世界最後の桃源郷、しあわせの国ブータンのイメージとは遠くなってしまうかもしれませんが、ブータンにはブータン軍が存在します。これは内陸国のブータンですので陸軍のみ、志願制です。およそ一万人、内訳はブータン王国軍7000人、国王親衛隊2000人、警察官1000人で構成されています。空に関する防衛はインド軍に一任されています。
ブータンの首都に行くとすぐに目につくのはインド関係の建物です。ブータン・インドフレンドシップ病院、「インド軍~」のような建物が建っています。軍事演習もインド軍と一緒に行うことが多いという話を何度もホームステイ先のお父さん(陸軍所属)から聞きました。実際、インドでの軍事演習にも参加するそうです。逆にブータンにはインドの軍事顧問団と数百人の陸軍部隊が駐留しています。インド・ブータン友好条約があり、それによりインド側がブータンに対する兵器の供給、軍事訓練、防空の責務を負っています。国防費はGDPの約1%です。
人類史上、戦争が悲しいかな、おろかかな、戦争が絶えることはありません。ブータンも19世紀末まではたびたび内戦がありました。その中で、力をつけ、戦いに勝った豪族が現在の王家の先祖であり、1907年に王制をスタートさせました。
ブータンでも王制の間に一度内戦がありました。
それは2003年、インド系ゲリラ集団との戦いです。インド軍との連携の下、第四代国王がブータン軍の大元帥となって前線で陣頭指揮を執りました。この内戦は2日間続きました。
この時、ホームステイ先のお父さんは第四代国王様と内戦に参加したそうです。その時の話を聞くと、「数十名のゲリラと数名のブータン軍の死者を出した、ブータン史上もっとも悲しい出来事」といつも口にしていました。また、お父さんの帰りを待つお母さんは、「戦争に行くのが決まったときは、まさかブータンでととても驚いたとともに、それからは心の中に大きな大きな石を毎日抱えているような暮らしだった。人生で一番苦しかった」と。
ホームステイ先の家のリビングには大きな紙に英語で、「Welcome back Daddy!」(お父さんお帰りなさい!)と内戦から父親が無事帰った喜びのメッセージが今でも貼ってあります。
今の平和なブータンを見ていると戦争なんて起こるはずもないように思います。ブータンのみならず世界がしあわせに包まれますことを願ってやみません。
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