☆漬物とスピリチュアルでツケスピ!? 〜糠漬けを作っている者は誰もいない〜

糠床にいる菌や微生物は、「ただそこにいるだけで、生きているだけで」、それが結果的に人間側から見た場合に、「糠漬けを作っているように見えるだけ」、なんです。 逆に言えば、我々は彼らの特性を「利用している」だけ、となります。
☆漬物とスピリチュアルでツケスピ!? 〜糠漬けを作っている者は誰もいない〜

☆糠漬けを作っている者は誰もいない。

大根の糠漬けを作るなら、切った大根を糠床に投入すれば後は1~3日で出来上がるわけですけれども。
さて、この時に糠漬けを作っているのは「誰」なのでしょう?

料理というのは、例えば肉じゃがを作る時なんかは、誰かがジャガイモとか肉とか人参とか切って、調味料を合わせて火を入れて調理して出来上がります。

これを作ったのは「誰」と言われたら、それはお母さんかもしれませんし、大切なパートナーかもしれません。
自分が作ったなら、「この肉じゃがを作ったのは私です」と豪語出来ます。
そういう意味では、肉じゃがを作った人、というのは簡単に特定できますし、当然作った人によって味が変わります。

しかし、糠漬けに関しては、1~3日糠床に大根を入れただけで、調理したのは誰? と聞かれたら、「私は大根を糠床に入れただけだし、それを調理したのは私です、と肉じゃがのように豪語出来るのだろうか?」という事になります。

いや、糠床を手入れしているのも私だし、大根を買ってきて刻んだのも私だから、この糠漬けは私が作りました、と言っていいし、我々漬物業を営む者など製造元を提示するのは当然であって、製造者を特定せねば商売の一切が出来ません。

その前提があって、その上でもう一度、糠漬けを作ったのは誰でしょう?

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☆糠漬けを作っている正体

漬物業者が何か起こった時の責任逃れのためにこのような事を書いているのではない、というのをまずご理解頂きまして、次の記事をご覧になって頂きたいのですが。

上記の肉じゃがは誰が作っていますか? という例を糠漬けに当てはめるなら、「調理して味付けしているのは誰でしょう?」
私でしょうか?

私というと、大根を切って1~3日糠床に入れただけで、後はかき混ぜる、という事をしているだけで、肉じゃがのように「調味も調理もしているわけではない」でしょう。

さて、一体誰なのでしょうか?
一応の答えは「菌、微生物」です。
工程と言えば「発酵」です。
皆さんご存知の通り、糠漬けは「発酵食品」です。
発酵によってできあがる料理です。
この時に味を決める役割をしているのが「菌、微生物」であって、我々ではありません。

当然糠床の塩加減や外気温も影響しますが、肉じゃがのように直接的に調理に携わっているのは私ではありません。

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☆意図のない調理

糠漬けを作っている者は誰もいない、とかいうと、仏教の「諸法無我」といったそんな感じですが、そうだと断じる事はしませんが、通じる部分はあるかもしれません。

糠漬けを作っている正体が微生物だと解ったところで、では実際どうやって調理しているのでしょうか?

作っている者は誰もいない、と表題にした理由は、「糠漬けを作っているという意識を持って糠漬けを作っている者は誰もいない」、という意味です。
糠床に居る菌が「よし! 大根が来たぞ!! 美味しい糠漬けを作るぞ!」といった意識で大根を待ち構えて、大根が来たら一斉に糠漬けを作っているわけではありません。

糠床にいる菌や微生物は、「ただそこにいるだけで、生きているだけで」、それが結果的に人間側から見た場合に、「糠漬けを作っているように見えるだけ」、なんです。

逆に言えば、我々は彼らの特性を「利用している」だけ、となります。
この状態では、料理というか調理というか、そういった概念は無く、糠床という「ただ命が生きていて糠漬けが出来る」、というわけで、考えていくと大変不思議な状態がそこにあるわけですね。

 

京都で創業明治5年の漬物屋「井上漬物店」
http://www.inoue-tsukemono.com/

《井上 昌則 さんの記事一覧はコチラ》
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