長寿と健康の秘訣は地中海食!アンチエイジング専門医・川田浩志先生インタビューPART.7

コーヒーは健康に悪くない!?

川田先生:
「コーヒーはよく身体に悪いといわれますが、最近、『The New England Journal of Medicine』という、世界で最も臨床的に権威のある雑誌に、コーヒーはむしろある程度飲んでいたほうが病気は減るという結果が掲載されました。

コーヒーにはいろいろな成分が含まれています。苦み成分ともなっているファイトケミカルのクロロゲン酸などですね。そういったクロロゲン酸をはじめとするファイトケミカルに、どうやら病気を防ぐ効果があるということがわかってきたのです。具体的には、心臓病や脳卒中、それに糖尿病や呼吸器疾患などです。必ずしもカフェインが含まれていなくてもいいのです。ですので、なんとなくカフェインのイメージが悪いのであれば、ノンカフェインのコーヒーを飲むようにすればいいと思います。

がんについては、この調査研究ではコーヒーを飲む人と飲まない人の間ではあまり差が出ませんでした。がんといっても、いろいろな種類のがんがありますからね。ですが、喉のがんなどにしぼると、コーヒーを飲んでいる人のほうが、がんになる率が少ないという報告があります。コーヒーが喉を伝っていく時に、何らかの良い作用をしてくれているのではないかと私は考えています。

チョコレートもカカオポリフェノールの作用で、心筋梗塞のリスクが減るようですし、従来は身体に悪いのではないかといわれていたものが、実は健康に良い、そういうことも徐々に明らかになってきています」

日本食を“地中海風”に近づけるために

川田先生:
「ここまで食事のことを中心に話してきましたけれど、食事に関しては、日本食も、おそらくは身体に良いと思うのですよ。ただ、世界中の科学者を納得させるだけの科学的エビデンスが、まだいまいちなんです。私はいつも、人に勧める時は必ず科学的根拠に基づいてお話をしていますので……。

日本人は、とにかく塩分の摂取量が多めですよね。それと、炭水化物と脂肪。逆にタンパク質が足りていないようです。東京都の調査でも、短命の一番の原因は低アルブミン血症、低タンパクでした。

65歳まではメタボリックシンドロームを防ぐ。それはとても大切なことです。でも65歳以上になっても、まだメタボばかりに気をとられていると、食も次第に細くなってきて、タンパク質が不足してしまう可能性があるのです。日本人は長生きですけれども、どんどん細くなって、やがて寝たきりになってしまっては長生きした甲斐がないですよね。もっとタンパク質……とくに魚や、豆腐などの大豆類を中心にタンパク質をもっとしっかりと摂って、そのうえで筋肉量を維持するために、さらに筋トレもしたほうがいいと思います。

塩分を減らし、野菜と果物の摂取量を増やす。そして適度に魚や豆、ときどきは肉も食べながら、オリーブオイルを全粒粉のパンにつけて食べてみる。そうした食生活が私は一番いいように思うのですね。それほど難しい話ではありませんので、ぜひ毎日の食卓に取り入れてみて下さい」

~PART.8につづく~

 

<プロフィール>

川田浩志先生
東海大学医学部血液内科准教授。医学博士。著書に『見た目が若いと長生きする』(筑摩書房)他
ブログ:http://ameblo.jp/antiagingworld/

Photo: Miho Urushido