シェフ佐藤の食と自然治癒力PART.43~「増える味覚障害」

現代の食事がもたらした味覚障害

普段から化学調味料や食品添加物を摂り続けている人は、手作りの本物の味が理解できなくなってしまっている傾向にあります。自然の味を理解できないのは、味覚が完全に狂っているからで、これは「味覚障害」といわれ、亜鉛の欠乏による一種の病です。
味覚障害には、味の感じ方が鈍くなる「味覚減退」や味がまったく分からない「味覚消失」、口の中に苦味や渋みを感じる「自発性異常味覚」など様々な症状があるそうで、日本の味覚障害患者は、20年前に15万人だったのが、現在は30万人を超えているとのデータが出ています。
この味覚障害は、以前は高齢者が薬の副作用によるケースが多かったのですが、近年は若い世代にも増えています。ジャンクフードやコンビニ弁当などの偏った食生活によって化学調味料、食品添加物、糖分や塩分、脂肪が過剰に摂り込まれ、身体に必要な亜鉛が摂取できなくなっているのが原因の一つに挙げられています。
食べ物の味は、舌の表面にある味蕾(みらい)と呼ばれる味細胞が判断しますが、味細胞は新陳代謝が激しく、約1ヶ月で生まれ変わるといわれています。この味細胞の再生に欠かせないのが亜鉛で、亜鉛が不足すると新陳代謝が妨げられて、味細胞が古くなって味を感じることができなくなるのです。
一度味覚が狂ってしまうと、なかなか元には戻せないものです。味覚障害は早期の成人病、若年痴呆症をも招きます。近年では、誤った食生活によって、昔は成人病といわれていた病気にかかる小学生が増えています。また、今や20代でボケる人もいるとのことです。これでは医師不足だけでなく、介護に関する問題も増え続けていくことでしょう。
化学調味料や食品添加物には亜鉛の吸収を妨げたり、亜鉛を体外に排出させる働きがあるので、極力避けたいものです。味覚が分からない食事ほどつまらないものはないと思います。
安全な手作りの味を次の世代に伝えていくことの大切さ。もっと多くの人に認識してほしいと願います。

 

【ナラタケ】

ナラタケは、秋に採れる代表的な食用キノコで、青森南部地方ではカックイ、津軽地方ではサモダシと呼ばれています。煮るとだしがよく出るので、味噌汁やお吸い物、鍋料理、炊き込みご飯、おろし和えなどの素材を生かした調理法が適しています。また、昆布やふのりなど海藻のだしと合わせることで、うま味の相乗効果が増します。
自然の味や手作りの味を理解できるか否は、子供の頃の食生活や生活環境が影響すると私は考えます。ひと昔前には聞いたこともなかった病気が増え続けている現代、自然治癒力や健康を考えた食育が広まっていくことを切に望みます。