Trinity Pick Up in フィリピン神出鬼没!?な聖母マリア像と奇跡の井戸

TRINITY vol.22PickUpのコーナーではフィリピンをご紹介。

リゾートで有名なセブ島ではなく、今回はマニラに行き、ソニアーズ・ガーデンという素敵な場所を紹介しているのでぜひチェックしてみて!

さて、マニラにスピリチュアルスポットはあるのか調べてみると……マニラから3時間ほど離れたタールという場所に「しばしば姿を消す不思議なマリア像がある」との情報。早速編集部はタールにあるカイササイ教会へ向かった。タールに着くとなんだかスペインみたいな雰囲気のする街。それもそのはず、この国ではスペインの植民地時代に建てられたスペイン様式の建築物が多い。フィリピンはアジアに起源を持つマレー系、インドネシア系、ネグリード系の混血で、スペイン統治時代にはスペインとの混血も増えた他民族国家。そのため日常の風習や風景にスペインやメキシコなどのラテン系諸国と似たところがある。

カイササイ教会は地元の人が集う温かい雰囲気の場所。平日とあってほとんど人はおらずとても静かだ。いよいよ噂のマリア様とご対面!

 

 

 

 

 

聖母像は木製27㎝ととっても小柄でいらっしゃる。祭壇上のガラスケースに祭られた聖母像は肉眼だと確認しづらい。

 

カメラマンさんに望遠レンズで撮影してもらい、それでやっと詳細がわかるという感じ。通訳さんに詳しい縁起を伺ってみると―1603年、今から約400年前のこと。漁師の網のなかでマリア像が発見された。漁師はマリア像を持ち帰り自宅に飾ると、奇跡深いことが次々起こった。そこで街をあげて特別な場所に祭ることになり聖母像は大切に保管された。ところが、なぜかマリア様はしばしば姿を消し、しばらくすると戻ってくる。ある日、森で薪を拾っている二人の女性が井戸水に写った聖母像を見つけた。

見上げると、木の上に聖母がおりその傍らには像を守るようにカイササイ・バード(フィリピンの鳥)の姿があったという。以来、この像は「カイササイの聖女 Virgin of Caysasay」と呼ばれるようになった。

そしてたびたび発見される場所に聖母を祭るべきではと相談され、最多発見ポイントとなった場所に現在のカイササイ教会が建てられたそう。

 

教会の天井にはこのエピソードが鮮やかな色彩で描かれている。聖母の起こした奇跡はいくつもあり、一番凄いのは塩水を真水に変えたという話。タール一帯は塩水が多く、湧き水をろ過しないと飲料水にはならなかったのだが、村人が聖母に祈ったところ、真水が噴出したとか。教会のすぐ裏にその「奇跡の井戸」もあるとのこと。縁起にあった二人の女性が聖母を発見した例の井戸だ。

 

教会の裏手にある緩やかな階段を上ろうとすると「ご祈祷を受けてから」と現地の方から待ったがかかる。階段の手前に住む祈祷師にお祈りしてもらってから井戸に行くのがルールだそう。編集部もしばし待つが、前の方のご祈祷がなかなか終わらない。ちょっとのぞいて見るとメチャメチャ話しこんでいる様子。するとガイドさんが裏道を教えてくれた。「ご祈祷は!?」と聞くと大丈夫、大丈夫とのこと。罰が当たらないかしら?と少々不安になりながら進むといつの間にか地元の子どもたちも一緒になって大所帯で井戸へ向かっている。この裏ルート、本当に現地人じゃないとわからないような獣道。

少年たちがデコボコの道をピョンピョン越えていく。最短距離を進んでやっとこさ井戸に到着した。緑のなかにたたずむ井戸は病気を治したり、合格祈願にご利益があるとか。ガイドさんによるとガンで死ぬと宣告された患者がこの水をつけて完治し、お礼に井戸の修復工事をしたところ、その患者は双子を妊娠したというオチつき。

そんな評判が口コミで広がり、今もフィリピン全土から人々が集まってくるという。ちょうど熱心にお祈りしているおばちゃんがいたので話を聞いてみると「病気のことならこの井戸」といわれマニラの北からやってきたそう。私たちを連れて来てくれた運転手さんも持参したペットボトルに水を入れている。……みんな本気だ。

 

半信半疑で井戸を見ていると、地元の少年がバケツに奇跡の水を汲んでくれた。水を肌につけ、効果あるかな?とカメラマンさんと話していると少年に「ちゃんとお祈りしないと効果もないし、写真も上手に撮れないよ!」と怒られてしまった。

 

 

 

 

 

いい歳をして聖地に行って効用だけ求める悪いクセを子どもに指摘され、二人で慌てて祈りを捧げたのだった(祈った内容は嫁にいけますようにとか、崇高なものではなかったが)。フィリピンに行く機会があったら、タールのカイササイ教会まで足を延ばしてみてはどうだろう。その際にはペットボトルをお忘れなく。

(撮影・生井弘美)