一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.83「彼は秘密の女ともだち」

考えるに、女装趣味の男友だちがいたらどうだろう?・・・。きっとすごく楽しいと思う。

病で亡くなった親友の夫が女装!?
オゾンが描く新しい愛の形

二十代の頃勤めていた会社にゲイの男の子がいて、彼は芸術方面に詳しくて感情表現がオーバーで、話してるとすごく楽しかった。
いつも笑わせてもらっていた。
数年前に、教えている男子生徒と雑談していると「女の子が履くショートパンツ履いて心斎橋筋歩きたい」と言うので「ゲイだっけ?」と聞くと「好きなのは女の子。でも、可愛い女の子の服着たい。女装したい」と言うではないか。
「ふ~ん……似合うやろな」と答えたが、その時は「よう分からん?」という感じだった。
しかし、女装趣味の男性というのは意外に多いようだ。と、ここまで書いて思い出した。

最近また大麻で捕まった作家の嶽本のばら。
彼とは、私が情報誌編集部にいた頃に知り合ったのだが、彼は当時女装していた。
ずっとゲイだと思っていたが違った。
しかし、彼も芸術方面に造詣が深く、話してると面白かった。

彼は秘密の~サブ4-1

 

考えるに、女装趣味の男友だちがいたらどうだろう?……。きっとすごく楽しいと思う。
それは、ほぼ、私にとってはゲイの男友だちといるのと同じ感覚だ。
しかし、女の格好で迫られたらやはり白けてしまうと思うのだが……。

さて長々と前文を書いてしまったが、本作は、親友の夫が親友の死後女装するようになり、主人公は当初驚くが、だんだん女装した親友の夫と過ごす時間が楽しくなる。
それは親友の夫も同様で、いつしかふたりは互いに求め合うのだが……というものなのだ。
いや、一体この関係はどうなるんだろう? と先が読めずに見入ってしまった。
そして、私がこの主人公のクレールだったらどうするかしらん? と考えてしまったのだ。
そこであれこれ前述したことになるのだが。

 

新しい女友だちは大柄な美女
一緒のお買い物は妙に楽しいんだわ!

クレールがダヴィッド(女装の時はヴィルジニア)と一緒にショッピングに行くシーンが楽しそうで私は一番好きだ。
大柄でスタイルが良くて美人の新しい女友だちとのお買い物。
彼女はいろいろアドバイスしてくれるし、自分も教えることがいろいろある。
だって彼女は男なのだから。
多少倒錯した関係の方が面白い。
ここでのクレールもヴィルジニアも、観客である私もニヤニヤ状態である。

しかし、本作の監督はゲイであることをカミングアウトしているフランソワ・オゾン。
彼の映画は二人がしっかり絡みあうシーンもあって(男同士も)とっても生臭いんだけど、そこをおざなりにはしない。
結局女装した男が女を抱くってやっぱ私としては萌えないんだけど、ある意味、笑えるのである。

彼は秘密の~サブ2-2 

女装した男の化粧がはがれたり、ハイヒールでこけそうになったりするのって、なんとも悲哀が漂う。
なのに、なぜ男は女装するのか?

きっと自由になれるんだろうな。
たぶん男装も。
特に女装は自由になれる喜びが大きいように思う。
男の人はそれだけ男でいることが息苦しいのかもしれない。

 

愛があればすべて乗り越えられる
自分の心地良いことを貫け!

さて、本作は驚きのラストを迎えるが、こういうこともあるんだろう。
劇中でクレールとヴィルジニアがナイトクラブに行き、歌に感動するシーンがあるが、そこでヴィルジニアが「愛があればすべて乗り越えられるわ」と言うのだが、まさに本作はすべて乗り越えて幸せを掴むカップルの話であるのだ。

世間体なんてどうでもいい。
自分がそうするのが心地良いなら、貫くべきなのだ。

そこに「愛」があれば大丈夫。

彼は秘密の~サブ3-1

本作の一番の見所はロマン・デュリス演じるヴィルジニアだろう。
髭濃いし、顔の凹凸激しいし、鱒口やし、どんな女になるんだよ、と思ってたら、すっげーっ美人なんである!!
なんともいえない鷹揚な雰囲気があって優しそうでキュート!
腰も細いし、足も細くてきっれーっ!
そして何より女装を楽しんでるのがヒシヒシ伝わってくるのだ(なんと、子供の頃に女装する喜びを知ったそう)。
男性が女装するとたまにものすごい美女になったりするから怖いのだ(「想いのこし」の岡田将生くんとか)。
ロマンも大変身だ。
彼の美女ぶりを堪能して欲しい一作でもある。

彼は秘密の~サブ1-2

 

■監督・脚本 フランソワ・オゾン
■出演 アナイス・ドゥムースティエ ロマン・デュリス ラファエル・ペルソナ イジルド・ル・ベスコ オーロール・クレマン
■107分

■8月15日(土)~関西ロードショー

 

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