カフェの撮影をしていて、ふと目に映った一人のおばあちゃん。
1本の造花を片手で掲げ「買わないかい?」という風に、欧米人に視線を投げかけていた。しかし、その欧米人カップルはたくさんの造花を持っていた少年からお買い上げ。
それでも、おばあちゃんはしょげるでもなく、何も変わらずそこに居る。ともすれば落ちてしまいそうな断崖を背に、佇む彼女はお乞食さんだろうか?
雨が降ってきた時も、おばあちゃんはただ座り続けていた。それにしても良い顔だなぁ。悲惨さがないのはなぜ? 私はおばあちゃんから目が離せなくなってしまった。
「おばあちゃん、さっき持っていた花はどうしたの?」。近寄って聞いてみると、断崖の下を指して、「落ちちゃったよ」と、こともなげに笑う。もともと拾い物だったのだろうか。でも、唯一の売り物。おばあちゃんは足が悪かった。交通事故でえぐれてしまった膝を見せてくれたのだが、この足では歩くのも困難だろう。
「お年を聞いてもいいですか?」と言うと「そんなの知らないよ」とまた笑った。
インド・ダラムサラにて。
(文:進藤 友美)
すぐそこのように見えるヒマラヤ山脈