長寿と健康の秘訣は地中海食!アンチエイジング専門医・川田浩志先生インタビューPART.6

魚、海藻、肉に含まれる栄養素と放射能・有害物質の問題は?

――川田先生は、日本人はもっと魚を食べたほうが良いとお考えですが、最近では、放射能や有害物質などの問題もあります。そうした不安材料と魚本来が持つ栄養素を比較した場合、どちらを取るほうがよりメリットが高いとお考えですか。

川田先生:
「よく講演でも聞かれるのですが、悩ましい問題ですね。でも、市場に出ている魚であれば、放射能はそれほど恐れずに魚を食べたほうがメリットは高いと思います。事故を起こした原発のすぐ近くの海でない限り、ある程度の規格や基準といったものを満たしていれば、そんなに恐れることはないと思います。

有害物質ですが、特に気をつけたいのはメチル水銀です。マグロや金目鯛は、非常に美味しくて毎日でも食べたいのですが、含有量が高いため、摂取頻度には注意が必要です。とくに妊婦さんが、毎日マグロばかりを食べているというのは、やはり危険です。これに関しては、詳しい情報が厚生労働省のホームページに出ていますので、関心のある方は一度チェックしてみたらよいと思います」
厚生労働省「魚介類に含まれる水銀について」

 

――海藻類はいかがでしょうか。

川田先生:
「ヒジキのヒ素濃度はなぜか高いです。それはどこの地域に行っても同じで、その原因は分かっていません。ただ、ヒジキは普通、煮て、煮汁は捨てて食べますよね。この場合には、よっぽど食べ過ぎないかぎり大きな問題はないと思います。注意したほうがいいのは、生でヒジキを食べる場合です。ヒ素は発がんの原因になることがわかっていますので。

ヒ素と言えば、飲料水のなかにも含まれていることがあって、その含有量には取水地による地域差があります。外国産のミネラルウォーターのなかに、ヒ素の含有量が比較的高めのものがあったという報告もありましたので、同じ銘柄のものばかりを飲むということは避けたほうがよいかもしれません。日本の水道水は、ミネラルウォーターよりもヒ素含有量の基準が厳しいですので、それほど心配をする必要はないと思います。

私は、日本の水道水は、品質的にも、案外捨てたもんじゃないと思っています。カルキは煮沸したりすれば良いわけですし、トリハロメタンなどが気になるようでしたら、浄水器をつければ良いと思います」

――お肉、特にレバーはどうでしょう。

川田先生:
「メリットとしては、鉄分が豊富なことですよね。デメリットとしては、動物性脂肪が多いことです。とくにフォアグラは、脂肪が豊富な、いわば「脂肪肝」ですので、食べ過ぎは控えたほうがよいと思います。でもまあ、高級食材ですので、食べ過ぎる方も少ないとは思いますが……(笑)。私の場合、鉄過剰や脂肪肝になりたくなくて、いろいろなことをやっているのに、わざわざフォアグラを食べることはないのではないかと思って、最近ではあまり食べなくなりました。

ですが、特に肥満のない若い女性にとっては、鉄分の補給になるのでフォアグラもいいと思いますよ。もっとも、今はヘム鉄とか、鉄分を補給するのによい健康食品が出てきましたので、わざわざレバーやフォアグラを無理して食べなくてもいいのではないかと思っています。レバーには、そのほかにもいろんな栄養素が入っているから食べたほうがよいとも言いますけれど、それについては、そこまではっきりとしたエビデンスはないと思いますので、無理して食べる必要はないと思いますよ」

~PART.7につづく~

 

<プロフィール>

川田浩志先生
東海大学医学部血液内科准教授。医学博士。著書に『見た目が若いと長生きする』(筑摩書房)他
ブログ:http://ameblo.jp/antiagingworld/

Photo: Miho Urushido