■自然サイクル(概日リズム)を使った健康法〈3〉~便利なことは体に悪い?~ インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol.137

インドでの生活というのは、普通の生活をするだけでもいちいち不便なので(都市部でも停電は当たり前、物はその時その時で手に入るときとそうでないときの差が激しい、電気やを呼んでもなかなか来ない、など、キリがありません)、

慣れるまでにはかなりのストレスがありましたが、

一方で、そんな不便さとはまた違う、自然のものをそのままの形で工夫して使うゆえの、いい意味での不便さもたくさんありました。

そしてそんな不便なインド生活の中だったからこそ、本来人間が生きていく上で必要なものというものは、思ったほどないことも、身をもって体験できた日々でした。

今回は、

「便利さって、本当にいいものなんだろうか?」

と思わず考えてしまうようなテーマでお伝えしたいと思います。

(夜は解毒と休息の時間)

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★2017年のノーベル賞受賞研究が、
概日リズムに基づく古代医療の有効性を実証!

2017年にアメリカ人の研究者3人が、「概日医学」という新しい分野に関する研究で、生理学/医学賞をノーベル賞をとったことにより、医学界に革命が起こるのではないかと注目されています。

これは、私たちの体の中に備わる内部時計(それぞれの器官には自然サイクルに合った時計が備わっていて、時間帯によって活発化したり休養したりする)が、いかに自然界のリズム、生物学的リズムに支配され、人間の生活に影響を与えるのかについての研究と発見です。

実はこの概日医学なるものは、アーユルヴェーダや中国の漢方といった古代医療では、すでに大昔から当たり前のように用いられてきたもので、その綿密な研究に基づいた、毎日、毎月、そして季節ごとのサイクルに合わせた食事やライフスタイルは、治療上の重要な一部分として組み込まれてきたものだったのです……。

つまり、最近になって、それが現代科学的にも実証され、賞までとった、ということですね。

昔から実践されてきたということであれば、それは至ってシンプルなもののはずで、実際、私たちがただ、本来の自然界のリズム、概日リズムに合ったライフスタイルで生き、また食事をとるようにするだけで、私たちの中にもともと備わっている体の英知をくまなく自然に引き出し、病気にもなりにくくなり、健康を維持できるようになるというものです。

 

★食べる「量」ではなく「時間」によって調節できる、肥満やメタボ

例えばアーユルヴェーダでは、消化力は正午に最も強くなり、解毒作用は夜に最も強くなる、という考え方をします。

ある研究によれば、早い時間に食べる人は遅い時間に食べる人よりも25%も多く体重を減らしたことが確認されているということです。

また別な研究では、朝に高カロリーのものを食べ、夕食の量を減らすと肥満やメタボの管理にとても有効で、

食事の量よりも、とる時間によって体重が増えやすくなったりまたは減りやすくなることがわかっています。

では、本来なら休息のための時間帯であり、解毒機能が高まる時間帯にあたる夜中に、食べるとどうなるのでしょうか……。

脳の時計は「食べちゃダメ」という信号を出しているにも関わらず、
無視して食べます。

(夜の間食は激太りのもと)

すると、例えば膵臓は、本来なら休養の時間の夜に、体の中に入ってきた食べ物を処理するためにインスリンを放出し始めます。

……が、脳はそれに協力してくれません。

てんでバラバラ状態になります。

そんな状態が習慣化してしまうと、臓器の内部時計は夜に食べるようリセットし始めてしまう可能性もあり、このアンバランスは、精神面そして身体面へも影響を与えることになってしまうのです。

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便利な現代社会では、電気は24時間使え、夜遅く起きていられます。
また、深夜発の飛行機に乗って移動し、時差ボケを体験したり、昼夜シフト制の職種もたくさんあります。

こうして本来の24時間の明暗サイクルや、私たちの体に備わる体内時計を、知らず知らずのうちに完全無視した生活ができてしまうわけなのですが、

それを続けることの副作用も十分に考慮しておきたいものです……。

 

《村上アニーシャ さんの記事一覧はこちら》
https://www.el-aura.com/writer/%E6%9D%91%E4%B8%8A%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3/?c=73188

 

(トップ画像/真夜中のフライトはヴァータ悪化につながる)