■免疫を高める食品選び〈10〉 小麦は本当に悪モノ?~アメリカ人がヨーロッパでパンを食べると、消化が楽?~インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol.92

便利さや快適さを自然界の掟から遠く外れるほどまでに追求してきた先進国の人たちが抱える問題に対し、 アーユルヴェーダは今、改めて、自然と調和して生きることの大切さを問いかけているように思えます。

さて、一方で、日本はもちろん、アメリカ、ヨーロッパといった先進国のスーパーマーケットにならんでいる日持ちするパンは、

じっくりと時間をかけて準備される本来の古風なパン製法とは違い、なんと焼くまでにたった2時間しかかからない高度に処理された技術が使われ、さらにはパンが悪くなったり固くなるまでに、数週間から、あるいは数ヶ月という長い期間保存できるという日持ちのよさ。

一見ヘルシーさを売りにしている全粒小麦パンと称されたものの成分を、よくよくチェックしてみれば、

発音しようと思えば舌を噛みそうな難しい名前の化学物質が何個も並んでいることに気づくでしょう。

これ自体でも十分に怪しさ満載ですが、こういった保存のきくパンというのは、食感をよくするための「細菌が繁殖できない植物油」が含まれているとドクターは指摘しています。

これらの成分によって、パンがふんわりパフっと心地よくつぶれる感、いわゆる「新鮮」ぽい質のパンに見えるわけですね。

こういった植物性の油は基本、そのままの天然の状態では簡単に腐敗してしまう傾向があるため、製造される過程において、保存できる期間を延ばすために、こういった腐りやすい油に対し、漂白、煮沸、脱臭、精製といった過度の加工が施されます。

その加工レベルは、もはや虫やバクテリア、あるいは微生物たちが食べ物とみなさないレベルにまで到達し、これが防腐剤のなんたるかです。

というわけで、問題なのは小麦そのものではなく、パンやパスタといった小麦製品が、どのように準備され、加工されたかを知り、賢い食品選びをすることをドクターはすすめています。

(全粒小麦で作られたチャパティは理想的なパン)

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確かに、食べ物が日持ちするようになれば便利です。

さらに食べた時の質感がよく、舌がおいしいと思えるにこしたことはないでしょう。

そういった便利や味の心地よさとひきかえに、虫やバクテリアさえも食べないわけのわからない物質を、知らず知らずのうちに過去60年あまり渡って食べてきた、先進国の人々。

これにより、小麦、乳製品、穀類、ナッツ、種子、マメ科植物、豆類などの高タンパク質を適切に分解して消化することがますます困難になり、結果として、昔では起こりえなかった問題の数々に直面しています。

このため、こういった消化しにくい食べ物をすべて食事から取り除くことは、単に一時的な症状の緩和を提供するだけで根本的な解決策にはならず、まずは弱った消化力を改善することの大切さをドクターはアドバイスしています。

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先進国日本で生まれ育ち、文化も食習慣も思考回路もまるで違うインドで暮らし始めた当初は、その不便さにストレスがマックスだった時期も経験しましたが、

(水や電気が突然止まっても、いつ復旧するか誰にもわからない。野菜が欲しいときは野菜市場に、肉が欲しいときは肉屋に、服が欲しいときは服屋に、といったように物がいちいち別々の店に売られているので、それぞれに足を運ばなければ手に入らない、など)

この両極を体験してみて、
今振り返ると、

便利さや快適さを自然界の掟から遠く外れるほどまでに追求してきた先進国の人たちが抱える問題に対し、

アーユルヴェーダは今、改めて、自然と調和して生きることの大切さを問いかけているように思えます。

それは、

・ちゃんと「腐る」ものを食べること
・じっくりと時間をかけて準備された自然の食べ物を食べること

このあたりを本気で見直さなければならない時期が今なのではないでしょうか。

 

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(トップ画像は、じっくり時間をかけて作られたヨーロピアン・パン)