中村うさぎさんコラム「どうせ一度の人生・・・なのか?」 part.17 怖いけど興味深い……HONKOWA作家、伊藤三巳華さんの幽霊談②

スピ散歩でお馴染みの漫画家の伊藤三巳華さんが語る四十九日の話から、心肺停止した時のことを思い出す中村うさぎさん……そこから考える『霊』の状態とは?

霊を視ることができる伊藤三巳華さんの体験談は、怖いけど興味深い。

「友人と一緒に霊を呼び出した時に、まだ亡くなって四十九日経ってない人の霊を呼び出しちゃったんですよ。そしたら、その人がすごい錯乱状態で。まだ自分が死んだことわかってないみたいな」
「ほほう」
「で、私、思ったんです。四十九日っていうのは、向こうで何かやってる時期なんだと」
「何かって、何ですか?」
「うーん、手続き的なこと? その人はクリスマスの日に酔っ払って線路に落ちて亡くなったんですけど、たぶんまだ死を受け容れていないんですね。だから、本人が死を受け容れるための手続きを四十九日の間にやってるんだろうなって」

私は四十九日とかそういう法要に疎いのでよくわからなかったが、後でネットで調べてみたら、確かに四十九日というのは来世の行き先が決まる最も重要な日であるらしい。
来世の行き先が決まっていない霊は、まだまだ心穏やかに自分の死を受け容れられる精神状態ではないのかもしれない。
なるほど、人は自分の死を受け容れるまで7週間もかかっちゃうのか。
思ってたより往生際が悪いんだな。
個人差あるかもしれないけど。

中村うさぎさん伊藤三巳華さん対談2回目

 

私は自分が心肺停止した時のことを思い出していた。

いきなり世界がブラックアウトして、お迎えも来なけりゃ三途の川も見えなかった。
テレビのスイッチを切るように、プツンと暗転してそれっきりだ。
もちろん自分が死んだという自覚もないし、まだ生きているという感覚もない。
何の感情も認識もなく、自分が消えてしまったのだ。

どれくらい心肺停止していたのか知らないが、そこから意識を取り戻すまでは3日ほどかかった。
その3日の間も特に何も見なかったし、普通に目を醒ましたら夫に「あなた、一度死んじゃったのよ」と言われて「へぇ、そうなんだ」という感じだった。
以来、私は死後の世界というものに懐疑的である。
自分が死んだ後に霊となってさまよったりする感覚もピンと来ない。
それとも、記憶にないだけで、私はあの3日間、霊となってさまよってたんだろうか。
だとしても、たぶん、錯乱はしてないと思うな。
なんかめちゃくちゃ安らかに死んでたからね(笑)。
あの感じなら、苦もなく死を受け容れてたような気がする。

中村うさぎさん

 

もしかすると、生前の「死生観」によって、死後の霊の状態は変わってくるのかもしれない。

三巳華さんが呼び出した霊は、この世に未練があったのだろう。
私たちは自分がいつか死ぬことを知っているのに、どうして悔いを残すような生き方をしてしまうのだろう。
明日なんて来ないかもしれないのに、どうして未来を夢見たりしてしまうんだろう。
生に執着せずに生きることはできないんだろうか。

死してなおこの世をさまよう霊の話を聞くと、いつも不思議に思ってしまう。
だから私は、霊の話を聞くのが好きなのだ。
そこに何か人間の本質が隠されているような気がして。

そして三巳華さんの興味深い話は次回も続くのです。

 

伊藤三巳華さん 情報
“クリスマスの霊”の話が収録されいてる書籍『濡れそぼつ黒髪』
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=14084

『スピ☆散歩 ぶらりパワスポ霊感旅』①~④
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=14083

 

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