物凄いパワーがある椅子の絵画を見ながら、様々な話をする時間はとても幸福な時間でした。
私は気になっていたことを彼に聞くことにしました。
「あの、イギリスのイングリッシュガーデンのデザイナーの仕事ってどうやってできたんですか？ 最初から英語が話せたんですか？ コネがあったんですか？ 何でイギリスに？」
気になっていたことを次々に聞いていきました。
彼は笑いながら、
「ユリさん、落ち着いて下さい。ちゃんと順番に話しますから。」
と言ってくれました。
「僕は、日本でも空間デザイン的な仕事をしていたんですが、ある日妻にこう言われたんです。
ハーブの勉強がイギリスでしたいから、イギリスに行こうと！ そう妻に言われて、今の築きあげてきた仕事を全て失うことになる。あまりにも現実的ではなく、いったい何を考えているんだろうと妻と口論になりました。でも彼女は全く譲らなくて、毎回こう言うんです。なんとかなるでしょう！ イギリスから呼ばれているから。妻のその軽さに毎日そう言われるたびに僕もだんだん、なんとかなるか……と不思議なことに思えてきたんです。」
彼はそう話すと、子どものように豪快に笑ってくれました。
私はその笑顔に惹かれて、
「なんとかなる!!! すごい魔法ですね！」と答えました。
●夢が叶う秘訣は「なんとかなる」の魔法
「そうなんですよ。それから僕たちは、何のアテもなくイギリスに向かいました。世間でいうならば本当に無謀なことですよね？？でもね、本当に何とかなったんです。気が付けば僕は長年してみたかったイングリッシュガーデンのデザイナーになれて、アートディレクションをヨーロッパで出来るようになりました。そして妻もハーブを勉強し、今はその仕事をしたり、僕も妻も本の出版までしたりしました。そして１５年間、イギリスで暮らし、今は日本の素晴らしさに気が付き、能登半島に家を買ってそこでもイングリッシュガーデンを楽しんでいます。能登半島もとても素晴らしい場所なので、良かったら今度遊びに来て下さい。妻と快く出迎えますよ。そして今回、福岡に来ているのは、彼女の絵画展のアートディレクションを依頼されたからなんです。彼女と出逢ったのも不思議な出逢いで、僕も彼女の椅子の絵画に魅了された一人なんです。」
そう話す彼を見ながら、「この世界は何て不思議な世界なのだろう。」とまた私は、その言葉一つ一つを解釈しながら感じていました。
アーティストの彼女もこう答えました。
「この世界には不思議な力がありますよね。私もまさか絵画artistになれるなんて思っていなかったし、今回の展示会でも全ての絵画が売れたんですよ。そして不思議なことに、いつも椅子の絵が描きたくてたまらなくなるし、だからずっと私は椅子に恋をしているの。」
彼らは笑いながら、「本当に出逢いも不思議だし、だからこそ人生は面白いですよね。」と話していました。
