統合医療のカリスマ! 女子医大附属青山自然療法研究所クリニック所長 川嶋朗先生インタビュー「本当のホリスティック医療とは?」 ~前編~

TRINITY vol.44で、東洋医学の見地から見た感情と内臓のつながり、そして五臓や感情に対してのホリスティックケアについてお話をしてくださった、東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長の川嶋朗先生。

「QOD(クオリティ・オブ・デス)=死に方」を考えることは、「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)=生き方」を考えることになると仰る川嶋先生。お話には、本当の意味での統合医療、患者の在り方、医者の在り方など、皆さんにぜひお伝えしたいお話が詰まっています。本誌には掲載しきれなかったお話をご紹介させていただきます。

―医療の現状「医者が失業するような世の中になっていかないといけない」―

編集部:川嶋先生は、2003年に「自然医療研究所クリニック」の所長となり、それ以前から東洋医学などさまざまな代替医療に携わられています。ここ数年で、ホリスティック医療についての認知度も大きく変わってきたと思います。先生は西洋医学の医師でもあるわけですが、医療の現状をどう考えていらっしゃいますか?

川嶋先生:今、医療費は2010年で37.5兆円かかっています。税収が41兆円。つまり、ほぼ税収と医療費は一緒で、この国はお給料の大半をお医者さんに使っていることになります。そして、それ以外の生活費とかはすべて借金で賄っている。たとえ、増税をしたとしても増えるのは13兆円程度です。何よりも、日本は医療費を減らすことが急務。だからといって、質を落としてしまっては世界に誇る日本の医療が落ちてしまう。であれば、“医者に行かないこと”を選択できるような世の中の仕組みをつくっていく。それが私の理想です。皆さんは病気になってはいけないのです。そのためにまず、日本の国民の医療に頼り過ぎる傾向を正さなくてはいけません。日本の患者さんというのは、「医者に行けば何とかなる」と思っている方が非常に多いのですね。
代替医療というのは日本では自由診療ですよね。そのなかで、もちろん真面目にやってらっしゃる先生もたくさんいらっしゃるけれど、ごく一部ではそれをお金稼ぎの目的として扱っている医者もいます。ですから、「先生にお任せします」と、自由診療で言ったら大変ですよ。どんな高額な医療費を請求されるかわかりません。私のクリニックに来る患者さんでもそういう方はいます。その場合は、まず「では、あなたの症状を100%とってあげるサプリを出します。ただし1カ月1000万円かかります。やりますか?」(もちろん冗談ですが)と言うことがあります。月1000万円なら、すぐに「無理です」と言えるかもしれないけれど、これがもし月100万で「絶対に治します」と言われたら、出してしまう人がいるかもしれません。絶対なんてこの世の中にないのに、そういった口車にのってしまうんです。

編集部:もし月100万で治るとしても、そのために生活が苦しくなって楽しく生きられないのでは、本末転倒ですものね。

川嶋先生:病気になって医者にかかる前に、まずは「自分はどうありたいのか」ということを、知ることです。医者というのは、助けるのが仕事。今の医療は、とにかく患者さんを死なせない医療と、医師が自分たちの身を守るための医療になっている気がします。私は、統合医療に関しては、受け入れる側(患者)の価値観をもっと重要視してほしいなと考えています。私自身も、実際に見てきて、医者としてはこうしたいけれど、患者さんはそれを望まないという場合、不本意であっても患者さんの希望に寄り添っていく。それで結果が悪くても、本人が幸せならば医療としてはうまくいっているんですよね。そういう姿勢を、多くのお医者さん、そして患者さんが持つべきではないでしょうか。患者中心というのは、医者が意見を押し付けることではなく、「こうあったら、幸せだ」という患者さんの要望に答える手段を提供することが必要だと考えています。

編集部:そのためにも、患者である私たちがしっかりと意見や希望を持たなければいけない。

川嶋先生:そうです。日本には、国民全員が保険に入れるという素晴らしいシステムがあります。けれど、そのシステムのせいで、医療に関しては非常に依存心が強い国民性だと思うんです。

編集部:確かに、お医者さんにはあまり意見を言えないという人は多いかもしれません。

川嶋先生:それもおかしいと思うのですが、何より医者がすぐ怒るのがいけない。何か意見を言うと怒る医者、治療を押しつける医者には行かないことです。たとえば、高血圧の患者さんに、「降圧剤を飲まなければいけません」という言い方をしますよね。これは価値観の押しつけなんです。そしてそれに患者さんは「はい」と従う。その前に、この薬を飲むことのメリット・デメリットを医者はきちんと説明しなくてはいけないし、患者はそれを理解して自分で薬を飲むか、飲まないかを決めなければいけない。
もし、本気で早く死にたいと思っていたのなら「死にたいから、余計なお世話です」と医者に言えばいい。けれど、そうしたらお医者さんも「では、お薬はいらないんですね。このままでは、脳卒中や心筋梗塞で倒れるリスクが高くなります。ご家族も含めてご納得されていますか?」と、念押しをする。医者が倒れるリスクを軽減するために提案した薬を患者自身が拒否したのなら、もしも倒れても医者のせいにしてはいけません。医者の価値観は病気のリスク回避と死なせないことですから。

編集部:医者と患者さんのディスカッションですね。患者自身がはっきりと生き方や死に方を決めていれば、自分にとって不要な治療をすることがなくなるわけですね。

川嶋先生:結局、医者というのは治療のサポートをするのが役目。病気を治すのは患者さん自身です。ホリスティックというのは、「全人的」という意味。私は個人の年齢や性別、性格、生活環境さらに個人が人生をどう歩み、どう死んでいくかまで考え、西洋医学、相補(補完)・代替医療を問わず、あらゆる療法からその個人にあったものを見つけ、提供する受診側主導医療が統合医療だと思っています。私のクリニックに来る患者さんでも、西洋医学は絶対イヤという方がいます。けれど、たとえばガンになって「死にたくない」という時に、頭ごなしに化学療法が嫌だといっても、まず化学療法をした場合はどういう未来が待っているのか、何パーセントの生存率なのか、それ以外の方法はどうなのかとさまざまな方法のメリット・デメリットを探るべきです。

~つづく~

川嶋朗先生
東京女子医科大学附属青山女性・自然医療研究所 自然医療部門 准教授。 東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長。気功、ホメオパシーを取り入れた治療を行っている。予約はなんと3年待ち。西洋医学では腎臓病、膠原病、高血圧などが専門。
http://www.twmu.ac.jp/AWNML/N/top/

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