嘘をついていい日といえば、「4月1日」のエイプリルフール(April Fool)が世界的に有名です。
こちらの起源は定かではなく、フランスで新暦が採用されたことに由来というものや、ノアの箱舟に由来するというもの、インドの修行が由来というものまで、世界各地に起源となるものがあります。
それだけに、世界的なイベントとなっており、今年のエイプリルフールにも、さまざまな嘘が飛び交いました。
嘘というものは基本的に良い物ではありません。
それだけに、たった1日(一説によると嘘をついていいのは午前中だけということですので、その場合は半日)という短い期間とはいえ、嘘をついてもOKというのは、人々の心を魅了するのでしょう。
私たちが日常生活をしていく上で、意識しているかどうかはともかくとして、まったく嘘をつかずに生きているということはほとんどいないはずです。なんらかの事情で、またついついその場の流れで……、など嘘をつく機会は沢山あるでしょう。
エイプリルフールのような特別な日と違って、普段ついてしまった嘘は、なかなか取り消すこともできずに、いつの間にかずっと心の中にたまってしまいがち……。
そんな嘘によって得た罪悪感、すなわち穢れをどうにかしたいと思うのは、昔の人にとっても同じだったようです。
その様な悩みを解消するための手法もいくつか生み出されました。
中でも、全国各地で行われており、もっとも有名といえるのが、
「岩津天神」など全国各地の天神社で行われている
「鷽替え神事(うそかえしんじ)」。
天神社とは、菅原道真をご祭神とする神社なのですが、「鷽(うそ)」という鳥が道真を蜂の大群から守った、また、天神社を建てる際に、材木を食い散らかしていた虫を鷽が食べたなどという逸話があることから、この鳥は天神社と関係が深いとされています。
この「鷽」が「嘘」に通じるとして、前の年にあった厄災を嘘として、吉に変換するという願いをかけたり、前年についた嘘を鷽に託したりして、神前で清めて貰うというような神事が生まれたわけです。
この神事は一般的には1月に行われるものですが、場所によっては春に行うところもあるということで、新しい年の前に心機一転するという意味では、素晴らしいお祭りといえるでしょう。
また、天神社のように全国展開はしていませんが、商売上での嘘に特化したお祭りが行われる神社もあります。
京都にある「冠者殿社(かんじゃどのしゃ)」は
非常に小さい神社なのですが、商人や花街の人々から信仰を集めています。
出典:廻游日記 ~京の神祠~
商売人、とくに花街の人は嘘をつく機会が多かったことから、毎年10月20日に
「誓文払い(せいもんばらい)」というお祭りをしていました。
このときには、商売上についた嘘を神様に祓い浄めてもらい、さらに年に一度の大安売りをして、行動でお客様に感謝を表したのです。
出典:幸せへの一歩 サン・ベルディエール
商人と違って遊女などの場合は、同じく嘘を清めるのですが、こちらは一切無言で行う
「無言詣(むごんもうで)」と呼ばれるもので、
途中で知り合いにあっても一言も口をきいてはならず、口をきいたら願いは叶わないといわれています。
嘘をつくのは決していいことではありませんが、それをいつまでも心に抱いているのではなく神様に清めて貰い、新しく前を向くためのエネルギーにするというのは、人類に伝わる叡智のひとつだと思います。
なにか嘘をついてしまったという負い目のある方は、4月に行われる鷽替え神事か、10月20日の誓文払いに参加して、ネガティブなものを浄化してもらうというのはいかがでしょう?
今回紹介したスポット
・岩津天神
愛知県岡崎市岩津町字東山53番地
・冠者殿社
京都府京都市四条通寺町東入南側