芸術の秋こそ、魂が揺さぶられるような心に響くスピリチュアル・ムービーを

映画というのは、どんなものでもどことなくスピリチュアルに通じるものがあるのではないでしょうか。主人公の生き方や考え方、死との対面、挫折、愛などなど。なかでも、この秋公開される2作品は、スピリチュアルをまさに直球ストレートでテーマにしたもの。

“見えないものを視る力”を突然備えた主人公が、自分に課せられた運命と対し、どう決断し行動していくのか。生きるヒントやスピリチュアルな世界の真実にも触れた両作品。映画でスピリチュアルな気づきを体験してみてはいかがですか?

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アイズ 

http://www.eyes-movie.jp/

2つの“開眼”を受け入れて、立ち向かう1人の女性のスピリチュアルな生き方を描く 監督/ダヴィド・モロー&サヴィエ・バリュ 脚本:セバスチャン・グティエレス 出演/ジェシカ・アルパ、アレッサンドロ・二ヴォラほか 公開:11月1日(土)より、渋谷東急ほかにて全国ロードショー 提供・配給/ムービーアイ

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この映画、正直怖い。

ハリウッドならではのスリル感のある映像だけのせいじゃない。主人公に課せられるチャレンジがあまりにも大きいから。「アイズ」は、幼い頃の事故で視力が回復するにつれ、十年ぶりに光を知るシドニー。しかし、彼女が手にしたのは単なる視力ではなく、実際には見ることのできないものまで視えてしまう特別な目だった。

カフェで襲いかかってくる中年女性、マンションで成績表を探し回る少年、死にゆく人に付き添う黒い影、深夜1時6分になると決まって広がる見たこともない部屋の風景……。繰り返し眼前に現れる現象から逃れるため、部屋に閉じこもり、カーテンを閉め、明りを壊し、目にタオルを巻きつけて闇の世界へ戻りたいと切願し、一度は心まで閉ざしてしまうシドニー。しかし、この角膜の持ち主にキーワードがあるのでは? と考え始めたところから、角膜に宿った魂が自分に伝えようとしているメッセージは何なのか、自分に課せられた使命と向き合い始める―。

スピリチュアルな能力が突如“開眼”することで、混乱する人は多いと聞く。シドニーの場合、視力そのものが新たに備わった機能にも関わらず、いわゆる霊の世界まで視えるようになってしまったのだから、その混乱ととまどいは計り知れない。でもきっと、光を得たことで生まれる新たな目的や使命を課せられていることは、シドニーだけに起きた特別なことではない。ごくごく小さなことかもしれないけれど私たちの身の回りにも起こっていることなんだろうと思った。もし、自分がこんな大役を任せたら、とてもシドニーのように全うする自身はないけれど……。劇中、病気によって死にゆく少女が生前と死の直前に2度シドニーに、「この世界はすばらしいわ」と無邪気な笑顔で語るシーンも印象的。彼女はきっと、今いる世界、そしてこれから旅立とうとする光の世界の両方にその言葉を投げかけたのではないかと、映画を視てしばらくしてからふと感じた。

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ボディ・ジャック http://www.bodyjack.jp/ 肉体を通してつながる、2つの魂を通じて現代社会の闇と人間の本質に触れる 監督/倉谷宣緒 脚本/藤岡美穂 出演/高橋和也、柴田光太郎、安藤希 公開/10月25日(土)より、キネカ大森ほか順次ロードショー 配給・宣伝/太奏株式会社

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「何でこんなことが…」と、思わず目を奪いたくなるような残酷な事件ばかりが起こる現代。そんな現代人の心の闇に通じるのは、時代を超えて今に潜み続ける悪の魂なのかもしれない。

「ボディ・ジャック」という映画のタイトルは、ずばりそのまま「憑依」という意味。

主人公のテツは大学時代に学生運動を経験し、現在は広告代理店に勤務するしがない中年サラリーマン。

酒好きで午前様は日常茶飯事。1人娘と妻もほとほとあきれている。そんなテツに、ある日突然変化が訪れる。酔っ払いや独り言をブツブツ言いながら歩く、いわゆる“変な人”の顔に青白い幽霊のような顔がにじんで見えるようになったのだ。そして聞こえてくる、自分に語りかけてくるある声。幻聴は次第に回数を増し、テツは自分が、100年以上も昔に死んだ1人の男の霊に憑依されてることを理解する。

彼はある魂を探していた。

そのテツは自分をボディ・ジャックした男とともに、その狂気の霊へと立ち向かう決心を固めた。

-嫉妬や情欲、怒りや憎しみ、些細なことで怒ったり怨んだりする病んだ心の隙間に、悪霊は憑依する。そして、この悪霊によって憑依された肉体が現在の恐ろしい事件の引き金を引いているのだ―。 この映画に込められたこんなメッセージを、「大胆な仮説!」と言うか、「これは一つの真実だ」と言うかはその人次第。ただ、悪霊とまではいかなくとも、心にぼっと浮かんだネガティブな想いが、ネガティブな行動を引き出す要因の一つになるということは確かだ。物語の根底には“愛”も散りばめられている。家族の愛、恋人の愛、そして同志の愛。幕末、学生運動、現代と3つの時代を交差しながら、今も昔も変わらぬ人の本質と、確かに存在するスピリチュアルな世界を描くこの作品。

よくも悪くも人の想いとはこれほど強いものなのかと、感心する。

 

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