■免疫を高める食品選び〈６〉小麦は本当に悪モノ？～グルテンフリー食・アーユルヴェーダの見解　その１～インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol.88

さて今回は、私がインドで暮らし始めた当時受けたカルチャーショックなエピソードからお話したいと思います。

インドの食文化は、日本の食文化とはまるで似ても似つかないほどの違いがあり、市場に並ぶ野菜は、どうやって食べたらいいかわからないものばかりで、とても新鮮な驚きを覚えたものでした。

また、インドの家庭で普段食べられているパン・チャパティの作り方を知ったときや、それを食べたときのおいしさにも感動したものです。

まず、パンなのに発酵が要らないこと。全粒小麦粉と水、そして少量のオイルと塩（人によってはこれさえも入れないことがあります）だけで作ったパン生地を、丸い台の上でクルクルと器用に薄く平べったい形に伸ばし、チャパティ専用の鉄板で両面を焼くだけというシンプルさ。

その焼立てチャパティにギーを塗って食べたときのおいしさは、格別でした。

（グルテンフリー食品類は大人気）

それまでパンといえば、食パンやらフランスパンやら、白い色のフワフワしたパンしか食べたことがなかったこともあり、精製小麦粉から作られたパンでは決して味わえない、チャパティ独特のコク（これは栄養分がたっぷり入った全粒小麦粉を使っているゆえに出る味）と、食べた時の体の満足感は、それまでに味わったことのがないものでした。

そしてこの何気ない日常的な体験は、「本当に栄養のある食べ物って、こういう食べ物のことをいうんだろうな」と、インドの食文化に興味を持つきっかけにもなりました。

インドでは、口に入れるものはとにかく「作りたて」が重視され、毎日当たり前のように、挽き立ての全粒小麦や豆を材料そのものから時間をかけて下準備して食べるのが一般的です。

そうしたインドの食文化を見てきて、こういったものを子どもの頃から当たり前のように食べているインド人たちは、免疫や生命力が強くて当然なのかもしれない……。
当時はそんな風に思ったものです。

さて、このようにインドでは、全粒小麦で作るチャパティとギーの組み合わせは、ひとつの伝統的な長寿食として食べられていますが、

小麦といえば、グルテンが含まれている代表的な穀物。

日本やアメリカのような先進国では、小麦などの穀物に含まれるグルテンへの過敏症、セリアック病（小麦・大麦・ライ麦などに含まれるタンパク質の一種であるグルテンに対する免疫反応が引き金になって起こる自己免疫疾患）になる人たちが、過去たった40年の間で、その発生率が400％に達しているといわれています。

このため、グルテンを排除した食事法「グルテンフリー食」が健康的な食事方法として、過去20年ほど人気を集め、今ではその勢いがさらに増しているようです。

……先進国の人たちに、一体何が起こっているのでしょうか。
そして、アーユルヴェーダではこれをどのように解釈しているのでしょうか。