットするようになりました。多くの方が関心を向けられ、クラニオを学ばれる方が増えてきているのは、喜ばしい限りです。その背景には、エドガーケイシー氏を紹介した映画「リーディング」や、ナチュラル志向の女性に支持された「murmur magazine(マーママガジン)」の編集長である服部みれいさんが、ご自身の著書の中でクラニオワークを紹介されたことなどが影響していると考えられます。また、受け手にとって負担のない、一番自然な形で心身が整ってくるこの施術法が、世に必要とされている結果とも言えると思います。
たくさんのクラニオワークの中から、混乱せずあなたに合ったものを選んでいただくために、簡単に整理をさせていただきます。現在、日本で行われているクラニオワークには、大きく分けてクラニオセイクラル・バイオメカニクスと、クラニオセイクラル・バイオダイナミクスの2種類があります。両者とも、クラニオセイクラルという一語のみで表記されていたり、「クラニオ」という略式で表現されることが多いので、混乱を招いているのも事実です。ですが、両者の内容が大きく異なりますので、簡単にご説明させていただきます。
クラニオセイクラル・バイオメカニクス
本来、アメリカの大学で学ぶオステオパシーの手技の一部が、アプレジャー博士の貢献により、家庭の主婦(夫)が家族のケアをできるようにと簡略化し、体系化したものが世界中に普及して、クラニオセイクラルの名が世に知れ渡りました。簡単なステップで、しかも週末のワークショップなどで学べることから、一般の方をはじめ、鍼灸やカイロの先生がプラスアルファのスキルとして学びに来られている感じでした。脳脊髄液の原理を利用して、臓器や組織に優しくアプローチしますが、バイオダイナミクスと比べると、まだボディワークに寄った施術法という印象です。
クラニオセイクラル・バイオダイナミクス
一方のバイオダイナミクスは、バイオメカニクスよりもさらにソフトで、繊細なタッチの施術法で、身体の組織や構造よりももっと大きな存在全体へのアプローチになります。生命の神秘を感じ取る類まれなる繊細なタッチを、施術者は何年もかけて学びます。ただ、言語化や数値化に適しておらず、感覚的要素が非常に強いため、教えるのも学ぶのもなかなか難しく、時間と経験が必要になってきます。受け手としては、日常では完全に「オフ」にしきれない、無意識の緊張やこわばりが優しく解けて、「ああ、これがわたし。」というシンプルな感覚が蘇ります。
他にも、学ばれたことをベースに、別のものを加えたり改良されたり、オリジナルのワークを作り上げ、それを独自のクラニオワークとされているものも多く見られるようになりました。ネットなどで探される時は、プロフィールから、施術者がどこでどんなことを学ばれたかなどをご覧になられると良いと思います。
自分が受けてみた感想
イギリスでのトレーニング中、私自身何度も施術を受ける機会がありました。
ある日、施術が始まってすぐ、自分の身体が硬直して固まっているのが感じられました。
「飛行機の移動で、疲れてるなあ」とぼんやり思っていると、突然、身体がガクンとベッドに沈み込むような感覚があり、徐々に意識が遠のいていったのをぼんやりと覚えています。その後は、ずっと深いところで漂っていました。まるでお母さんのお腹の中で、誰にも邪魔されることなく、深い安心感に包まれながら、休息している感じでした。
その様子を傍で見ていた先生は、私の周りにシールドができて、優しい静寂に満ちた空間ができていたと言っていました。施術が終わってからは、深いところでグラウンディングできた感じがして、呼吸が深く、満ち満ちている感覚がありました。
このように、特に不調はない方でも、リフレッシュやメンテナンスの一環で受けられると良いと思います。自分自身に還れます。
ここではクラニオのワークをメインに紹介させていただきましたが、今回のコラムの冒頭で述べたように、身体志向の心理療法はほかにもいろいろあります。ぜひ、ご自分に合った方法に出会っていただき、「なりたい自分」に近づく一助にしていただければ幸いです。
2021年以降、ますます「働き方」や「生き方」などが問われて、「自分らしさ」を追求する人にとっては追い風が吹いているようにも感じられます。それぞれの場所であなたらしい花を咲かせられますように。
そらとり自癒力活性サロン
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