【あの世でもお金は必要?】
この世どころか、あの世でもお金の力は強く、地獄の裁きさえお金があれば、なんとかなるというところから、「何事も金さえあればどうにでもなる」という意味を持つことわざが「地獄の沙汰も金次第」。あんまりいい言葉ではありませんが、「スピリチュアルな思想」が元になっているのをご存じでしょうか?
中国には「紙銭」という風習があります。日本ではもうじきお盆ですが、中国では「清明節」に先祖のお墓参りをします。そのときに、先祖供養のために「大量に燃やされる」のがこの紙銭なのです。清明節になると、街中には紙が燃える匂いが充満し、場所によっては燃やした火が木に燃え移って「山火事になったりする」こともあるのだそうです。
【この世とあの世は繋がっている】
このときに燃やされる紙銭は、「冥銭」と呼ばれており、「紙幣をまねたもの」です。現行の紙幣のデザインをベースに、道教の神様の名前や、額面などが印刷されており、きちんと「閻魔大王の印」が入っているという、なかなか凝った作りとなっています。今年の清明節には、祖父が孫にプレゼントした日本円で「約10万円相当の紙幣を、幼児が冥銭と間違って燃やしてしまった」というニュースが報道されたほど、通常の紙幣と似通ったものも存在しているようです。
なぜ、そんなにリアルなお金を燃やす必要があるのか? それは、中国のあの世に関する思想に原因があります。「この世とあの世を明確に区別する日本の思想」とは違って、中国では「あの世はこの世の続き」というような考え方をしています。死者はあの世にわたって、また新しい生活を送っているので、そこで「生活するために必要となるお金を送る方法」として、冥銭を焼いているわけです。ちなみに、お葬式などではお金だけでなく、家具や車などを形取ったものを燃やすことがあるということです。
【閻魔様もお金には弱い】
さらに、前述のことわざの由来ともなったように、死後裁きにあって「次に転生するためには、賄賂が必須」という思想もあります。「閻魔大王に賄賂を渡す」ことができれば、生前に「悪いことをしていた人でも、再び人間として生まれ変わる」ことができ、反対に「いいことをしていたとしても、賄賂が足りないと動物に転生させられてしまう」のだそうです。
「権力者になにかを頼むときには賄賂が必須」というのは、中国では現在でも続いている悪習ですが、死後の世界にまでその思想は行き渡っているということなのでしょう。こうした神様に捧げるお金は、リアルな紙幣を模した冥銭ではなく、「金紙」と呼ばれる、おめでたい金や赤を多用した、ちょっとお札のようにみえるものを使います。これらは、お祭りの時などに燃やして、それによって神様に願いを聞いて貰うわけです。
【政府は紙銭を禁止しようとしている】
日本では、あの世を特別なものと考えていたために、あの世に向かう途中にある冥土の川の渡し賃としての「六文銭」ぐらいしか死者にもたすことはなかったわけですので、中国のこの発想はあまりにも「生々しく感じてしまう」かもしれません。
中国政府はこういった風習を迷信として、また火を燃やすことで火事や事故がおこることから、数年前から禁止にしようとしているようです。そういった流れを受けて、道教の寺院ともいえる「道観」では「紙銭を焚く場所をなくしている」ようですが、民間の風習としては今もなお続けられていることから、それだけ人々にとっては大切なものといえるでしょう。
スピリチュアルな世界では、「お金はエネルギー」であるという話がありますが、ある意味では、紙銭というのは、「お金を燃やすことでエネルギーへと変えて、ご先祖様や神様に奉納する」という、シンプルながら効果的な儀式なのかもしれません。
Money opens all doors.
How to deliver the money to the dead.