一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.158 「軍中楽園」

実在した軍運営娼館での濃密なドラマ
歴史に翻弄された人々の哀歌

台湾の金門島にかつて観光に行こうとしたのだが、危ないということで止めてポンフー島に行った。

ポンフーは兵役のための軍事施設がたくさんあるらしく、若い兵士を町中やバス停でよく見かけた。
なんにもない島だったけど、真っ青でちょっと怖いような海の佇まいは未だに忘れられない。
もう20年近くも前の話だ。

そこから北西にある中国大陸に最も近い島、金門島。
当時、「アジアの火薬庫やで」と知り合いが言っていた。
この島は第二次世界大戦後、1949年に中国共産党との内戦に破れた国民党が反撃の拠点とした場所である。
国民党は激戦の末、島を守りきったが、砲撃戦は1970年代まで続いた。
そして、本作はそんな戦時中の1969年の金門島が舞台だ。
それも、実際に軍が運営していたという娼館での話なのだ。

 

明るい日々に隠された男と女の不幸
メロドラマな展開こそ、台湾映画

金門島の「特約茶室」を管理する831部隊で働くことになった青年兵ルオ。
なんの仕事かと思ったら、そこは兵士たち御用達の娼館で「軍中楽園」と呼ばれる施設だった。
そこで働く女たちと兵士たちの管理や世話をするのである。
そこでルオは影のある娼婦ニーニーと親しくなる。
また、大陸から徴兵され、いつか大陸に帰り母親に再会することを夢見る老兵ラオジャンにも信頼される。
ルオは戸惑いながらも、この特殊な場所での仕事を楽しみだす。
しかし、友人のホワシンは炭鉱での過酷な仕事とイジメに耐えられず、娼婦の一人と脱走を図る。
ニーニーも何か深い事情を抱えているようだし、ラオジャンは売れっ子娼婦との結婚を勝手に決意。
男たちの欲望と女たちの悲しみ、歴史に翻弄された人々の哀切なドラマが濃密に展開される。

軍が関与する軍中公娼制度というのが驚きである。
女たちは外部から募集されて働いていたそうだが、ニーニーのような事情で働いている女もいたようだ。
しかし、さすが台湾。なんか明るい売春宿なのだ。
が、明るい陰には悲劇も潜むものでその悲劇は明るいだけに鮮烈な悲哀があってメロドラマなのだが、やり切れない悲しさがあった。

 

ラストのテロップと写真に号泣!
彼らが幸せでありますように……。

ルオと惹かれ合うニーニー。二人がいずれうまく行けばいいと思う。
陰湿ないじめから逃れられないホワシン。
一緒に逃げた娼婦と逃げ切ってどこかでひっそりと暮らせていればいいのにと思う。
好きになった娼婦と結婚して退役して餃子屋を開きたいと言っていたラオジャン。
そうなればいいと切に思った。
映画のラスト、私は嗚咽した。それは、傷ついた彼ら、彼らの幸せを切に願った私を慰撫してくれるものだったが、「この時代の歴史に翻弄されたすべての人々に捧ぐ」というテロップはあまりに悲しすぎて、その写された映像と共に泣き濡れてしまった。

歴史の狭間で時代に翻弄されながらも懸命に生きた人々。彼らに思い馳せ思い馳せ……。
泥臭い展開の、現代史を描く台湾映画はいつも、私の胸を打つ。こういう映画はもう日本では作れないのかもしれない。
濃厚な空気、濃厚な感情、濃厚な熱情、濃厚な湿度、体温(今の日本にあるのは湿度だけ?)。
それらに絡みとられた至福の133分であった。

 

 

監督・脚本 ニウ・チェンザー
編集協力 ホウ・シャオシェン
出演 イーサン・ルアン レジーナ・ワン チェン・ジェンビン チェン・イーハン

※133分
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※5月26日(土)~全国ロードショー

 

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