前回では、ニンニクの「霊的修行を妨げる」とされるラジャス質の側面をご紹介しましたが、今回の後編では、「アーユルヴェーダにおける薬としてのニンニク」についてお伝えしたいと思います。
■アーユルヴェーダでは、ニンニクは食べ物というよりも薬
古代アーユルヴェーダの文献の中では、ニンニクを避けるべきものとして扱われたことは一度もなく、この「ニンニクは食べちゃダメ」という混乱が生じるのは、アーユルヴェーダとヨガを混合させているからにすぎません。
アーユルヴェーダとヨガは姉妹の科学で、似ている部分がたくさんありますが、もともとは異なる原理から成り立っている別々の科学になります。
アーユルヴェーダでは、ヨガとは逆に、玉ねぎとニンニクは「強力な薬」として称賛され、インドではニンニクの広大な医薬特性(特に身体の強化と免疫を高める効果)ゆえに、「貧乏人のゴールド」として知られているほど。
その主な薬効のひとつは、自然の媚薬であり、特に性的能力が低下した高齢者や、何らかの原因により性的衰弱状態にある人に効くハーブといわれています。
また、ニンニクや玉ねぎは、優れた血液浄化剤としても認識され、他、次のような薬効が述べられています。
1. 風邪の特効薬:咳、発熱、喉の痛み、喘息などを助ける
2. 鎮痛薬:関節の痛み、筋肉痛があるとき、ニンニクを体にこすることにより、痛みが軽減される
■ラジャス質のニンニクをサットヴァに変える、浄化方法
ニンニクは治癒力がありますが、同時にラジャス質の食べ物に分類されます。
ニンニクは消化管に熱エネルギーをもたらし、乾燥質で、味は刺激性です。
このため、ニンニクはピッタドーシャの体質の人たちや、霊的な道を歩んでいる人たちにとっては理想的な食べ物ではないと考えられ、これらの人たちの純度を助けるための手段として、さける事が推奨されていますが、絶対に食べてはいけないというものでもありません。
悟りへ至る道を微妙に妨げはするけれでも、それほど多大な影響を与えるものではないことを覚えておく必要があります。(それはそうですね。食べ物は私たちの体に多大な影響を与えるものの、私たちを食べているものだけで判断するのは、短絡的です)
ただ、こういったラジャス質の食べ物を、よりサットヴァ質に変容させてから食べることは、ある意味役に立ちます。
ニンニクは上記のような薬効がたくさん含まれていますから、たまに食べる分には、薬となります。
というわけで、ニンニクをサットヴァ質に変えてみましょう。
★《ニンニク浄化方法》
1.ニンニクを縦に切り、内側の緑色の芽の部分を取り出して捨てます。
2.芽の部分を取り出した後、ギーで炒めます。
3.(さらに浄化するオプション。3は必須ではありません)炒めたニンニクをさらにヨーグルトに数分浸す。
……これらのステップが完了した後のニンニクは、まさにサットヴァ質に変容されている状態です。
特効薬として食べたり、料理に使いましょう。
■ラジャス&タマス時代に生きる私たち
私たちの現代の食文化は、ケチャップ、ハンバーガー、フレンチフライ、冷凍食品、肉食や加工食品が満載で、ラジャス質やタマス質の食べ物を普通に大量食べることが当たり前の時代。
新鮮な食べ物は一体どこにいってしまったのだろうといったレベルです。
アーユルヴェーダの観点では、私たちが何をどのように食べ、そしてどのように行動しているかは、非常に明確な繋がりがあるとし、これまでには存在しなかった類いの暴力、犯罪、戦争、抑うつレベルが現代高まっているのは、私たちの食べ物や食べ方に深く関連しているといいます。
このため、現代を生きる人たちが、出来る限りサットヴァ的な食事を「薬」としてとるようになるなら、体の健康状態だけでなく、現在の文化さえもガラッと違うものとなることでしょう。
健康的な体、マインドへの初めのステップは、ラジャス質とタマス質の食べ物を最小限に抑え、よりサットヴァ質(純粋で新鮮な自然の状態に近い食べ物)をメインに、たっぷりととることなのです。
《村上アニーシャ さんの記事一覧はこちら》
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