伝説的ドラマ『NIGHT HEAD』の飯田譲治監督 見えない世界を探求する「これからのVISION」~前編

現在、放送中の山田優さん主演ドラマ「VISION~殺しが見える女~」(木曜日11:58~日テレ)。ある日突然、殺人現場の映像が見えるようになった売れないモデル(山田優)が、その能力に苦しみながら、難癖のある謹慎中の刑事(金子ノブアキ)と事件に立ち向かっていくというストーリー。

スピリチュアルな能力を突然授かり戸惑いながらも、事件や自分の運命に立ち向かう主人公を題材にしたこのドラマの原案・脚本は、「NIGHT HEAD」「ギフト」「沙粧妙子 最後の事件」など、見えない世界、第六感を超える世界を描き続ける・飯田譲治監督。

スピリチュアルはご自身にとって当たり前のこと、と語る飯田監督に「VISON」というドラマについて、そしてご本人が考えるこれからのVISONを語ってもらった。

―ドラマの最初は「五感でとらえたものを現実(リアル)とすることが誤解を生み、人は現実(リアル)をとらえられないままに生きている」というメッセージが出てきますよね。監督が、「VISON」を通じて伝えたいメッセージは何ですか?

 

自分は、10年も20年も前から五感以上のものを当たり前として捉えてきた。けれど、今でもまったくそうゆうものを受け入れないという人も半分くらいはいて、信じない人はまったく信じないですからね。でも、たとえば幽霊にしても、信じている人というのは皆幽霊を見たり、それを信じざるを得ないような体験をしているんですよね。だから五感以上の世界があると思っている。目に見えない世界がないと思っている人は、その経験がないというだけなんです。そんな風に、いろんな感覚、価値観を持った人が共存しているのがこの社会なんですよね。今回、「VISON」をやるにあたって、実際に五感以上に関わる出来事が起きた時に、皆がどんな風にリアクションをするのか、それをリアルに書きたいというのがテーマなんです。

―こういったドラマは五感以上の世界を「ある」ということを前提に説得していくものが多いなかで、「ある」という人と、「ない」人たちの感覚の違いを戦わせているわけですね。

昔は、僕も押しつけるような感覚があったかもしれない。けれど、今はなくなりましたね。素直にやっているだけ。だから「VISON」も見えない世界を信じなさいとういスタンスではなく、それはそれでいいんじゃないかと思っているんです。たとえば、「動け」って言って何かが動くということはあるわけじゃいじゃん!って皆言うのですが、たとえば『ベッドに寝た切りの人が水を飲みたいと思ったら、電極が「水が欲しい」という脳のパルスをとらえて、機械に伝え、ロボットが水を出してくる』と言うと、「それだったらあり得る」と皆言う。実はこの開発はかなり進んでいて、実用化も近いみたいです。

幽霊とか超常現象とか言うと、昔はとんでもない世界の話の話でしたよね。たとえば、今ここで思っていることが離れたところにいる誰かに伝わるなんてありえないと思っていたけど、携帯電話だったらそれが可能。いつか、携帯電話がどんどん小さくなってチップを頭に埋め込んだら、まさにテレパシーのように相手とコミュニケーションがとれる。スピリチュアルと科学という全然違うベクトルが気づいたら一緒になっていく。ドラマを通じてそう言った流れが表現できればと思っています。それともう一つ大きなテーマは、人に左右されないで自分の責任は自分、すべては自分の選択なんだということですね。

―主人公の栗栖玲菜も、突然開花した能力に戸惑いながらも、向き合っていますね。今回、山田優さんが主演で、ドラマの前にはワークショップもされてそうですが、どんなことをされたのでしょうか。

アメリカなどではポピュラーですが、自分の心を解放して、自然な芝居ができるようになるというワークショップです。芝居って、いくら口で自然にやれっていってもダメ。演技というものは自然と不自然になっていくものですからね。ハリウッドは、競争率も激しいし有名俳優たちも卒業しているアクターズスクールがあるんです。それを日本人向けにアレンジして、出演者たちと週に数回、一カ月くらいやりました。チームワークをつくりたいという意味もありましたね。それが、テレビを見ている皆さんにどう映っているかはわからないけれど、確実に現場ではその成果が出ていますよ。やっぱり役者も野球選手と一緒で、毎日トレーニングをすることって大切なんですよ。

―「VISON」では、死んだ人の声ではなく、これから殺人を犯す加害者のメッセージが見えるという少し特殊なものだったり、主人公の栗栖玲奈が、加害者から「クリスティーナ」と呼ばれる伏線があったり、次はどうなるんだ?というドラマの楽しみを凄く感じます。

連ドラって、次はどうなるんだろう?って思わせるのがやっぱり僕は好きなんですよね。それは僕個人がそうゆうドラマが好きというのがあると思いますけどね。日本はドラマって週に1回が定番ですけど、韓国の連ドラは週2回とか、4回やったり、中国は毎日やったり。アメリカはやっぱりゆったりした国民性で、週1回。僕はアメリカのドラマだと「LOST」が好きですね。ドラマとしても稀にみる成功例だと思います。内容もめちゃくちゃスピリチュアル。因果応報がすごく考えられていて、一話目から見ていると、誰かを助けた人はいつも誰かに助けてもらえるとか、108という数字が出てきたりしていますね。あれだけ長いドラマにたくさんのスピリチュアリティを盛り込んで、完結させたのは凄いことですよ。

―今までも監督は見えない世界との繋がりを書いた作品が多いと思いますが、やはりこれからもそういう精神的な事を描く作品を続けられますか? 今後はどういった作品をつくりたいと思っていらっしゃいますか?

『Strangers 6』という作品の後半を何とかして仕上げていきたいというのはありますね。この作品は日中韓での共同制作でしたが、アジアとかヨーロッパとの合作をやりたいという気持ちは非常に強くなりました。

スピリチュアルに関しても、私はそっちをやるのが役目だと思っているわけじゃなくて、自分のなかから出てきているものを作った結果がそうなっているだけなんですよね。自分にとってそれはあるべき世界。前は、もっと誰かにそうゆうことを伝えたいというか、押しつけるような感覚があったかもしれない。けれど、今はなくなりましたね。素直にやっているだけ。だから、VISONも見えない世界を信じなさいというスタンスではなく、それはそれでいいんじゃないかと思っているんです。

 

次回続く

「木曜ミステリーシアター VISION 殺しが見える女」
毎週木曜日 夜11:58~
出演/山田優、金子ノブアキほか
http://www.ytv.co.jp/vision/index.html