■リンパと食べ物の感情的側面〈前編〉~食べ物の匂いを嗅いだ時から始まる、消化の30日間プロセス~インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol. 150

リンパ

今回は、アーユルヴェーダにおいて「ラサヤナ」と呼ばれるリンパ研究についてのお話を、今回と次回の二回にわけてご紹介したいと思います。

このラサヤナは、リンパ研究であると同時に、「長寿と若返り」の研究でもあります。

リンパと長寿と若返りの研究が同じとは、一体どういうことなのでしょうか……。
まずはそのあたりを見てみたいと思います。

 

・ラサヤナの意味するもの

「ラサ」という言葉は、とりわけ、リンパ液または分泌液を意味し、そして「アヤナ」という言葉は、特別な研究を意味すると考えられています。

したがってラサヤナは、私たちのラサ(リンパ)、言い換えれば私たちの「長寿の分泌液」の研究ということになります。
このラサヤナは、アーユルヴェーダの8つの部門のひとつで、とても重要なものとされています。

リンパは、西洋医学では最も理解されていない体系ですが、アーユルヴェーダにおいては、最も理解されている体系といわれています。
梵語のラサという言葉には、多くの意味があり、そのすべてがリンパの微妙な役割の側面を説明しているということです。
ちなみに梵語では、ひとつの単語が持つ意味が多ければ多いほど、その重要性が増すといわれています。

リンパ

(梵語は意味がたくさんある言葉ほど重要性が高い〈らしい〉)

また、面白いのは、ラサの主な三つの定義は、「リンパ」「感情」「味」です。
この三つ、まるで別々の物というイメージがありますが、実は密接に繋がりがあったのです……。

 

★ラサの定義

*リンパ
*感情
*味
*分泌液/分泌物
*栄養液
*メロディ
*血漿(リンパ漿)
*水
*月経
*精液
*母乳
*満足(度)
*愛

さて、アーユルヴェーダによれば、リンパ(ラサ)は、私たちが食べるものの最初の香りによって、感情的あるいは飢餓反応を支配します。

そしてこの消化プロセス(食物を摂取してから身体組織すべての形成にいたる役割まで)を調整し、あらゆる段階が完了するのになんと30日かかるといわれています。

さらにリンパは、身体の解毒の主な手段であり、免疫力を支配し、私たちの精神的な可能性においても重要な役割を果たすものなのです。

 

〈リンパって何?〉

古典的には、リンパ液は血漿あるいは血液の透明な液体と考えられています。
血中では血漿と呼ばれますが、細胞間のスペースに染み出た時点でリンパ(アーユルヴェーダではラサ)と呼ばれます。

この液体は、脂溶性栄養素と毒素と一緒に、リンパ節が免疫系の白血球の助けを得てリンパを浄化する場所、リンパ管に流れ込み、そこから心臓、そして血液と再結合する場所、脾臓に戻る途中で、最大500個の浄化リンパ節を通過するといわれています。

……そして、30日におよぶ消化の旅を続けるというわけです。

 

最初の匂いからはじまる、食べ物の消化の旅〉

消化は食べ物の最初の匂いから始まりますが、リンパはこれにおいて重要な役割を果たすと考えられています。

食べ物のおいしそうな匂いがすると、その匂いは鼻孔や嗅覚板を通って大脳辺縁系、または感情的な脳の中心部に移動します。

そしてその食べ物が私たちを感情的に満たすのは、この最初の匂いをかぐ時点です。

感情的に満たされる匂いは、私たちの口の中で消化酵素(唾液)の放出を引き起こします。

この最初の、感情的に満たされる消化液(唾液)はサラと呼ばれ、消化酵素とラサ(リンパ液)の混合物です。

さらに、その食べ物、例えばおいしそうな匂いのするパンなどを見て実際に触るとき、この効果は他の感覚によってさらに感情的に強化されます。

リンパ

(インドでは手で食べるのが基本)

私たちは自分の知性と意識を、私たちが食べようとしている食品の意識や知性と結び付けることができ、アーユルヴェーダではこれらの感覚を「意識の道」と呼んでいます。

そしてこれは、私たちが広く開いた感覚で食事をする過程を意識して食べるときにだけ起こるといわれています。

(インドでは、食べ物は箸やフォークなどを使わず、手づかみで食べるのが一般的です。ご飯やカレーをそのまま手づかみで食べるという文化は、一見あまりお上品な感じではなく、むしろ原始人的な感じさえがしますが、実はこれには、手で食べ物の質感をしっかりと感じることで、その後の消化プロセスがスムーズになることにもつながるという、ちゃんとした理由があったわけですね。)

そしてこの意識は、感覚によって支持され、味覚の意識の影響を最も受けています。

旨味を意識せずに食べ物を急いで飲み込む場合、残念ながら、私たちと私たちが摂取する植物や食べ物との間に、結びつきは生まれず、ラサの生成も不十分になってしまうのです。

これはラサが生産される最初のステップであり、ここが30日間の消化プロセスが始まります。

そして私たちは、アーユルヴェーダによればこの最初の一歩を、正しく始める必要があるのです……。

◎次回、後編に続きます。

 

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(トップ画像/消化プロセスは匂いをかぐところから始まる)